高市首相支持を訴える女性達の動画? AIで生成【#衆院選ファクトチェック】

高市首相支持を訴える女性達の動画? AIで生成【#衆院選ファクトチェック】

高市早苗首相への支持を強く訴える女性達の動画が拡散しましたが、この動画はAI生成です。拡散元の動画はYouTubeに公開されており、チャンネル運営者自身がAI生成であると明言しています。

検証対象

拡散した言説

2026年1月28日、「早苗ちゃんの演説見たか。わしは胸が熱くなったわ」などと、街頭で女性達が高市早苗首相を賞賛する様子を映したように見える動画がXで拡散した。

検証する理由

1月30日現在、投稿は4000回以上リポストされ、表示は78.9万件を超える。

投稿にはAI動画だという指摘もあるが、「訴えが心に響きます」「おじいちゃんおばあちゃんにも伝わり始めた。良かった!」など真に受けた反応も多いため、検証する。

検証過程

高市首相支持を訴える5人のインタビュー

拡散した動画は1分13秒、2026年1月28日午後7:19に投稿されている。5人の高齢女性が順番にインタビューを受けている様子が映っている。

女性たちは身振り手振りを交え、強い口調で高市首相への支持を訴えている。

例えば、1人目の女性は次のように述べている。

「早苗ちゃんの街頭演説見たか。わしは胸が熱くなったわ。本気でこの国を変えたい、でも今の議席ではそれができん。だから力を貸してくれて言ってたな。初めて涙を流しながら、必死にわしらに訴えかけとったんや」

冒頭から1分9秒、画面の右上に目のような形のマークが表示される。YouTube動画の終盤に表示される、終了画面の「表示」「非表示」を切り替えるためのアイコンだ。よって、元動画はYouTubeで公開された可能性が高いことがわかる。

YouTubeのAI動画チャンネルからの転載

YouTubeで「高市早苗」「支持」「おばあちゃん」「街頭演説」と検索すると、拡散した動画と同じものが表示された。

動画のタイトルは「高市早苗の街頭演説に魂を揺さぶられたおばあちゃん達」で、「B級AIちゃんねる」というアカウントが公開している。

ソースコードを確認すると、公開日時は、日本時間1月28日午前7時00分44秒。検証対象の動画がXに投稿される約12時間前だ。これが元動画である可能性が高い。

このチャンネルの説明には以下のように書いてある。

「B級のAI動画を出してるチャンネルやで。肩の力抜いて、のんびり楽しんでってな。ここに出てくる動画はな、みんなAIの道具を使うて作っとるんよ」

また、拡散した動画と同じ動画の概要欄にも「AIやで」と書いてあり、動画の左上には「改変または合成されたコンテンツ」という注意が数秒間表示される。

YouTubeは、動画を公開しているクリエイターたちに、改変や合成によって作成されたコンテンツだが、実物のように見える場合は、改変や合成であることを開示するようクリエイターに求めている(YouTubeのポリシー”改変コンテンツまたは合成コンテンツの使用に関する開示”)。

つまり、拡散した動画はAI生成で作られたもので、実際に高市首相支持を訴える女性たちを映した動画ではない。

同様の動画を多数公開

このチャンネルは検証対象と同じ構図、同じ構成の動画を多数公開している。

画面の手前に高齢女性が1人いて強い口調で話し、背景の群衆が女性の話に聞き入っている(例1,2,3)。似たようなプロンプトで動画を量産しているようだ。

AI生成の動画には、指や目の動き、歯・髪・目元などに明らかに不自然さがあるものが多い。今回の動画を含めて、このチャンネルで公開されている動画では、女性たちが瞬きが少ない。これもAI生成動画の特徴だ。

判定

拡散した画像は生成AIによるものだ。実際の映像ではない。

あとがき

AI技術の進歩により、誰でも簡単に画像を加工・編集できるようになりました。2025年からネット上で拡散するAI画像や動画は急増しており、政治や選挙に絡むものも少なくありません。

画像や動画を見てもすぐに信じず、発信源・根拠・関連情報を確認しましょう。JFCでは生成AI画像の見分け方に関する解説記事も公開しています。

JFC”ファクトチェッカーが実践している生成AIによるディープフェイクの見分け方【解説】

出典・参考

B級AIちゃんねる.”高市早苗の街頭演説に魂を揺さぶられたおばあちゃん達”.https://youtu.be/gK9Vvuu5P-A?si=c2FSrNrnZTpLyes9, 2026年1月 28日.(閲覧日2026年1月30日).

