小泉進次郎氏の祖父は朝鮮人?総裁選を前に誤情報が拡散【ファクトチェック】

小泉進次郎氏の祖父は朝鮮人?総裁選を前に誤情報が拡散【ファクトチェック】

「小泉進次郎氏は、朝鮮人『小泉組・小泉純也』氏(写真)の孫」という言説が拡散しましたが、誤りです。小泉氏の祖父は防衛庁長官をつとめた小泉純也氏で、純也氏は朝鮮人ではありません。また添付画像の刺青をした男性は、純也氏とは別人です。

検証対象

2024年8月23日、上半身に刺青をした男性の写真とともに「小泉進次郎氏は、朝鮮人『小泉組・小泉純也』氏(写真)の孫」というX(旧Twitter)の投稿が拡散した。

8月26日現在で290万の閲覧数と3200のリポストがあり、「こんなの、絶対総理にしちゃいけない案件」といったコメントがあるほか、「印象操作」「一枚目の画像は別人です」という投稿への批判もある。

検証過程

小泉純也氏は朝鮮人なのか

衆議院議員の小泉進次郎氏の祖父の小泉純也氏(元総理大臣の小泉純一郎氏の父)は元衆議院議員。1960年代の池田勇人内閣、佐藤栄作内閣で防衛庁長官を務めた。

公職選挙法10条の規定で、国会議員になるには「日本国民」であることが条件なので、純也氏は朝鮮人ではない。

さらに小泉氏が日本国籍に帰化したかどうかを官報情報検索サービスで検索したところ、その事実は存在しなかった。

刺青の男性は小泉純也氏なのか

添付された、刺青をした男性の写真をGoogleレンズで検索したところ、Wikimedia Commonsの写真と一致する。説明には「彫師『彫千代』のものと考えられている写真」と記されている。

この写真は長崎大学附属図書館 幕末・明治期古写真データベースに所蔵されており、撮影者は鈴木真一(二代目)と明記されている。鈴木真一(二代目)こと写真家の岡本圭三は1912年に死去している( 日本カメラ財団「調査研究」)。

小泉純也氏は1904年生まれ、岡本氏が最晩年に小泉純也氏を撮影したとしても8歳であり、写真の男性は子どもではなく成人男性であることから小泉純也氏ではないことがわかる。

なお、進次郎氏の曽祖父の小泉又次郎氏も政治家で、昭和初期に濱口雄幸内閣と若槻禮次郎内閣で逓信大臣を務めた。又次郎氏には刺青があり「刺青大臣」の異名をとっていたと伝えられている(小野友道著「いれずみ物語」)。

判定

「小泉進次郎氏は、朝鮮人『小泉組・小泉純也』氏(写真)の孫」という言説が拡散したが、誤り。公選法で国会議員になるには日本国民であることが条件であり、帰化した記録も存在しない。また、添付された写真の刺青の男性は別人だ。

あとがき

小泉進次郎氏は、9月の自民党総裁選挙に立候補する意思を周囲に伝えていると報じられています(読売新聞)。総裁選で注目を集める候補に関する偽・誤情報は今後も拡散する可能性が高いため、注意が必要です。

また、「⚪︎⚪︎は××人」というような国籍に関する偽・誤情報はこれまでに多数拡散しており、JFCでも検証しています(総理になれるのはほぼ朝鮮人!官報でも確認できる事実?【ファクトチェック】)。外国人へのヘイトを煽る投稿でもあり、特に注意しましょう。

検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ、野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

AIの「回答のばらつき」と「政治的バイアス」をどう防ぐ? 【GlobalFact2026報告③】

AIの「回答のばらつき」と「政治的バイアス」をどう防ぐ? 【GlobalFact2026報告③】

国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の「グローバル・ファクト2026」では、ファクトチェックへのAIの活用やリスクについて、多くのパネル討論が開かれました。中でも、AIの信頼性に関する議論は、ファクトチェッカーたちが最も危機感を募らせたテーマの一つです。AIはどの程度信用できるのか。登壇者たちが報告したAIの問題点と、改善に向けた取り組みを紹介します。 世界最大のファクトチェッカー「AI」を監視せよ 同一プロンプトなのに、日によって変わる回答 英国のファクトチェック団体Full Factは、AIが提示する情報の信頼性について、独自に分析した結果を発表しました。登壇したのは、団体のCEO・Chris Morris氏と、AI部門責任者Andrew Dudfield氏です。 Full Factは2009年創設。2025年の総収入305万ポンド(約6億円)規模の非営利団体で、活動資金は個人の寄付や財団、テック企業などからの資金でまかなっています。政治家の発言やネット上の誤情報を多数検証してきた実績がありますが、2025年、主要な資金源の一つだったGoog

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
詐欺対策ボットからディープフェイク判定まで、偽・誤情報対策におけるAI活用【GlobalFact2026報告②】

詐欺対策ボットからディープフェイク判定まで、偽・誤情報対策におけるAI活用【GlobalFact2026報告②】

国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の「グローバル・ファクト2026」で、注目を集めたテーマの一つがAIです。偽情報を大量に生み出す「脅威」であると同時に、ファクトチェックを支える「味方」にもなる。そうしたAIの二面性を象徴するような報告や議論が、随所で交わされました。 詐欺対策からヘイトスピーチ監視まで、現場で進むAI活用 3日間にわたる会議の中で、初日から、AIを活用した成功例が次々と報告されました。特に印象的だった3つの事例を紹介します。  オンライン詐欺対策にAIチャットボット インドのファクトチェック団体The Quintからは、オンライン詐欺対策用に開発したAIチャットボット「Scamguard」の紹介がありました。 The Quintは、インドで発生しているオンライン詐欺の手口をまとめたデータベースをつくり、そのデータベースとWhatsAppなどのメッセージアプリをつないだチャットボットを作成。不審なメッセージを受け取ったユーザーが、アプリのチャットボットに転送すると、ボットが詐欺の見分け方や政府の窓口の情報などを案内する仕組みを

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
GlobalFact報告記事1/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

GlobalFact報告記事1/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

6月に開催された国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の年次総会GlobalFact2026について、報告記事の第一弾を公開しました。 ファクトチェックや情報環境を取り巻く問題の全体的な状況について、登壇者らの声を引用しています。今後、AIや認知戦など個別のトピックについても報告記事を書いていきます。ご期待ください。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月25日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ファクトチェックという「公共財」をどう支えるか ビジネスへの活用策は【GlobalFact2026報告①】

ファクトチェックという「公共財」をどう支えるか ビジネスへの活用策は【GlobalFact2026報告①】

世界のファクトチェッカーが集まる「GlobalFact 2026」が6月17〜19日、リトアニアのヴィリニュスで開かれ、約80カ国から300人超が参加しました。テーマは、AIをはじめとするテクノロジー、海外からの影響工作、オンライン詐欺、そしてファクトチェックの持続可能性など、多岐にわたりました。 日本ファクトチェックセンター(JFC)から5年連続で参加している筆者(古田)らが、登壇者たちの言葉を交えて報告します。初回は、ファクトチェック業界が直面する資金不足とその対策についてです。 IFCN代表が語る「検閲批判」や「ビジネスモデルの切り崩し」 主催した国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)のAngie Drobnic Holan代表は、開会挨拶で業界への逆風を次のように述べました。 「私たちは公平で非党派的であろうと最大限努めても、偏向していると非難されてきた」「私たちのビジネスモデルは切り崩されている。AIが生成する要約や、正確性に投資せず注目(アテンション)だけで利益を得る独占的プラットフォームによって」(PolitiFact”At Globa

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月25日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 7月25日(土)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)