世界25団体に選出:日本ファクトチェックセンター、IFCNから「検証の持続」のための助成金

世界25団体に選出:日本ファクトチェックセンター、IFCNから「検証の持続」のための助成金

世界のファクトチェックをリードする「国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)」は、日本ファクトチェックセンター(JFC)を含む世界25団体に、総額75万ドル(各団体3万ドル)の助成金を交付すると発表しました。

検証継続のために応募51団体から選出

IFCNはアメリカのジャーナリズム研究機関「ポインター研究所(Poynter Institute)」が運営し、ファクトチェックの世界的な基準として「綱領(Code of Principles)」を発表しています。

綱領を遵守していると認められ、IFCNに加盟しているのは世界183団体(2026年1月16日現在)。その中から51団体が助成金に応募し、25団体が選ばれました。

JFCを含む25団体にそれぞれ交付される3万ドル(約480万円)の助成金は、組織運営の継続のために活用されます。具体的には、スタッフの維持や発信能力の確保、新たな収益源の開発や資金調達ツールの導入など、ファクトチェック活動を長期的に継続する基盤強化です。

支援の背景:高まる検証の必要性と継続の厳しさ

政治・選挙、医療健康、公共の安全、災害や大事件など様々な危機的状況において、人々は日々、オンラインで目にする情報に基づいて意思決定をします。情報の信頼性が極めて脆弱になっている現在のデジタル環境において、客観的・科学的な証拠に基づいて言説を検証し、何が真実で何が誤りかを明確に伝えるファクトチェック組織の役割は、社会に不可欠です。

ソーシャルメディアで拡散する偽・誤情報、AIによるディープフェイクなど、情報環境の悪化は加速し、信頼できる情報検証へのニーズはこれまで以上に高まっています。その一方で、ファクトチェック団体は世界中で、多方面からの圧力にさらされています。

検証で「誤り」と指摘された情報を発信する人たちからの「検閲だ」という批判、特に国家レベルでの圧力は、これまでファクトチェックを経済的に支えてきた主要な業界や組織からの支援の減少を招き、活動の縮小や停止に追い込まれる団体が増えています。

ファクトチェックや偽情報対策をめぐる世界的な苦境については、こちらの解説記事を御覧ください。

世界のファクトチェックの苦境と増す重要性 「言論の自由の武器化」に対し、資金源・AI・規制の議論は
世界中のファクトチェッカーが集まり、偽・誤情報対策やファクトチェックの課題について議論する「GlobalFact」が今年も6月に開催され、日本ファクトチェックセンター(JFC)から編集長の私(古田)が参加しました。情報環境がより深刻になる中で、世界は今、この問題をどのように捉えているのか、解説します。 GF参加者の減少が示すファクトチェックの苦境 今年で12回目となるGlobalFact 12(GF12)は6月25-27日の3日間、ブラジルで開かれました。コロナ禍を経て2022年以降に開催されたGFがいずれも500人を超えたのに対し、今年は会場の参加者が300人ほどにとどまりました。 その理由は明白です。Metaがファクトチェック団体との協力プログラムを中止し、また、東欧やアフリカや南アメリカのファクトチェック団体を支援していたアメリカ国際開発庁(USAID)が活動停止したことに代表されるように、ファクトチェック業界への経済的な支援が急激に減る傾向にあり、各団体ともに人を派遣する体力がなくなっているからです。 GF12を主催する国際ファクトチェックネットワ

JFCをめぐる環境と今後の計画

JFCは2022年の設立時にGoogle.orgから150万ドル(3年間の総額)、Yahoo!JAPAN(当時)から2000万円の援助を受けました。また、2023年以降も、LINEヤフー、Metaからの援助の他、Google、TikTokなどからの業務の受託やJFC独自のコンテンツ配信や教育などの事業で収入を得ています。

会計の詳細については、JFCウェブサイト「JFCへの支援と会計」で収支報告書を含めて公開しています。設立時の大口の援助資金のおかげで運営できていますが、現状のままでは中長期的な活動の継続は不可能です。

IFCN助成金に選ばれたのは、毎月40本ほどのファクトチェック記事や解説や動画の配信、メディアリテラシー教育やセミナーなどの実績が認められたのと同時に、資金の見通しが厳しいという現実があるからです。

G7で活動する団体で選ばれたのはJFCだけで、それ以外はアジア、アフリカ、南米、東欧、中東の団体です。欧州にはEUを中心に公的資金で支える制度があり、その他の先進国でも財団などからの支援がありますが、残念ながら日本では、そのような制度や前例がありません。

JFCは独自の事業収入を強化しつつ、ファクトチェックやメディアリテラシーへの支援を呼びかけ、活動の継続を目指しています。

IFCNディレクター アンジー・ドロブニック・ホラン氏のコメント

「これらの助成金は、ファクトチェッカーがより持続可能なビジネスモデルの構築に取り組む間、活動を止めることなく発信を続けられるよう設計されています。私たちが支援する組織は、極めて重要な仕事を担っています。人々が詐欺やデマを避けて、質の高い情報にアクセスできるよう助けています。この助成金は、ファクトチェックを担うジャーナリストたちが日々の活動をしっかりとこなしつつ、未来に向けた計画を立てる猶予を提供するものです」

選出された25団体

Africa

FactCheckAfrica (Nigeria)
Piga Firimbi (Kenya)

Asia-Pacific

Japan Fact-check Center (Japan)
NepalFactCheck.org (Nepal)
PressOnePH (Philippines)
Tirto ID (Indonesia)
VERA Files (Philippines)

Europe

Belarusian Investigative Center (Belarus)
CivilNetCheck (Armenia)
Demagog (Czechia)
Greece Fact Check (Greece)
Hibrid (Kosovo)
KRIK (Serbia)
Myth Detector (Georgia)
Provereno (Estonia, serving audiences in Russia)
StopFake (Ukraine)

Latin America

Agencia Ocote (Guatemala)
Aos Fatos (Brazil)
Bolivia Verifica (Bolivia)
ColombiaCheck (Colombia)
Cotejo.info (Venezuela)
Ecuador Chequea (Ecuador)

Middle East and North Africa

Tech4Peace (Iraq)

South Asia

NewsMobile (India)
TeluguPost (India)


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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河野太郎氏が不正に当選? 開票作業にトラブルなし 出口調査とも一致【♯衆院選ファクトチェック】

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2026年2月8日投開票の衆院選で、神奈川15区から立候補していた自民党・河野太郎氏が不正に当選したという投稿が拡散しましたが、誤りです。河野氏は報道各社の事前調査などで大差の1位でした。神奈川県選挙管理委員会もJFCの取材に対し「管内の開票所でミスやトラブルの報告はない」と回答しています。 検証対象 拡散した言説 2026年2月8日、「支援者もいない 河野太郎がダントツ一位当選 おかしくないか」という投稿がXで拡散した。 このほか、同様の投稿は多数拡散している(例1,2)。 検証する理由 2月10日現在、投稿は2万回以上リポストされ、表示は294万件を超える。 「おかしくはない。支援者・支持者がいたから当選した。それだけの話だ」などの指摘もあるが、「なんか変だよね。この選挙。異様に自民党が当選してる」「票を操作できることがわかっているから自信満々で早苗は解散したんでしょう」など真に受けたコメントが多いため検証する。 検証過程 支持者がいないのに当選した? 拡散した投稿には、聴衆が河野氏の街頭演説に耳を傾けず素通りしている様子を映した動

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ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は2月28日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0228.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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JFCファクトチェッカー認定試験

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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