JFC”ファクトチェッカーが実践している生成AIによるディープフェイクの見分け方【解説】”.https://www.factcheckcenter.jp/explainer/others/howto-deepfake-verification/,(閲覧日2026年1月30日).

YouTubeポリシー.”改変コンテンツまたは合成コンテンツの使用に関する開示”.https://support.google.com/youtube/answer/14328491?hl=ja&co=GENIE.Platform%3DAndroid,(閲覧日2026年1月30日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

沖縄県知事選/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

沖縄県知事選/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

沖縄県知事選の投開票から1週間。偽・誤情報だけでなく、誹謗中傷や一方的な内容のAIディープフェイク、動画などが話題となりましたが、勝敗を左右したというデータはいまのところありません。欧州では子供たちのSNS利用を制限する動きが広がっています。 今週のファクトチェックまとめです。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
都がモスク建設に補助金? インバウンド対応の祈祷室と混同か【ファクトチェック】

都がモスク建設に補助金? インバウンド対応の祈祷室と混同か【ファクトチェック】

東京都がイスラム教のモスク建設に補助金を出しているかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。都は外国人旅行者のニーズに対応するため、「祈祷室」の整備に補助金を出す制度はつくっていますが、ウェブサイトで「モスク建設を支援するための都の補助金はありません」と明確に否定しています。 検証対象 拡散した言説 2026年9月8日、「東京都が超ヤバい!イスラム教のモスク建設に!補助金!」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 9月18日現在、投稿は1.5万回以上リポストされ、表示は47万件を超える。 投稿には「どんどん外国人が集まり、東京都の日本人が重税に泣かされる運命になるね」「ほんとに都民は怒った方がいいよ」など真に受ける反応が多いため、検証する。 検証過程 都「モスク建設支援の補助金はない」 拡散した投稿は、都がモスク建設の補助金を出しているかのように主張している。投稿は小池百合子都知事の画像を添付しているが、補助金の根拠は示していない。 「東京都 モスク 建設 補助」でGoogle検索すると、都産業労働局の「インバウンド対応力強化支援事業

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
アジア開発銀行・神田総裁の「なりすまし」が多発 警察庁「(神田総裁が)個別にSNSで投資を指南することはありません」【詐欺注意】

アジア開発銀行・神田総裁の「なりすまし」が多発 警察庁「(神田総裁が)個別にSNSで投資を指南することはありません」【詐欺注意】

アジア開発銀行(ADB)総裁・神田眞人氏になりすましたアカウントによる投資詐欺の被害が出ています。警察庁が「(神田総裁が)個別にSNSで投資を指南することはありません。公式アカウント以外は全て偽物です」と注意を呼びかけています。 警察庁「SNS型投資詐欺に注意」 2026年9月14日、警察庁は公式Xアカウントで、神田氏のなりすましによるSNS型投資詐欺への注意を呼びかけた。 添付画像には、以下のように手口の詳細が紹介されている。 ①バナー等広告などからLINEの投資グループに誘導される ②神田氏やそのアシスタントになりすましたLINEアカウントから投資を勧められ、指定した口座に振込を要求される ③偽の投資アプリをダウンロードさせられ、アプリ上では利益が出ているように表示 ④出金時に手数料を要求され、その後連絡が取れなくなり、被害が発覚 ADBも注意喚起 ADB駐日代表事務所は、ウェブサイトに「ADBや神田総裁の名前を使って投資等を勧誘するサイトにご注意ください」とバナーを掲示している。 ADBはウェブサイトの「ADBの名を騙る詐欺にご注意(B

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
JFC2025年度会計を公開しました

JFC2025年度会計を公開しました

日本ファクトチェックセンター(JFC)は資金源と組織の透明性を保つため、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が定める綱領に則り、毎年、会計報告を公開しています。 JFCの2025年度(2025年4月‐2026年3月)の会計報告はこちら。また、運営母体である一般社団法人セーファーインターネット協会の収入報告はこちらです。 JFCのウェブサイトでは過去分も含めてごらんいただけます。「JFCへの支援と会計」のページからご確認ください。

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月27日(日)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 日本ファクトチェックセンター(JFC) ファクトチェック講師養成講座 9月27日(日)開催分日本ファクトチェックセンター(JFC)による講師養成講座です。 講師養成講座(オンラインで90分)を受講いただいた後、修了課題を提出された方には、教室や職場などで利用可能な教材の提... powered by Peatix : More than a ticket.Peatix 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や騙されない人の行動

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)