社民党・ラサール石井氏がガソリン暫定税率廃止に反対? 今国会では審議されていない【ファクトチェック】

社民党・ラサール石井氏がガソリン暫定税率廃止に反対? 今国会では審議されていない【ファクトチェック】

参議院議員・ラサール石井氏(社民党)が、国会でガソリン暫定税率廃止に反対した、という投稿が拡散しましたが、誤りです。8月1~5日開催の第218回国会(臨時会)では、ガソリン暫定税率に関する法案は審議されていません。社民党も否定しています。

検証対象

8月4日、国会でラサール氏が起立している画像に「ラサール石井。ガソリン暫定税率廃止に反対に起立する」と書いた投稿がXで拡散した。

投稿は、8月6日時点までに削除されている。同様の投稿は多数拡散し、表示回数が1300万回を超えるものもある(例1例2)。

拡散した投稿には「減税に反対してる議員って日本人じゃないよね」「いきなり裏切り。投票した人は反省して」といったコメントや「まだ審議にすら入ってない」「デマです」などの指摘もある。

検証過程

ガソリン暫定税率廃止法案とは

ガソリン税の暫定税率を廃止する法案は、ガソリン1リットルあたり25.1円が上乗せされている暫定税率を、11月1日から廃止する内容だ。

8月1日に、立憲民主、日本維新の会、国民民主など野党7党が、法案を衆議院に共同提出した(以上、読売新聞"ガソリン暫定税率廃止法案、野党7党が共同提出…秋の臨時国会で成立方針”)。

ガソリン税の暫定税率は、与野党6党の国会対策委員長が年内に廃止することで合意し、6党の実務者協議が始まっている( NHK”自民税制調査会 ガソリン税暫定税率 “野党も財源確保に責任”)。

国会審議は始まっていない

ラサール氏は7月20日投開票の参院選で当選しており、初登院が8月1日だ。初めての国会となる第218回国会(臨時国会)は8月1日に始まり、5日に終わった。

第218回国会で、ガソリン暫定税率に関する法案は審議されたのか。日本ファクトチェックセンター(JFC)は参議院に確認した。回答は次の通りだ。

「第218回国会臨時会に提出された法案は参議院公式サイトの『議案情報』のページで確認できる。こちらに掲載されていないので、審議しなかったということだ」

社民党も否定

ラサール氏が所属する社民党のX公式アカウントは8月4日、拡散した投稿のスクリーンショット付きで「こちらの投稿内容は事実ではありません。デマの流布はやめていただきたい。背景情報が追記されているとおりです。速やかに取り下げてください」と投稿した。

スクリーンショットに書かれている背景情報には「投稿のなされた2025年8月4日13時時点で第218回国会の参議院ではガソリン暫定税率法案の審議はなされていません」と書いてある。

判定

参議院議員・ラサール石井氏が、国会でガソリン暫定税率廃止に反対した、という趣旨の画像が拡散した。8月1日に始まった第218回国会(臨時会)では、参議院で同法案の審議はなく、ラサール氏が所属する社民党もこの内容を否定している。よって、誤りと判定する。

出典・参考

読売新聞."ガソリン暫定税率廃止法案、野党7党が共同提出…秋の臨時国会で成立方針. https://www.yomiuri.co.jp/politics/20250801-OYT1T50077/,  (閲覧日2025年8月7日).

NHK.”自民税制調査会 ガソリン税暫定税率 “野党も財源確保に責任”. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250805/k10014885281000.html, (閲覧日2025年8月7日).

参議院.”議案情報”. https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/218/gian.htm, (閲覧日2025年8月7日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

こども家庭庁が女性用トイレの行列解消に乗り出す? 三原氏が女性活躍大臣として発信【ファクトチェック】

こども家庭庁が女性用トイレの行列解消に乗り出す? 三原氏が女性活躍大臣として発信【ファクトチェック】

「こども家庭庁が『女性用トイレの行列解消』に取り組む」と批判的に取り上げる情報が拡散しましたが、誤りです。こども家庭庁の担当大臣でもある三原じゅん子氏が女性活躍担当大臣として発信している政策です。 検証対象 2025年7月16日、こども家庭庁が「ろくな少子化対策も出来ないまま、なぜか『女性用トイレの行列解消』に乗り出す」という投稿がXで拡散した。 2025年8月5日現在、投稿は2.7万件以上リポストされ、表示回数は159万回を超える。投稿について「こども家庭庁解体して」「関係有るのか」というコメントの一方で「家庭庁と女性なんとかと兼務してなかったっけ」という指摘もある。 検証過程 検証対象のリンクは、まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」の記事だ。内閣官房の公式Xアカウントが2025年7月11日にXに投稿した内容を引用元としている。 内閣官房の投稿は、以下の通りだ。 「三原大臣からのメッセージです。女性の視点を取り入れた政策を一層進めます。その一環として、石破総理の指示の下、政府横断の会議を立ち上げ、駅や百貨店、様々なイベント会場・施設等で

