小泉進次郎氏「日本人には大学不要、ライドシェアで稼げ」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

小泉進次郎氏「日本人には大学不要、ライドシェアで稼げ」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

自民党の小泉進次郎衆議院議員が「日本人には大学不要、ライドシェアで稼げ」などと発言したという情報が拡散しましたが、誤りです。発言を歪曲しています。

検証対象

2025年3月18日、小泉進次郎氏が「日本人には大学不要、中国人の留学費用は負担。日本人はライドシェアで稼げ」と発言したとする投稿が拡散した。投稿には、まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」のリンクがある。

3月19日現在、この投稿には、1万を超えるリポストがあり、65万以上の閲覧を獲得している。「ライドシェア自分で試してみたら」「自国民より外国人を優先する政策ですか」といったコメントのほか、「交通空白地と呼ばれる地域の解消に向けて普及が促されている」と指摘するものもある。

検証過程

検証対象の投稿のリンクは、まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」の記事だ。この記事は「日本人:奨学金返済が大変⇒小泉:大学に行くのが全てじゃない」というXの投稿を引用元にして、「JAPAN NEWS NAVI」は「日本人には大学不要」と言うタイトルをつけている。

引用元の投稿には「解雇規制を無くし、年金は80歳からにし、ライドシェアも解禁。一方で中国人の留学費用は負担するが、日本人には大学に行かなくて良いと言う。日本人は全員ライドシェアで稼げという意味か?日本が破滅する」と書いてあり、投稿日は2024年9月17日だ。

小泉氏、自民総裁選で「大学に行くのが全てではない」と発言

引用された投稿の前日の2024年9月16日、小泉氏は、自民党総裁選の立候補者9人による討論会に出席している。その中で小泉氏は「大学に行くのがすべてではない」などと発言している。

討論会の内容は共同通信のYouTubeチャンネル「KYODO NEWS」で確認できる(【詳報】9候補、災害対応など討論 金沢で党青年・女性両局主催)。

この動画の1時間34分35秒頃、「40歳まで(奨学金)返済が続く中で本当に結婚や子育てができるのか不安な声が上がっている」という質問に対して、小泉氏は以下の様に発言している。

「奨学金だけではなくて、私は、教育のあり方を変えたいと。大学にいくのが全てじゃないです。これからの時代、求められているところはいっぱいあります。今日も和倉温泉、加賀温泉、その旅館やホテルの関係者と意見交換しました。今、日本食の料理人の数が足りなくて困っています、旅館とか。そして、そうした手に職をつければ、遜色なく稼げるようなキャリアが作れます。教育の多様化、高専の強化、こういうことも抜本改革でやっていきたいと思います」

つまり、大学だけではない様々な選択肢について話しており、「日本人には大学不要」とは言っていない。

小泉氏は、ライドシェア勉強会会長

小泉氏は、2023年11月に発足した超党派のライドシェア勉強会の会長だ(日本テレビ)。ライドシェアは、自家用車を使って人を運ぶ交通サービスで、海外では普及している。日本では、2024年4月にタクシー会社が運行を管理する形で一部の地域で始まった(NHK)。

小泉氏は、ライドシェアのビジネスの側面について、取材を受けた際、以下のように答えている(東洋経済オンライン)。

「ライドシェアの考えはタクシーとは全く異なり、今の足りないところを埋めていくと言うだけではなく、隙間時間を利用して、一定の稼ぎがある新しい働き方を地域に加えることによって、いままで潜在的にあったけど、表面化されていなかった需要が創出されていくというビジネスだと捉えています」

小泉氏は、ライドシェアのビジネス面に言及しているが、「日本人には大学不要」「日本人はライドシェアで稼げ」などとは言っていない。その他のインタビューやソーシャルメディアの発信でもこのような発言は確認ができない。

判定

小泉進次郎氏が「日本人には大学不要、ライドシェアで稼げ」と発言したとする情報は誤り。過去に小泉氏は「大学に行くことが全てではない」という発言やライドシェアのビジネス面への言及があるが、拡散した主張は、小泉氏の個々の発言を歪曲して結びつけている。

