高市首相の台湾有事発言で中国の台湾侵攻計画が遠のいた? 米報告書は両者を別々に書いている【ファクトチェック】
高市早苗首相の台湾有事発言によって、中国の台湾侵攻計画が遠のいたという報告書を米国政府が出したという情報が拡散しましたが、誤りです。報告書は高市発言と侵攻計画にそれぞれ触れていますが、両者を結びつけていません。二つの事柄を並べた見出しが誤読を招いています。
検証対象
拡散した投稿
2026年3月、時事通信の「『中国、27年の台湾侵攻計画せず』 高市首相発言は重大転換―米報告書」という記事を引用し、「戦争止めてるじゃん」「高市総理が戦争止めてんじゃねーか!」といった投稿が拡散した(例1、例2)。

検証する理由
拡散した投稿には、5200件以上リポストされ、683万回以上表示されているものもある。投稿について「言葉でも抑止力なるということですね」「サナ、戦争止めてくれた」というコメントの一方で「これ書き方どうなの?」という指摘もある。
検証過程
高市首相、台湾有事を「存立危機事態になりうる」と発言
2025年11月7日、高市首相は衆院予算委員会で、台湾をめぐってどのような状況が、日本の「存立危機事態」にあたるのかという質問に「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えた(国会会議録”第219回国会 衆議院 予算委員会 第2号 令和7年11月7日”)。
「存立危機事態」とは2015年成立の安全保障関連法に盛り込まれた文言だ。米国など日本と密接な関係にある国が他国から武力攻撃を受け、「我が国が攻撃を受けた場合と同様な申告、重大な被害が及ぶことが明らか」(当時の内閣法制局長官答弁)な場合に認定される。中国は日本が武力介入を示唆したとして反発した(読売新聞”存立危機事態とは? 自衛隊の武力行使可能に…高市首相発言で中国反発”)。
記事は2つの話題を並列で書いている
拡散した投稿が引用している時事通信の記事は、アメリカの国家情報長官室が公表した世界の脅威に関する年次報告書の内容を報じている。
記事は報告書について「中国は2027年の台湾侵攻計画を現在持っていない」と「高市首相の台湾有事に関する発言(存立危機事態に該当し得るという認識)が重大な方針転換を意味する」という二つの内容を紹介している。
記事は2つの話題を並列して書いているが、両者を結び付けてはいない。
報告書の内容は
記事にある年次報告書は、アメリカの国家情報長官室サイトで確認できる(Office of the Director of National Intelligence.”2026 Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community”)。
2026年3月に公開された2026年の報告書を確認すると、22ページに「China–Taiwan」という項目がある。中国の台湾侵攻計画について次のように書いている。
「情報機関は、中国指導部が現在、2027年に台湾侵攻を実行する計画を立てておらず、また統一達成のための具体的な期限も定めていないと評価している」「しかし、中国は、中華人民共和国建国100周年となる2049年までに『国家の復興』という目標を達成するためには、台湾との統一が不可欠であると公に主張している」
このページに、高市首相の名前は出てこない。日本については続く23ページで取り上げられている。
高市首相の台湾有事に関する発言について「重大な方針転換(significant shift)」を示すものだと述べている。また、この発言により、日中関係の緊張は著しく高まり、日本への威圧的な圧力が強まるだろうと予測している。
判定
拡散した投稿が引用している記事は、中国の侵攻計画と、高市首相の台湾有事発言の2つを並べて取り上げているが、記事も、元々の報告書も高市首相の発言と中国の台湾侵攻計画を結び付けた書き方はしていない。よって、誤りと判定した。
出典・参考
時事通信.”「中国、27年の台湾侵攻計画せず」 高市首相発言は重大転換―米報告書”.https://www.jiji.com/jc/article?k=2026031900210&g=int ,(閲覧日2026年3月23日)
国会会議録”第219回国会 衆議院 予算委員会 第2号 令和7年11月7日”.https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121905261X00220251107¤t=27 ,(閲覧日2026年3月23日)
読売新聞”存立危機事態とは? 自衛隊の武力行使可能に…高市首相発言で中国反発”.https://www.yomiuri.co.jp/politics/20251116-OYT1T50014/ ,(閲覧日2026年3月23日)
Office of the Director of National Intelligence.”2026 Annual Threat Assessment of the U.S. Intelligence Community”.https://www.dni.gov/index.php/newsroom/reports-publications/reports-publications-2026/4141-2026-annual-threat-assessment ,(閲覧日2026年3月23日)
検証:木山竣策
編集:古田大輔
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