中道・野田氏「スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう」と発言? 繰り返し拡散する言説【ファクトチェック】
中道改革連合・野田佳彦衆議院議員が「スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう」と発言したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発言の記録は確認できず、野田氏の事務所も否定しています。同様の主張は、野田氏だけでなく、スパイ防止法について慎重な発言をした政治家や団体に対して繰り返し拡散しています。
検証対象
拡散した言説
2026年3月8日、「イカれてると思う人✋野田佳彦『スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう』」という投稿がXで拡散した。

検証する理由
3月13日現在、投稿は1.2万回リポストされ、表示は74万件を超える。
福岡県中間市議会議員・森上晋平氏も野田氏が「スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう」と発言しているかのような画像を紹介して「野田代表、ご自身がスパイであると自白しているようなものですよ?」と投稿している。
この話題は繰り返し拡散しているため、検証する。
検証過程
「スパイ防止法」とは
スパイ防止法とは、外国勢力のスパイを取り締まることを目的とした法律だ。自民党と日本維新の会が2025年10月に交わした連立政権合意書で、「インテリジェンス・スパイ防止関連法制」として、「基本法」「外国代理人登録法」「ロビー活動公開法」等を挙げている(自民党・日本維新の会”連立政権合意書”)。
具体的な法整備はこれからだが、自民党の小林鷹之政務調査会長は、2026年2月19日の記者会見でスパイ防止法について問われ、「スパイ防止法という言葉は最近使わないようにしている」と前置きした上で、「インテリジェンス全般について幅広い議論を行っている」と話した(自民党”小林 鷹之 政務調査会長 記者会見”)。
野田氏の事務所は「発言していない」と否定
野田氏は「スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう」という趣旨の発言をしたことがあるのか。日本ファクトチェックセンター(JFC)は国会の会議録を調べたが、該当する発言は見つからなかった(国会会議録検索システム)。
また、野田氏が首相を務めた2011~12年の首相官邸の会見記録にも、該当する発言は確認できなかった(首相官邸”野田内閣ホームページ 総理の演説・記者会見など”)。
野田氏のブログ「野田よしひこ『かわら版』+」や、SNSにも見当たらなかった。
JFCが野田氏の事務所に「スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう」と発言したかどうかを取材したところ、担当者は「そういった発言はしておりません」と否定した。
「スパイの人権を守るのか」という批判は過去に何度も拡散
ソーシャル分析ツールMeltwaterで調べたところ、『スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう』という主旨の発言をした」という主張は、野田氏以外の政治家や団体の名前でも拡散し、名前を挙げられた人や団体が批判されている。
例えば、2025年6月12日、自民党の岩屋毅外務大臣(当時)は参議院外交防衛委員会でスパイ防止法に関して「知る権利を始め国民の基本的な人権に配慮しながら、多角的な観点から慎重に検討され、国民の十分な理解が得られることが望ましい」と発言した(国会会議録検索システム”第217回国会 参議院 外交防衛委員会 第19号 令和7年6月12日”)。
これに対し、ネット上では「スパイの人権に配慮するのか」という批判が相次いだ。
2026年2月20日、日本弁護士連合会がスパイ防止法に関して「重要な憲法上の人権侵害につながる可能性があることから、人権侵害の可能性や制度の必要性等についての検討も含め慎重な審議を行うべきである」との意見書を出した際にも同様の批判が広がった(日弁連”現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書”)
岩屋氏も日弁連も基本的な人権への配慮を求める内容で、「スパイの人権」とは発言していない。
立憲民主党の当時の政調会長にも批判
立憲民主党の政調会長(当時)が批判にさらされた事例もある。
2025年10月8日、立憲民主党・本庄知史政調会長(当時)は、会見で記者からスパイ防止法について質問され、次のように答えている。
「もちろんスパイは、しっかり摘発して、あるいは国家の情報・機密や安全を確保していくことは、政府としてはやらなきゃいけないと思います。しかし、一方で例えば、スパイというのは皆さん外国人を想定されてるかもしれませんが、限りませんよね。外国勢力と通じている日本人というようなことも含まれうるという事を考えれば、重大な人権侵害を引き起こすようなリスクも抱えている問題だと思います。かなり多面的に丁寧に議論をしていかなければならない問題で、その意味で私はまだ法案に賛成反対とか、各党で協議をするとか、そういう段階には至っていないと思います」(以上、立憲民主党”2025年10月8日 #本庄会見 #政調会長会見 #立憲民主党 #記者会見”8:04~8:50)
この発言を受けて、10月10日には発言の一部を切り出した動画とともに、「自分たちは『外国勢力と通じている日本人』スパイなので、スパイ防止法はやめてくれ、と言ってますか?」など、本庄氏を批判する投稿が拡散した(例1,2)。
本庄氏は12月17日、自身の公式Xで次のように補足説明をしている。
「私が言ったのは、善良な一般市民がスパイ容疑で逮捕されたり取り調べを受けたりするような、重大な人権侵害のリスクを認識したうえで、法整備の議論をすべきということ」などと発言している(本庄さとし (千葉8区/柏市)@honjosatoshi 2025年12月17日)。
森上市議からの回答無し
JFCは3月16日、投稿者である森上市議に、議会事務局を通じて、投稿の根拠を問い合わせた。森上市議からは回答期限である3日後の19日に「議会が終わる25日までは回答ができない」と連絡があった。このため、26日に再度、森上市議に連絡をしたが、根拠に関する説明はなかった。根拠についての説明があり次第、追記する。
判定
野田佳彦氏が「スパイ防止法はスパイの人権を侵害してしまう」と発言したかのような投稿が拡散したが、誤り。野田氏がそのような発言をした記録は確認できず、野田氏の事務所も否定している。過去にも、別の政治家や団体が、一般人の人権への配慮を求めた際に「スパイの人権を擁護するのか」という批判が繰り返し拡散しているため、誤りと判定する。
出典・参考
自民党・日本維新の会.”連立政権合意文書”.https://storage2.jimin.jp/pdf/news/information/211626.pdf,
自民党.”小林 鷹之 政務調査会長 記者会見”.https://www.jimin.jp/news/press/212508.html,
国会会議録検索システム.https://kokkai.ndl.go.jp/,
首相官邸.”野田内閣ホームページ 総理の演説・記者会見など”.https://warp.ndl.go.jp/web/20121226091224/http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/index.html,
野田佳彦.野田よしひこ『かわら版』+.https://ameblo.jp/nodayoshi55/,
国会会議録検索システム.”第217回国会 参議院 外交防衛委員会 第19号 令和7年6月12日”.https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121713950X01920250612&spkNum=100¤t=5,
日弁連.”現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書”.https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2026/260220.html,
立憲民主党.”2025年10月8日 #本庄会見 #政調会長会見 #立憲民主党 #記者会見”.https://www.youtube.com/live/DKBYw5EdL5E?si=e7yvXGXpQBTAxA_Z,
本庄さとし .(千葉8区/柏市)@honjosatoshi 2025年12月17日.https://x.com/honjosatoshi/status/2001130574854152503,
検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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