自民・小泉進次郎氏「立憲民主・野田代表が農林水産予算10倍と発言」? 新規就農支援に限った話【#参院選ファクトチェック】

自民・小泉進次郎氏「立憲民主・野田代表が農林水産予算10倍と発言」? 新規就農支援に限った話【#参院選ファクトチェック】

自民党・小泉進次郎農林水産相が、立憲民主党・野田佳彦代表が「農水予算を10倍にする」と発言したかのような投稿をしましたが、誤りです。野田代表の発言は農水予算全体ではなく、新規就農支援に限定した話で、立憲民主党の公約にも明記されています。

検証対象

自民党の小泉進次郎農林水産相が立憲民主党の野田佳彦代表の参院選での発言に関する記事のスクリーンショットと共に「農林水産予算を10倍???23兆円にするってことですよね…。やっぱり野党は無責任」とXに投稿した。

投稿には、NHKニュースがXに投稿した「【ノーカット動画】参議院選挙 公示 各党党首らは何を訴えた」のリンクが添付されている。

2025年7月8日現在、この投稿は1700件以上リポストされ、表示回数は130万回を超える。投稿について「消費税を5%から8%に上げた立憲野田は許さない」「野党は無責任。おっしゃる通り」というコメントの一方で「農業人口増やす為の予算を10倍にしたいんだろ」という指摘もある。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は小泉氏が投稿したように野田氏が農水予算を10倍にすると発言したのかを検証した。

検証過程

野田氏の発言内容は

小泉氏が引用しているNHKの記事は、野田氏の参院選初日の演説を文字起こししたものだ。スクリーンショットにもある通り、以下のように発言している。

「物価高から、あなたを守り抜く。最も大きな要因となっているのはコメの値上がりだ。コメ離れも心配だが、作っている人たちが離農をするような状況になったら日本の食料安全保障を確保することはできない。もっと農業人口が増えるようにするための予算を10倍にしたい。食料品にかかる消費税は8%から0%にしようと思う。財源はしっかりと提示しており責任ある減税を果たしていきたい」

「もっと農業人口が増えるようにするための予算を10倍にしたい」と発言しているが、これが農水予算全体の話だとは書いていない(NHK"【ノーカット動画】参議院選挙 公示 各党党首らは何を訴えた”)。

動画で確認すると

NHKの記事に埋め込まれた野田氏の演説動画を確認すると、前後を含めて正確には以下のように語っていた。

「農業の基盤は農地と農業者の数だとわれわれは思います。農地は減らさない。減らさない。維持をするために直接支払いをする、そして農業者は減らさないどころか、新規就農にもっと力を入れて、もっと農業人口が増えるように、われわれは予算を10倍にしたいと思っています」

「新規就農支援、これまでは対象が49歳以下でした。49歳以下じゃこれ狭すぎませんか、的が。都市部でも農業やりたいという人、いっぱいいます。50代、60代、いますよ、いっぱい元気な人が。そういう人にもチャンスを作るために、65歳以下まで年齢要件引き上げました。若い人がチャレンジする場合、ご夫婦で農地をまさに耕して仕事しようと思っている人たちいるならば、加算はしていこうと思っています。思いきって増やそうと思っています」

内容を要約した記事よりも明確に、新規就農支援のための予算を10倍にすると語っているとわかる。農林水産全体の予算を10倍にしたい、という発言はない。

新規就農予算10倍は立憲民主党の公約

「新規就農予算10倍」は立憲民主党が参院選の公約として掲げている。農水政策の項目で「農家の激減に対応するため就農支援の資金を10倍に強化・拡充し、都市部のサラリーマンなどの新規就農対策を推進します」と明記している(立憲民主党”2025政策一覧 農山漁村・生活インフラを守って、地方を豊かに”)

また、新規就農について、就農準備資金、経営開始資金、相談窓口の整備、農業体験学習の強化など、総額2500億円の対策をまとめて公表している(立憲民主党”【政調】立憲民主党の「新たな新規就農対策」”)

野田氏「言うわけないでしょう。厳しく抗議したい」

朝日新聞によると、野田氏は7月4日の街頭演説で以下のように述べている。

「今の農業予算は、約2兆2千億円ですよ。その10倍というのは、22兆円。言うわけないでしょう。厳しく抗議したいと思いますね。選挙中は偽情報・誤情報を流したら、それを取り消すのは大変なんですよ」(朝日新聞"立憲・野田氏「小泉農水相の投稿は卑怯千万。誤情報取り消しは大変」”)。

ファクトチェック団体「リトマス」も、小泉氏の発信を検証し「誤り」と判定している(リトマス. “立憲・野田氏が「農林水産予算10倍」「23兆円」主張? 小泉進次郎氏投稿は誤り”)。

判定

野田氏は「新規就農の農業人口が増えるように予算を10倍にしたい」と語っている。よって小泉氏が発信した「立憲の野田氏が農林水産予算を10倍」は誤りと判定した。

出典・参考

NHK"【ノーカット動画】参議院選挙 公示 各党党首らは何を訴えた”2025年7月3日.https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250703/k10014851881000.html ,(閲覧日2025年7月8日).

立憲民主党. “農山漁村・生活インフラを守って、地方を豊かに — 農林水産・環境・エネルギー政策”. https://cdp-japan.jp/election2025/visions/environmental_energy/ , (閲覧日 2025年7月8日).

立憲民主党. “〖政調〗立憲民主党の「新たな新規就農対策””. 2025年4月24日. https://cdp-japan.jp/news/20250530_9298 , (閲覧日 2025年7月8日).

朝日新聞. “立憲・野田氏「小泉農水相の投稿は卑怯千万。誤情報取り消しは大変」”. 2025年7月4日. https://www.asahi.com/articles/AST743HKNT74UTFK00ZM.html , (閲覧日 2025年7月8日).