検証:宮本聖二
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

ファクトチェックの世界大会で日本チームが優勝!/JFC検証5本など【今週のファクトチェック】

ファクトチェックの世界大会で日本チームが優勝!/JFC検証5本など【今週のファクトチェック】

昨年に続いて、若者層を対象に情報検証スキルを競う「ユースファクトチェック選手権」2025の世界大会を12月13日に開催しました。 日本、台湾、タイ、インド、モンゴルの国内大会を勝ち上がった各5チーム(1チーム2~3人)が検索力やGoogleマップなどを駆使して、記事に隠された誤情報やAIによるディープフェイクなどの検証クイズに挑み、日本から参加したチーム「YAYO-SAN」が、昨年上位を独占した台湾からのチームを抑えて優勝しました! この大会はアジア地域のファクトチェック団体などで連携して開催をしています。日本では我々、日本ファクトチェックセンターと学生スタートアップでメディア情報リテラシー教育の普及に取り組む学生スタートアップClassroom Adventureで共同で運営しています。 Classroom Adventureを設立した学生たちは2022年、Googleが実施していたこの選手権の前身の大会に参加していました。私(古田)は当時、Google News Labで働いていて運営側にいたので、彼らとの共催は、とても感慨深いです。 今週のファクトチェックで紹

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
地震発生後に大量の生成AI動画、「ディープフェイク」は一般化 透かしや細部の確認など見分け方のコツも解説【ファクトチェック】

地震発生後に大量の生成AI動画、「ディープフェイク」は一般化 透かしや細部の確認など見分け方のコツも解説【ファクトチェック】

2025年12月8日に青森県八戸市で震度6強を観測した地震で、生成AIで作った「ディープフェイク」動画がTikTokなどで多数拡散しました。災害など注目を集める話題には、ディープフェイクが拡散することが一般的になっています。AI生成特有の透かしや関連情報の確認が必要です。 地震直後から拡散した大量の「ディープフェイク」 生成AIで作られた画像や動画を「ディープフェイク」と言う。12月8日に青森県東方沖で地震が発生すると、その直後からTikTokなどSNSで被害を訴える動画や、ニュース速報のように見せた動画が多数投稿された(例1、例2、例3)。 動画では、津波の高さが最大3mだと伝えるものや、建物が崩落したり、地面がひび割れたりする映像が映っている。投稿したアカウントには、国内からのものだけでなく、海外からのものもある。 これらの投稿に関して「ああ、なんてことだ」「深刻だ」など事実と受け取っているコメントも付いている。 AIで作ったことを示す「透かし」 これらの動画の一部には「Sora」という透かし文字が画面上に表示されている。 Soraは、Open

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
パーソナライズ【JFC用語解説】

パーソナライズ【JFC用語解説】

パーソナライズとは、一人ひとりの利用者にあわせて情報やサービスを最適化することです。新聞やテレビなどのマスメディアは、不特定多数に同じ情報を同時に伝えます。一方で、インターネットの情報プラットフォームは、アルゴリズムによって、ユーザーの好みや属性に合わせて、見せる情報を変えます。 例えば、YouTubeには世界中から1分間に500時間分を超える動画がアップロードされています。 その大量の動画の中から、アルゴリズムに則って、ユーザーの登録しているチャンネルや、これまでに見た動画の傾向、視聴時間などを分析し、そのユーザーがその瞬間にみたいであろう動画をオススメします。 筆者(古田)の場合なら、トレーニング、ランニング、格闘技、ニュース、コメディなどの動画が並ぶことになります。 音楽好きなら音楽、旅行好きなら旅行の動画が並びます。新聞の1面記事がユーザーによって変化することはありません。これがプラットフォームの強みの一つであり、フィルターバブルを生む理由でもあります。 アルゴリズムとは【JFC用語解説】アルゴリズムとは、広義には「問題を解決するための手順」のことですが、。料理のレシ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
主成分に添加物がたくさん含まれているK2シロップは赤ちゃんに不要? ビタミンKの摂取は必要【ファクトチェック】

主成分に添加物がたくさん含まれているK2シロップは赤ちゃんに不要? ビタミンKの摂取は必要【ファクトチェック】

主成分に添加物がたくさん含まれているK2シロップは赤ちゃんには不要、という情報が拡散しましたが、誤りです。K2シロップは、新生児にビタミンKを与えるために必要です。また、使用されている添加物は全てPMDA(医薬品医療機器総合機構)で安全性が確認されています。 検証対象 2025年12月5日、「添加物がヤバ過ぎるんじゃないかと何かと話題のケイツーシロップ 一応赤ちゃんに(不要な)ビタミンKを与えるのが目的 その主成分『メナテトレノン』って実は…高齢者用の骨粗鬆症治療薬で👨‍🦲🧓これ自体ものすごい添加物が入ってる💦」という投稿が拡散した。 12月8日現在、この投稿は330件以上リポストされ、表示回数は44万回を超える。投稿について「何でこんなに添加物入るんですかね?」「そんなに要ります?」というコメントの一方で「必要だから飲ませてんだよ」という指摘もある。 検証過程 K2シロップとは 新生児はビタミンKの不足による出血症を起こしやすく、頭蓋内出血など致命的な事例もある。K2シロップは1mLあたりビタミンK2を2mg含むビタミンK不足の予防薬と

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は12月20日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1220.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)