【衆院選】その支持、本当に自分の考え? バイアスとネットが作る「情報の壁」を破る方法

【衆院選】その支持、本当に自分の考え? バイアスとネットが作る「情報の壁」を破る方法

2月にも投開票と報じられている衆議院選挙の期間はわずか13日です。短い時間で誰に投票するか決めるため、政党や候補者名を検索する人も多いでしょう。ネットの情報は役に立ちますが、落とし穴もあります。偽・誤情報が多いというだけではありません。便利なだけに危険な罠の存在を知っていますか?

ネットという両刃の剣を理解するキーワード

選挙の際に、新聞やテレビよりもネットの情報を頼りにする人が増えています。2024年の兵庫県知事戦では、NHKの調査で投票の際に最も参考にしたものとして「SNSや動画サイト」が30%、「新聞」「テレビ」が各24%でした。この傾向は今後、さらに強まるでしょう。

メディアのニュースだけでなく、候補者本人や各陣営や著名人や一般ユーザーの投稿が絶え間なく流れるSNSやYouTubeなどの動画プラットフォームは非常に便利です。欲しい情報を検索することもできますし、気になるアカウントをフォローして継続的に見たり、お勧め記事を次々と読むこともできます。

しかし、その便利さの裏に大きな落とし穴があります。キーワードは「確証バイアス」「情報プラットフォーム」「アルゴリズム」「フィルターバブル」「エコーチェンバー」です。

すべての人間にある「バイアス」

「バイアス」とは直訳すると「先入観」「偏り」です。辞書的な意味は「自分自身の経験などに基づいて無意識のうちに非合理的な考えをしてしまうこと」です。

バイアスはすべての人間にあります。筆者(古田)はオンラインや全国で開くセミナーで12000人を超える人たちに、自分自身のバイアスを自覚してもらうクイズを出してきました。簡単な問題なのに、バイアスのせいでほとんどの人が間違えます(ネタバラシになるのでここでは説明しません。気になる人は「JFCファクトチェック講座」を受講してください)。

そのバイアスの一つが「確証バイアス」です。

確証バイアスとは、自分の持っている先入観や仮説を肯定する情報ばかりを無意識に集め、それに反する情報を無視したり軽視したりする心理的な傾向のことです。人間は「自分が正しい」と信じたいため、客観的な事実よりも「自分にとって都合の良い事実」を優先しがちです。

例えば、自分の考えを裏付ける情報に対して、人は「重要だ」「正しい」と思いがちです。根拠の書かれていない情報でも「自分の考えに近い」というだけですぐにシェアをしてしまうのは、そういう理由もあります。

反対に、自分の考えを裏付けない情報に対しては、「間違っている」と思いがちです。さらに怖いことには、そもそも注目しない、耳に入らない、忘れるという傾向もあります。

バイアスは人間に昔から備わっているものですが、デジタル社会になって、これを強化するものが現れました。それが「情報プラットフォーム」の「アルゴリズム」です。

情報を収集・整理するプラットフォーム

情報プラットフォームとは、インターネットで膨大な情報を収集・整理し、利用者に届けるシステムです。情報の発信と受信を媒介する役割を担うため、現代社会の最も重要なインフラの一つとなっています。

新宿駅のプラットフォームを想像してみてください。新宿駅にはたくさんの路線が乗り入れ、多くの乗降客がいる。だから、新しい路線を作るときも新宿駅に通す計画を考える。その結果、さらに乗降客が増えて新宿駅の価値が高まる。

これを「ネットワーク効果」と呼びます。利用者が増えるほど、便利になり、価値が高まる。同じ力学が、情報プラットフォームでも働いています。プラットフォームはどんどん大きく、便利になる。

代表的な情報プラットフォームを紹介します。

ニュースアグリゲーター型

アグリゲートとは収集するという意味で、ニュースを様々な媒体から集め、整理してユーザーに届けるサービスがニュースアグリゲーターです。

例えば、Yahoo!ニュース、LINE NEWS、SmartNewsなどがこれにあたります。

SNS(ソーシャルメディア)型

ユーザー自身が投稿し、お互いに情報を共有するSNS(英語圏では一般的に「ソーシャルメディア」と呼ぶ)も、情報プラットフォームの一つです。

例えば、Facebook、Instagram、Xなどがこれにあたります。

動画共有型

動画専門のプラットフォームも存在します。もともとは一般ユーザーの投稿共有が中心でしたが、ユーザー数が増え、コンテンツのリーチを伸ばすためにテレビ局や新聞社などのマスメディアも活用するように。まさにネットワーク効果です。

例えば、YouTube、TikTokなどがあります。

膨大な情報量に対応するアルゴリズム

これらの情報プラットフォームには、膨大な量の情報が集まります。YouTubeだけでも世界中から1分間に500時間分以上の動画が集まります。人間の能力ではとても分類・整理することはできません。

そこで活躍するのが「アルゴリズム」です。

アルゴリズムとは、広義には「問題を解決するための手順」のことですが、料理のレシピや楽譜も一種のアルゴリズムと言えますが、デジタル社会では主に「コンピューターが特定の目的を達成するための処理のルール」を意味します。

