日本人の93.5%が台湾有事をめぐる高市首相の発言を「問題なし。野党や中国が悪い」と回答? 統計的な信頼性が低いデータ【ファクトチェック】

日本人の93.5%が台湾有事をめぐる高市首相の発言を「問題なし。野党や中国が悪い」と回答? 統計的な信頼性が低いデータ【ファクトチェック】

高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁に中国が反発している問題で、日本人の93.5%が、高市首相の発言を「問題なし」と考えているという投稿がXで拡散しましたが、ミスリードで不正確です。拡散した投稿が引用しているデータは、「産経ニュースの1コーナー」という週刊フジが、Xで実施したアンケート結果で、統計的に正確な調査とは言えません。同じ質問ではないですが、この話題に関する世論調査では、賛否が分かれています。

検証対象

拡散した言説

2025年11月19日、「【朗報】日本人の93.5%『高市発言は問題なし。野党や中国が悪い』」という投稿がXで拡散した。

検証する理由

11月21日現在、投稿は2.2万回以上リポストされ、表示は392.2万件を超える。

投稿には「日本人の93%ってどこから?」「この数字でハッキリしました。この手のプロパガンダ世論調査はデタラメってね」という指摘もあるが「要するに高市やめろとか発言撤回しろとか言っている日本人の左翼は6.5%しかいないという事ですね」や「そりゃそうだ。ヤクザの要求飲み続けたら、終わりなくエスカレートする。それを止めようとしてくれてるのが高市さんだと思ってる」など同調するコメントが多い。

検証過程

投稿はまとめサイト 参照元は週刊フジのXアンケート

検証対象の投稿には、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事へのリンクが付いている。タイトルは掲示板サイト2ちゃんねるのスレッド「【朗報】日本人の93.5%『高市発言は問題なし。野党や中国が悪い』wwwwww」で、記事には、週刊フジのXアカウント投稿へのリンクがついている。

週刊フジは「産経ニュースの1コーナー」。11月17日、Xのアンケート機能を使って次のように投稿している。

「中国国営中央テレビ(電子版)によると、中国文化観光省は16日、中国人に対して日本への旅行を避けるよう促しました。高市早苗首相の『台湾有事』をめぐる国会答弁への対抗措置の一環とみられています。どう思いますか。その理由もお聞かせください(回答が分かりにくいとの指摘を受け、修正しました)」

アンケートには8417件の回答があり「国会答弁には問題がなく、撤回してはならない」が93.5%、「国会答弁には問題があるが、撤回してはならない」は3.3%、「国会答弁には問題があり、撤回すべきだ」は2.2%、「国会答弁には問題がないが、撤回すべきだ」が1%だった。

しかし、週刊フジのアンケートの参加者はXを使っている人で、かつ、週刊フジのアカウントのフォロワーや、アンケートを見た人のうち、自主的に答えた人だ。

回答者の属性を統計的に調整し、日本全体での世論の傾向を調べる世論調査とは全く異なる。週刊フジでこのアンケートを扱った記事の見出しも「『週刊フジ』のXアンケート「高市首相の国会答弁は問題なし、撤回するな」が93・5%」も世論調査ではなく、Xでのアンケートであることを明記している。

世論調査では意見が分かれた

週刊フジと全く同じ内容の設問ではないが、共同通信も高市氏の発言後の11月15・16日に世論調査をしている。

高市首相の国会答弁を受け、「あなたは、台湾有事で集団的自衛権を行使するという考えに賛成ですか、反対ですか」という質問に対して、「どちらかといえば賛成が28.1%、賛成が20.7%。どちらかといえば反対が25.9%、反対が18.3%だったという(47NEWS”共同通信世論調査”)。

「どちらかといえば」という人を含んでも賛成は48.8%、反対は44.2%だ。拡散した投稿の「日本人の93.5%『高市発言は問題なし。野党や中国が悪い』」という数値からは程遠い。

