保守党「東京都は経済的豊かさ全国最下位」? 指標は2つ、最新ランクはアップ

東京都議選で日本保守党の有本香事務総長が東京都について「47都道府県の経済的豊かさランキングで最下位」と発言しましたが、誤りです。根拠とされた2021年の資料に経済的豊かさに関する指標は2つあり、低い方が47位。最新の2024年の資料では低い方でも40位です。
検証対象
2025年6月13日に告示された東京都議選で、日本保守党の有本香事務総長が東京都について「大変繁栄して豊かなように見えるけれども、実は47都道府県の経済的豊かさランキングというものでは47位でございます」と発言した(NHK"都議選告示 各党幹部は何を訴えた【ノーカット動画 演説全文】”)。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、東京都が経済的豊かさで47都道府県最下位かを検証した。
検証過程
根拠は国土交通省の資料
日本保守党の有本事務総長が言及している「47都道府県の経済的豊かさランキング」とは何か。
NHKのサイトでは、東京都議選の告示日の有本氏の演説がノーカット動画と文字起こしで確認できる。その中で有本氏は「彼のソーシャルメディアで発信しております」と触れている(NHK"都議選告示 各党幹部は何を訴えた【ノーカット動画 演説全文】”)。
「彼」とは日本保守党から杉並選挙区に立候補している大谷司郎候補を指している。大谷候補は自身のXで2025年6月9日に「東京都は『経済的な豊かさの47都道府県ランキング』で47位」と投稿し、国交省の資料にリンクを貼っている。
この国交省の資料は2021年に開催された国土交通省「企業等の東京一極集中に関する懇談会」で配布されたものだ。これを見ると、確かに2枚目に東京都が47位となっている(国交省”「企業等の東京一極集中に関する懇談会」参考資料”)。
「通勤の機会費用」も含めた指標では最下位
この資料は2014年のデータをもとに国交省が独自にまとめたものだ。「経済的な豊かさ」に関して、各都道府県のデータをもとに2つの指標を示している。
1つ目は中央世帯の「可処分所得(東京都12位)」から「基礎支出(東京都1位)」を引いた差額順位。2つ目は、そこからさらに「通勤の機会費用(東京都1位)」を引いたものだ。
前者の「可処分所得-基礎支出」は東京都42位。後者の「可処分所得-基礎支出-通勤の機会費用」は東京都47位となっている。
最新版では東京はランクアップ
JFCが国交省総合計画に確認したところ、この指標に関する最新版の資料は2024年12月4日の地域生活圏専門委員会で配布されたものだ。こちらは2019年のデータを国交省が独自にまとめている。
それによると、中央世帯において「可処分所得(東京都5位)」-「基礎支出(東京都47位)」の差額順位は東京都25位。さらに通勤時間控除を引いた差額順位は東京都40位となっている(国交省”第2回地域生活圏専門委員会参考資料1”)。
つまり、日本保守党の大谷候補が示した2021年版の資料と異なり、通勤時間を考慮に入れても最下位にはなっていない。
判定
日本保守党の有本事務総長らが主張する「東京都は経済的豊かさランキングで47都道府県最下位」は誤り。根拠とした国交省の資料は2021年のもので、経済的豊かさを2つの指標で示しており、「可処分所得-基礎支出」は東京都42位。後者の「可処分所得-基礎支出-通勤の機会費用」は東京都47位。また、2024年に公表された最新版の資料では通勤を考慮に入れても40位となっている。
出典・参考
NHK."都議選告示 各党幹部は何を訴えた【ノーカット動画 演説全文】”2025年6月13日. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250613/k10014834011000.html (閲覧日2025年6月18日)
国交省”「企業等の東京一極集中に関する懇談会」参考資料”https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001389727.pdf(閲覧日2025年6月18日)
国交省”第2回地域生活圏専門委員会参考資料1. https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001845887.pdf(閲覧日2025年6月18日)
検証:古田大輔
編集:根津綾子
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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