テクノロジーでいかに偽・誤情報に対処できるか/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

テクノロジーでいかに偽・誤情報に対処できるか/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

生成AIによるディープフェイクの氾濫など、偽・誤情報問題は人間の検証だけでは全く手に負えなくなっているということは、これまでもこのニュースレターなどで何度も触れてきました。

メディアリテラシー教育で一人ひとりの対処能力を引き上げること、法的な規制など様々な対策を重層的に実施する必要があります。中でも重要な鍵の一つがテクノロジーを活用した対策です。

しかし、開発には資金が必要ですし、売り物になるかはわからないとなると作り手も躊躇します。そこで総務省が予算をつけて実施したのが「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」。3月17日にその成果を発表するイベントが都内で開かれました。

関連ニュースでも紹介しましたが、大企業だけでなく、大小のスタートアップ企業など事業に採択された14の企業や団体が偽・誤情報の検知や検証や分析、また、教育ツールなどを発表しました。

こういったツールは使われて初めて意味があります。残念ながらテクノロジーによって情報環境が悪化していく中で、どのようにしてより良い社会のためのテクノロジーを開発・普及させていくのか。

ファクトチェックやメディアリテラシーの普及とともに、その重要性がさらに高まっています。詳しくは改めて解説記事を公開する予定です。(古田大輔)

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今週のファクトチェック

イラン、日本が自衛隊派遣をしない条件でホルムズ海峡の通過を認める方針? まとめサイトの記述のみ【ファクトチェック】

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃の影響で、ホルムズ海峡が封鎖状態となる中で、イランは、日本政府が自衛隊派遣をしないことを条件に、ホルムズ海峡の通過を認める方針だという投稿がXで拡散しましたが、誤りです。投稿が参照した記事にそのような内容は書かれておらず、3月18日午前9時現在、該当する関係国からの発表や報道はありません。

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アメリカとイスラエルによるイラン攻撃の影響で、ホルムズ海峡が封鎖状態となる中で、イランは、日本政府が自衛隊派遣をしないことを条件に、ホルムズ海峡の通過を認める方針だという投稿がXで拡散しましたが、誤りです。投稿が参照した記事にそのような内容は書かれておらず、3月18日午前9時現在、該当する関係国からの発表や報道はありません。 検証対象 拡散した言説 2026年3月16日、「イラン、日本政府が自衛隊派遣をしない条件でホルムズ海峡の通過を認める方針」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 3月17日現在、投稿は5700回以上リポストされ、表示は612.9万件を超える。 投稿には「ウソ」「デマ」などの指摘もあるが、「これが本当なら日本の原油は大丈夫ですね」「中道の小川さんがイランと交渉したからね。高市さんのお手柄では無いよ」など真に受けたコメントも多いため、検証する。 検証過程 参照元の記事に該当する情報なし 検証対象の投稿には、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事へのリンクが付いている。 タイトル

日本政府がイラン国民のビザを無期限に延長? 対象は帰国困難になった外国人への対応【ファクトチェック】

日本政府がイラン国民のビザを無期限に延長という投稿が拡散しましたが不正確です。帰国が困難な外国人への措置は発表されていますが、日本にいる外国人に向けた措置で、拡散した投稿にあるようなビザの無期限延長ではありません。

日本政府がイラン国民のビザを無期限に延長? 対象は帰国困難になった外国人への対応【ファクトチェック】
日本政府がイラン国民のビザを無期限に延長という投稿が拡散しましたが不正確です。帰国が困難な外国人への措置は発表されていますが、日本にいる外国人に向けた措置で、拡散した投稿にあるようなビザの無期限延長ではありません。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月10日、「日本政府がイラン国民のビザを無期限に延長するんだって。リプで海外の人から日本政府ボロクソに言われてるじゃねーか」という投稿が拡散した。 投稿は「日本政府は、イラン国民のビザを無期限に延長すると発表しました ドイツ2.0になろう」という英文投稿を引用している。 検証する理由 3月18日現在、この投稿は6300件以上リポストされ、表示回数は72万回を超える。投稿について「どこかで戦争が起きるとその国からの移民受け入れちゃうのそろそろやめよう」「国内、海外、どこから誰が見てもおかしい政策」というコメントの一方で「信頼できるソースで確認されましたか?」という指摘もある。 検証過程 拡散した投稿には「日本政府がイラン国民のビザを無期限に延長」とある。しかし、3月18日現在、そのような情報や報道

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アメリカとイスラエルが攻撃しているイランに関する偽・誤情報は、引き続き大量に拡散しています。AIによるディープフェイクが氾濫し、検証が全く追いつかない状況にも変わりありません。 こういうとき、「ソーシャルメディア上の出所不明の情報ではなく、信頼性の高い情報源を確認しましょう」と呼びかけるのが一般的です。日本ファクトチェックセンター(JFC)でも、そうしています。 しかし、その対策にも大きな弱点があります。「信頼性の高い情報源」と言えども、100%頼れるわけではない点です。 例えば、イランの女子学校が攻撃され、160人を超える児童や教員が死亡したとされる事案(犠牲者数は報道によって異なる)について、トランプ大統領は3月7日、「イランによるものだ」と主張しました。 しかし、米メディア「ワシントン・ポスト」や調査報道組織「ベリングキャット」などは、現地の映像から周囲への攻撃が米国が使用しているトマホークミサイルによるものと報じました(The Washington Post. "Video appears to show U.S. Tomahawk hit naval ba

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
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アメリカとイスラエルによるイラン攻撃の影響で、ホルムズ海峡が封鎖状態となるなかで、「ENEOS、出光興産、コスモ石油などの日本の主要な石油会社が、ロシアからの石油輸入を再開した」という投稿が拡散しましたが、誤りです。日本ファクトチェックセンターの取材に対し、3社は質問の時点でそのような事実はないと否定しました。 検証対象 拡散した投稿 2026年3月9日、「ENEOS、出光興産、コスモ石油などの主要な日本の石油会社は、イランによるホルムズ海峡封鎖への対応として、ロシア🇷🇺からの石油輸入を再開しました。ロシアのプーチン大統領、ロシアの皆さんありがとうございます」という投稿が拡散した。 拡散した投稿は、英語で同様の内容を書いた投稿を引用している。 検証する理由 3月10日時点でこの投稿は2900件以上リポストされ、表示回数は86万回を超える。投稿について「プーチンありがとう」「ホント、ロシアさん有り難う」というコメントの一方で「これソース見つからんのだけんど」という指摘もある。 検証過程 2月28日、アメリカはイスラエルと共にイランへ大規模な

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ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は3月22日(日)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0322.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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