ベッセント米財務長官の来日目的は不正選挙の監視? 万博を訪問、関税交渉が焦点【#参院選ファクトチェック】

参院選に関連し、「米国財務長官ベッセント氏が7月19日に来日するのは選挙不正を監視するため」という情報が拡散しましたが、誤りです。来日目的は大阪万博の訪問で、関税に関する閣僚級協議が開かれるかも注目されています。また、一般的に国際的な選挙監視は当事国と協議して実施するものですが、そのような事実もありません。
検証対象
7月12日、「不正監視」「トランプ大統領、7/19に大阪へ財務長官率いる代表団派遣を発表!※参院選投票日前日w」などと記した投稿が拡散した。

この投稿は7月14日現在、1.2万回以上リポストされ、表示回数は876万回を超える。投稿には「トランプさんまじでありがとう」「きっちり選挙に合わせて送り込んできましたね」などのコメントや、「これ本当?」「万博に来るだけじゃないの?」という指摘もある。
検証過程
ベッセント氏の来日は事実
検証対象のリンクは、まとめサイト「もえるあじあ」の記事で、米国ホワイトハウスの7月9日の発表を引用している(The White House”President Trump Announces Presidential Delegation to Osaka, Japan, to Attend the World Expo”July 9, 2025)。
この発表にあるようにベッセント氏が、参院選の投開票日前日に来日するのは事実だ。ただし、「万博訪問のため」と書かれている。「選挙監視のため」というような投稿は、その他のホワイトハウスの発表にもトランプ氏のソーシャルメディアのアカウントにもない。
選挙監視は当事国との協議に基づいて実施
選挙の公正性のために、国際機関などが選挙を監視した事例は数多くある。
紛争解決、民主主義の促進などを掲げる米国NPO「カーターセンター」は、40か国で125の選挙を監視してきた(The Carter Center “Carter Center Accomplishments”)。
国連やOSCE(欧州安全保障協力機構)などの国際機関は、各国に選挙監視団を派遣することがある(国連広報センター”選挙支援”、OSCE"Short-term observers”)。
ただし、これらの選挙監視や支援は当事国と協議して実施するものだ(United Nations”Principles and Types of UN Electoral Assistance 37”)。日本政府との間にそのような協議はない。
ベッセント氏は財務長官、選挙監視は職務範囲外
そもそも、ベッセント氏は主に経済政策、金融政策、税制、国際金融関係、金融犯罪対策などを担当する財務長官で、選挙監視は職務範囲外だ(U.S. Department of the Treasury ”Scott Bessent Secretary of the Treasury”)。
また、日米の関税協議も担当しているため、来日中に関税に関する閣僚級協議を実施するかが注目されている。多くの報道機関は日程調整中だと報じている(朝日新聞”ベッセント財務長官、万博訪問で来日へ G20会議は欠席、米発表”、読売新聞”ベッセント氏の訪日を正式発表、19日に万博のイベントに出席…米高官「貿易協議は行われない」”など)。
選挙のたびに拡散する「不正選挙」への疑い
参院選の開始とともに、選挙不正を疑う投稿が拡散している。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、過去に選挙不正に関する言説を複数検証している。
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判定
「米国財務長官ベッセント氏が7月19日に来日するのは選挙の不正を監視するため」という情報が拡散したが、誤り。ベッセント氏の来日予定は事実だが、大阪万博訪問のためで、関税に関する閣僚級協議が実施されるかも注目されている。
出典・参考
The White House.”President Trump Announces Presidential Delegation to Osaka, Japan, to Attend the World Expo”July 9, 2025.
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/2025/07/president-trump-announces-presidential-delegation-to-osaka-japan-to-attend-the-world-expo/, (閲覧日2025年7月14日)
朝日新聞. ”ベッセント財務長官、万博訪問で来日へ G20会議は欠席、米発表”2025年7月9日.https://digital.asahi.com/articles/AST790CK5T79UHBI00GM.html, (閲覧日2025年7月14日).
読売新聞”ベッセント氏の訪日を正式発表、19日に万博のイベントに出席…米高官「貿易協議は行われない」” 2025年7月10日.https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250710-OYT1T50046/, (閲覧日2025年7月14日).
FNNプライムオンライン.”アメリカ財務長官の来日時に赤沢大臣が接遇へ ベッセント氏が19日に万博訪問 関税交渉を行うかは慎重に検討” (閲覧日2025年7月14日).
The Carter Center. “Carter Center Accomplishments”.
https://www.cartercenter.org/about/accomplishments.html,(閲覧日2025年7月14日).
Organisation for Security and Co-operation in Europe.
"Short-term observers”.https://www.osce.org/odihr/elections/44237, (閲覧日2025年7月14日).
United Nations.”Principles and Types of UN Electoral Assistance 37”.
https://dppa.un.org/sites/default/files/ead_pd_un_ea_principles_types_20210303_e.pdf,(閲覧日2025年7月14日).
U.S. Department of the Treasury. ”Scott Bessent Secretary of the Treasury”. https://home.treasury.gov/about/general-information/officials/scott-bessent,(閲覧日2025年7月14日).
日本ファクトチェックセンター."「期日前投票は不正し放題」「鉛筆だと書き換えられる」? 選挙のたびに拡散【#参院選ファクトチェック】”.2025年7月7日.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-election-rigged/,(閲覧日2025年7月14日).
日本ファクトチェックセンター."開票機器大手「ムサシ」の筆頭株主は安倍晋三氏で票を操作? 選挙のたびに拡散する誤情報【ファクトチェック】”.2024年10月24日.https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-claim-abe-major-shareholder-vote-machine/, (閲覧日2025年7月14日).
日本ファクトチェックセンター."期日前投票はブラックボックスで不正し放題? 各選管で厳重な対策【ファクトチェック】” 2024年10月31日.
https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/false-early-voting-fraudulent/ , (閲覧日2025年7月14日).
検証:根津綾子
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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