ANNも11月15・16日に世論調査を実施。「台湾をめぐって中国とアメリカの間で武力衝突が起きた場合、日本が集団的自衛権に基づいて、武力行使に踏み切ることも必要だと思いますか、必要ないと思いますか?」という項目に、「必要だ」と回答した人は33%、「必要ない」は48%、「わからない、答えない」は18%だ(ANN”世論調査”)。

共同通信もANNも調査手法を公開している(共同通信”世論調査 調査方法について”、ANN”世論調査 調査方法”)。

判定

日本人の93.5%が、台湾有事をめぐる高市首相の発言を『問題なし』と考えているかのような投稿がXで拡散した。拡散した投稿は週刊フジによるX上のアンケートを根拠にしているが、この調査方法は一般的な世論調査とは手法が異なる。質問は異なるが、同じ話題を扱った共同通信やANNの世論調査結果とも大幅に異なる。よって、ミスリードで不正確と判定する。

あとがき

共同通信の世論調査には、批判も出ています。

国民民主党・鳩山紀一郎衆院議員は「実際の答弁は『「台湾有事」で集団的自衛権を行使するとの考え』などと単純に要約すべき内容ではなかった」「メディアがそれについて一般国民に賛否を聞くのは、極めて不合理かつ不健全であり、危険」。

立憲民主党・川内博史衆院議員は「聞くのであれば『台湾有事で日本が戦争するのに賛成か反対か』を聞くべきである。賛成する人は、ほとんどいないだろう」(以上、産経新聞”「不合理な質問、分断あおる」国民鳩山氏 「首相答弁の台湾有事で自衛権行使」世論調査に”、JCASTニュース”あまりにも不適切」「戦争煽ってどうする?」 共同通信世論調査めぐり国会議員の批判続々”)。

特定の属性の人ばかりが多く回答しがちなアンケートの結果は、国民全体の「世論」とはかけ離れてしまうことがあります。こうした問題を避けるために回答者を慎重に選んだ世論調査ですら、設問内容によって結果が異なることがあります。

調査結果を見る際には、その手法が科学的に信頼性があるかどうかも確認しましょう。

出典・参考

こちら週刊フジです.@yukanfuji_hodo.2025年11月17日.https://x.com/yukanfuji_hodo/status/1990338599104172158?s=20,(閲覧日2025年11月20日).

47NEWS.”共同通信世論調査”.2025年11月17日.https://www.47news.jp/politics/opinion_poll,(閲覧日2025年11月20日).

産経新聞.”「不合理な質問、分断あおる」国民鳩山氏 「首相答弁の台湾有事で自衛権行使」世論調査に”.https://www.sankei.com/article/20251117-5VR3UOVYPJF2RLEMJUZCOEVONQ/,(閲覧日2025年11月20日).

JCASTニュース.”あまりにも不適切」「戦争煽ってどうする?」 共同通信世論調査めぐり国会議員の批判続々”.https://news.yahoo.co.jp/articles/d59669ce301c40494fd186dcfda301dbe9d6be1f,(閲覧日2025年11月20日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

パリで移民2世、3世が暴動? 連覇を祝うサッカーファンの動画【ファクトチェック】

パリで移民2世、3世が暴動? 連覇を祝うサッカーファンの動画【ファクトチェック】

「パリのいま 移民の2世、3世による暴動 移民国家の末路を見る」という投稿がThreadsで拡散しましたが、誤りです。映像は2026年5月にフランスのサッカーチームが欧州のチャンピオンズリーグで連覇を果たした際のファンの様子を撮影したものです。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月31日、「パリのいま 移民の2世、3世による暴動 移民はもういらん」という動画付き投稿がThreadsで拡散した。 動画には興奮した人々が、花火をあげたり信号に登ったりする様子が映っている。 検証する理由 この投稿は1万件以上いいねがあり、1200件ほどリポストされている。「パリサンジェルマンが勝っての騒ぎでしょ。移民関係ないから」「サッカーの盛り上がりですよね」というコメントの一方で、「世界中で国文化を壊した移民ビジネス」「誰もとめる人もいない。狂ってますね」と誤解したコメントもあるため検証する。 検証過程 動画には広場のような場所に集まった人々が花火を打ち上げる様子が映っている。Googleレンズで検索すると、5月31日にYouTubeやXに投稿された動画が見