By 木山竣策
国民民主党が選挙後に消費税5%への減税とインボイス廃止を撤回? どちらも撤回していない【ファクトチェック】

国民民主党が選挙後に消費税5%への減税とインボイス廃止を撤回? どちらも撤回していない【ファクトチェック】

国民民主党が、2025年参院選で公約に掲げた「消費税5%への減税」と「インボイス廃止」を選挙後に撤回した、という言説が拡散しましたが、誤りです。撤回した事実はありません。 検証対象 7月30日、国民民主党の政策ポスターを並べ、「消費税5%もインボイス廃止もしれっと無くなる」と記した投稿がXで拡散した。 8月7日現在、投稿は1.6万回以上リポストされ、表示は373万回を超える。投稿には「他党から票を盗む方便だから」「顔が嘘くさい🤮 最初から全然信用出来ない‼️ 」というコメントや「どちらも選挙前です。デマです」「国民民主党の公式ホームページに普通に載ってますよ」などの指摘が寄せられている。 ほぼ同じ内容の言説は、YouTubeやTikTokでも拡散している(例1、例2)。 検証過程 公式サイトにはいまも政策を記載 拡散した画像のうち、左側のポスターには「消費税一律5%」「インボイス制度廃止」と左下に大きく記されているが、右側にはない。ここだけを見ると、投稿者の言うように政策からこの2点が外れたように見える。 一方で、国民民主党の政策ページには「

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
選挙をめぐるファクトチェックへの批判、限界、今後【参院選ファクトチェック解説】

選挙をめぐるファクトチェックへの批判、限界、今後【参院選ファクトチェック解説】

2025年参院選でファクトチェックが急増したという解説記事で、何がどう検証されているかの傾向を分析しました。課題は何か。誤情報が選挙で拡散するのを防ぐためにどんなファクトチェックが望ましいのか。解説します。 (ファクトチェック普及を推進するNPOファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)がまとめたリストをもとに検証の傾向を解説した記事はこちら) JFC"5倍に増えた日本のファクトチェック、最も誤りを指摘されたのは参政党 誰の何が検証されたのか【参院選ファクトチェック解説】" ファクトチェックへの批判 「参政党を狙い撃ち」? 実際のデータは ファクトチェックが増える中で、批判もありました。目立ったのは「参政党を狙い撃ちにしているのではないか」という声です。 上述の解説記事でも触れたデータで見ると、ファクトチェック記事の約半分に当たる89件は個別の政党に触れない検証でした。一方、検証対象になった政党で最も多かったのは参政党45件(24.7%)でした。2番目の自民党が14件(7.7%)なので、その多さは際立ちます。 日本ファクトチェックセンター(JFC)

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
太陽光発電で地球温暖化が進む? 大きな抑止効果【ファクトチェック】

太陽光発電で地球温暖化が進む? 大きな抑止効果【ファクトチェック】

「太陽光発電で温暖化が進む」という言説が拡散しましたが、誤りです。国連は2025年の報告書で太陽光発電を極めて大きな地球温暖化抑止効果があると評価し、日本の資源エネルギー庁も温室効果ガスを排出しない重要な低炭素のエネルギー源と位置づけています。施設によって局所的にわずかな気温上昇があったとしても「温暖化とは別物」と専門家も指摘しています。 検証対象 7月26日、「山に太陽光パネルがあるとどうなる?地球温暖化が進む」という投稿がXで拡散した。投稿には大量の太陽光パネルが並ぶ画像も添付されている。 7月29日午前9時時点で、表示件数は2000万件を超えたが、同日18時時点で投稿は削除されていた。 「異常な暑さを記録した地点と、太陽光発電施設の場所が一致する」など、連日の高温と太陽光発電との関連を示唆する言説は、他にも多数拡散している(例1、例2)。 太陽光発電で地球温暖化は進むのか、検証する。 検証過程 日本政府・国連は太陽光発電の温暖化抑止効果を高く評価 太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽光を電気に変換

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は8月23日(土)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0823.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)