リトマス. “立憲・野田氏が「農林水産予算10倍」「23兆円」主張? 小泉進次郎氏投稿は誤り”. 2025年7月7日. https://litmus-factcheck.jp/2025/07/4957/ , (閲覧日 2025年7月8日).

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

地震発生後に大量の生成AI動画、「ディープフェイク」は一般化 透かしや細部の確認など見分け方のコツも解説【ファクトチェック】

地震発生後に大量の生成AI動画、「ディープフェイク」は一般化 透かしや細部の確認など見分け方のコツも解説【ファクトチェック】

2025年12月8日に青森県八戸市で震度6強を観測した地震で、生成AIで作った「ディープフェイク」動画がTikTokなどで多数拡散しました。災害など注目を集める話題には、ディープフェイクが拡散することが一般的になっています。AI生成特有の透かしや関連情報の確認が必要です。 地震直後から拡散した大量の「ディープフェイク」 生成AIで作られた画像や動画を「ディープフェイク」と言う。12月8日に青森県東方沖で地震が発生すると、その直後からTikTokなどSNSで被害を訴える動画や、ニュース速報のように見せた動画が多数投稿された(例1、例2、例3)。 動画では、津波の高さが最大3mだと伝えるものや、建物が崩落したり、地面がひび割れたりする映像が映っている。投稿したアカウントには、国内からのものだけでなく、海外からのものもある。 これらの投稿に関して「ああ、なんてことだ」「深刻だ」など事実と受け取っているコメントも付いている。 AIで作ったことを示す「透かし」 これらの動画の一部には「Sora」という透かし文字が画面上に表示されている。 Soraは、Open

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
パーソナライズ【JFC用語解説】

パーソナライズ【JFC用語解説】

パーソナライズとは、一人ひとりの利用者にあわせて情報やサービスを最適化することです。新聞やテレビなどのマスメディアは、不特定多数に同じ情報を同時に伝えます。一方で、インターネットの情報プラットフォームは、アルゴリズムによって、ユーザーの好みや属性に合わせて、見せる情報を変えます。 例えば、YouTubeには世界中から1分間に500時間分を超える動画がアップロードされています。 その大量の動画の中から、アルゴリズムに則って、ユーザーの登録しているチャンネルや、これまでに見た動画の傾向、視聴時間などを分析し、そのユーザーがその瞬間にみたいであろう動画をオススメします。 筆者(古田)の場合なら、トレーニング、ランニング、格闘技、ニュース、コメディなどの動画が並ぶことになります。 音楽好きなら音楽、旅行好きなら旅行の動画が並びます。新聞の1面記事がユーザーによって変化することはありません。これがプラットフォームの強みの一つであり、フィルターバブルを生む理由でもあります。 アルゴリズムとは【JFC用語解説】アルゴリズムとは、広義には「問題を解決するための手順」のことですが、。料理のレシ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
主成分に添加物がたくさん含まれているK2シロップは赤ちゃんに不要? ビタミンKの摂取は必要【ファクトチェック】

主成分に添加物がたくさん含まれているK2シロップは赤ちゃんに不要? ビタミンKの摂取は必要【ファクトチェック】

主成分に添加物がたくさん含まれているK2シロップは赤ちゃんには不要、という情報が拡散しましたが、誤りです。K2シロップは、新生児にビタミンKを与えるために必要です。また、使用されている添加物は全てPMDA(医薬品医療機器総合機構)で安全性が確認されています。 検証対象 2025年12月5日、「添加物がヤバ過ぎるんじゃないかと何かと話題のケイツーシロップ 一応赤ちゃんに(不要な)ビタミンKを与えるのが目的 その主成分『メナテトレノン』って実は…高齢者用の骨粗鬆症治療薬で👨‍🦲🧓これ自体ものすごい添加物が入ってる💦」という投稿が拡散した。 12月8日現在、この投稿は330件以上リポストされ、表示回数は44万回を超える。投稿について「何でこんなに添加物入るんですかね?」「そんなに要ります?」というコメントの一方で「必要だから飲ませてんだよ」という指摘もある。 検証過程 K2シロップとは 新生児はビタミンKの不足による出血症を起こしやすく、頭蓋内出血など致命的な事例もある。K2シロップは1mLあたりビタミンK2を2mg含むビタミンK不足の予防薬と

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
ニトリが中国に輸出しているからコメが高騰? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

ニトリが中国に輸出しているからコメが高騰? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

コメの価格高騰について、ニトリが中国に輸出していることが一因のように示唆する投稿が拡散しましたが、誤りです。ニトリが中国にコメを輸出したのは2022年1月に一度だけで、それ以降は輸出していません。同様の投稿は過去に何度も拡散しています。 検証対象 拡散した言説 2025年12月2日、「ニトリにお怒りです」という文言付きの動画がXで拡散した。 検証する理由 12月11日現在、投稿は2800回以上リポストされ、表示は22.4万件を超える。 投稿には「デマ認定でOK🙆‍♂️」などの指摘があるが、「ニトリでは絶対に買いません」「ニトリとイオンて中国側なんだ!」など、投稿を真に受けた反応も多い。 検証過程 拡散した動画は55秒。経済安全保障アナリスト・平井宏治氏が、ニトリのコメ輸出について話している。全文は以下の通りだ。 「実はですね、これ、日本経済新聞なんですけど、ニトリがやってることっていうのは、ホクレンのパールライス工場てありますね。ここで北海道でねとれたお米を集めて、小樽港に持っていって、ニトリのね、コンテナ船で中国に輸出してるんです。結局

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は12月20日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1220.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)