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
スイスが世界で初めてマンモグラフィを禁止? 該当する発表はなく、当局は否定【ファクトチェック】

スイスが世界で初めてマンモグラフィを禁止? 該当する発表はなく、当局は否定【ファクトチェック】

乳房X線検査マンモグラフィを、スイスが世界で初めて禁止したと主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発表はなく、スイス当局はJFCの取材に対して「50歳以上の女性に対し推奨している」と述べています。 検証対象 拡散した言説 2026年6月3日、「速報:スイスが世界で初めてマンモグラフィ禁止の国になった―世界的な医療スキャンダルが白日の下にさらされた!」などと主張する英語の投稿がXで拡散した。 検証する理由 6月8日現在、投稿は7500回以上リポストされ、表示は59.4万件を超える。 投稿には「出典は?」や「スイスはマンモグラフィを禁止していません」などの指摘もあるが「神に感謝します。私は何年も前からこう言ってきました」「サーモグラムはマモグラムよりもはるかに安全」など真に受けた反応も多い。 同様の主張は、日本語でも拡散している(例1、2、3)ため検証する。 検証過程 拡散した投稿は 拡散した投稿の自動和訳は次の通りだ。 「🚨 速報: スイスがマンモグラフィを禁止する世界初の国に — 暴露されたグローバルな医療スキャンダル!

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
「真理省はいらない」認知戦への対策は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

「真理省はいらない」認知戦への対策は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

1週間のドイツ滞在を終えて、帰国の途についています(その関係で今週もニュースレターの配信が一日遅れてしまいました)。 公共放送含む大手メディア、ファクトチェック団体、メディアリテラシー団体、政府機関など、様々な立場の専門家と偽・誤情報の現状と対策について議論しました。中でも話題の中心となったのは、ロシアからの認知戦の現状です。 ドイツで著名な事例と言えば、ドッペルゲンガー作戦です。ドイツの大手メディアのサイトを模倣したサイトが大量に作られ、偽記事をSNSで拡散させるという手口でした。CORRECTIVの調査報道などでその実態が明らかとなっています。 政府もこれらの現状に対して、外国からの影響工作に対する備えを強化しています。その動きは国家情報局を設置する日本にとっても参考になるでしょう。 印象的だったのは「ドイツはバルト3国や北欧などと比べて認知戦への対応が遅れた」という言葉です。海外からの影響工作について、ロシアの行動を明らかにする報道や政府対応などを見ると、日本よりもかなり先行しているように見えますが、自己評価は違うようです。 「真理省はいらない」という声も聞

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

厳格化された経営・管理ビザについて「外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるため悪用していた」という投稿がXで拡散しましたが、不正確です。全体の9割が不正だったかのように読めますが、不正が9割というのは「疑わしい事業者約300件を対象にした調査結果」で、経営ビザ取得者の9割という意味ではありません。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月10日、「経営・管理ビザの厳格化により申請が96%減少。また既存の会社を調査した結果、9割が不正。つまり外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるための悪用していた」という投稿がXで拡散した。投稿は、ニュース番組の動画も添付している。 検証する理由 6月2日現在、この投稿は1万回以上リポストされ、表示回数は66万回を超える。投稿について、「『9割が不正』は扱いに注意がいる」という指摘もあるが、「9割不正って大問題ですよ」「これが外国人が集まる理由」などと誤解しているコメントも多いため、検証する。 検証過程 経営・管理ビザの厳格化 政府

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月27日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0627.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)