例えば、YouTubeやXなどの情報プラットフォームのタイムラインやオススメは、膨大な投稿から、ユーザーの行動履歴などに基づいて「最も関心がありそう」と思われる情報を並べます。大量の情報の中から効率的にユーザーに情報を届けるために必要不可欠です。

あなたが料理や旅行が好きだとして、YouTubeの画面を開くと、それらの動画が並び、おすすめ動画でもいま世界で話題の料理や旅行動画が出てくるはずです。

私たちは日々、アルゴリズムによって「見たいもの」を優先的に見せられています。非常に便利ですが、気づかないうちに「自分が選んだもの」ではなく、「アルゴリズムが選んだもの」ばかりを見てしまう情報の偏りが発生します。

これが「フィルターバブル」です。

選別された情報ばかり見る「フィルターバブル」

フィルターバブルとは、フィルター(膜)がバブル(泡)のように周りをつつみ、そのフィルターを通ってきたコンテンツ(記事や動画など)ばかりを目にする状態を意味します。

例えば、あなたが料理動画、それも日本の食べ歩きが好きで、YouTubeでそういった動画をよく見ているとします。

そうすると、YouTubeは、あなたがそういった動画チャンネルを登録し、何度も長い時間見ているデータを分析し、同じような食べ歩き動画をどんどん届けるようになります。

結果、あなたはそれ以外の動画を見る時間が減る。これがフィルターバブルです。

まるで「井の中の蛙」になるかのようなフィルターバブル。そして、もう一つの落とし穴が「エコーチェンバー」です。

同じような意見がこだまする「エコーチェンバー」

エコーチェンバーとは、自分と似た意見ばかりに囲まれ、自分の考えが世の中の正解であると思いこんで特定の思想に偏ってしまう現象です。日本語では「反響室」。閉ざされた部屋で同じような声が反響している様子に例えています。

XやFacebookやYouTubeやTikTokなど、ソーシャルメディアには「フォロー」や「チャンネル登録」などの機能があります。ユーザーは自分に価値観が近い人、好ましい人をフォローする傾向があります。

結果として、そこから発信される記事や動画だけでなく、そのコメント欄も含めて同質性の高い情報を見る確率が高まります。

フィルターバブル・エコーチェンバーと確証バイアスは相性が良い

確証バイアスは、情報プラットフォームのアルゴリズムと非常に相性がよくできています。

例えば、選挙のときにあなたが「あの政党はいいな」と思ったとする。そして、その政党のYouTube動画を検索してじっくり見たとします。

YouTubeのアルゴリズムは、あなたがその政党の発信やその政党に関する動画を好んでいると分析し、関連する動画をお勧めすることが増えます。

あなたは「あの政党はいいなと思った私の考えは正しかった」と満足しつつ、他の関連動画も見て、いいねボタンもクリックするかもしれません。そうすると、その政党のお勧め動画はますます増える。その他の政党の動画を見る機会は減ります。フィルターバブルの発生です。

そうやって次々とその政党の動画を見るうちに、あなたは本格的に「この政党は良い」と思うようになり、その政党やその政党をほめるチャンネルを登録するでしょう。そうすると、そのコメント欄も含めて、その政党を褒める意見ばかりを目にするようになります。エコーチェンバーです。

確証バイアスの働きで、一つ一つの動画の根拠が薄かったとしても、あなたの価値観に近いことから、あなたはその動画が正しいと思いがちになる。「この政党は素晴らしい」というあなたのバイアスは強化され、「この政党の良さがわからない人はおかしい」とまで思うようになるかもしれません。

バイアスとネットの特性を理解したうえで活用を

私自身、90年代からネットを使い、新聞記者になりましたが、途中からデジタル部門へ、その後、ネットメディアで編集長をし、Googleでも働いたネット中心の人間です。SNSも20年近く前から使っています。

アルゴリズムのおかげで、大量に溢れる情報の中から、情報を見つけやすくなっている。非常に便利なツールですが、その仕組や危険性を理解しておかないと落とし穴にハマりかねません。お酒と一緒です。美味しいし、酔うのは心地よいですが、飲み方によっては身を滅ぼします。

しかし、現実にはこういったキーワードを理解していない人がほとんどです。JFCが電通総研と2025年に実施した「情報インテグリティ調査」では、「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」などデジタル社会の基本的な概念を理解している人は1割に満たないことがわかりました。

「3つの確認」の徹底

生成AIによって画像や動画や音声も簡単に捏造できるようになりました。あらゆる情報について、その情報を信じたり、その情報に基づいて投票先を決めたりするときには確認が必要です。

まずは「3つの確認」を徹底してください。「発信源」「根拠」「関連情報」の3つです。

発信源:その情報を知りうる立場か
根拠:信頼できる根拠があるか
関連情報:公的機関・研究機関・報道機関・専門家と比較

多くの偽・誤情報は、この3つを確認するだけで信頼性が低いとわかります。逆に言えば、多くの人はこの3つを確認せず、「自分の価値観に近い・遠い」という確証バイアスに基づいて、情報を取捨選択してしまいます。

あなたの価値観に近い政党や政治家や専門家が常に正しいわけでも、逆にあなたの価値観に反するから間違っているわけでもありません。自分の好みの情報を目にしたときも「いま、この情報を好ましいと思ったのは、論理的な判断ではなく、確証バイアスではないか」と自分を疑うことから始めましょう。

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