米FBIパテル長官が「安倍元総理が暗殺されたのはイベルメクチンを配ろうとしたから」と会見で発言? そのような事実はない【ファクトチェック】

米FBIパテル長官が「安倍元総理が暗殺されたのはイベルメクチンを配ろうとしたから」と会見で発言? そのような事実はない【ファクトチェック】

米FBIパテル長官が「安倍元総理が暗殺されたのはイベルメクチンを配ろうとしたから」などと発言したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。そうした発言の事実は確認できず、安倍元首相がイベルメクチンを配ろうとした事実もありません。

検証対象

2025年3月24日、「米国FBIパテル長官が、安倍晋三元総理が殺されたのは、国民にイベルメクチンを配布しようとしたからだなどと記者会見で述べた」という趣旨の、3000字超の長文投稿が拡散した。

X投稿の一部

2025年3月28日現在、投稿は1万回以上リポストされ、表示回数は360万件を超える。投稿には「なるほど」「闇が深すぎる」などのコメントのほか、誤りを指摘するコミュニティーノートもついている。

検証過程

FBIパテル長官が安倍元首相の暗殺理由を発言?

検証対象の要点は次の通りだ。

「2月27日の記者会見で、米FBIパテル長官が安倍晋三元総理暗殺事件について言及した。安倍氏が殺された理由について、世界経済フォーラム(ダボス会議)の決定に従わなかったから、コロナワクチンを義務化しなかったから、コロナワクチン160万本を送り返したから、国民にイベルメクチンを配布しようとしたからであると語った」

パテル氏がFBI長官に就任したのは2025年2月20日。検証対象が言及する2月27日に記者会見があったという情報はFBI公式サイトにはない。通常、記者会見はサイト内に情報が公開される。報道も見つかるのが一般的だ。

「FBI Patel Feb27 2025」でGoogle検索すると、ニュース記事やYouTube動画が多数表示される。The New York Timesは「初の週次会議で、パテル新長官がFBI運営の本格始動へ」という記事(2025年2月27日)で、パテル氏が2月26日に幹部らとオンライン会議をしたと伝えている。ロイター(2月28日)も2月26日のオンライン会議について報じている。30分ほどのオンライン会議で、パテル氏は、暴力犯罪の根絶や国家安全保障の防衛を優先事項として挙げたり、FBIエージェントのスキル強化の方法について語った。

また、CNNは2月27日の記事でパテル氏就任後1週間の動静を伝えているが、いずれの記事にも2月27日の記者会見や、安倍元首相に関する情報はない。

ダボス会議の決定に従わなかった?

検証対象は「ダボス会議の決定に従わなかった」と述べている。世界経済フォーラム(WEF)は、官民連携のための国際組織で、グローバルで非営利のプラットフォームだ。安倍元首相は2019年1月にダボス会議に参加したが(世界経済フォーラム年次総会 安倍総理スピーチ)、新型コロナウィルスが蔓延する前だ。また、ダボス会議には、参加国に対し特定の政策を指示したり、従わせたりするような拘束力はない。

ワクチン接種を義務化しなかった?

安倍元首相は2020年9月16日に首相を辞任した。日本における新型コロナワクチンの接種開始は2021年2月(新型コロナワクチンの接種スケジュールについて)。2021年2月時点の首相は菅義偉元首相であり、安倍元首相ではない(歴代内閣)。

厚生労働省は日本における新型コロナワクチンの接種について「努力義務」としている(厚生労働省 予防接種法上の公的関与の考え方)。「接種を受けるよう努めなければならない」という予防接種法の規定で「義務」とは異なる為、「義務化しなかった」という部分は正しい。

ワクチン160万本を送り返した?

「160万本を返送」については、2021年8月のモデルナ製ワクチンへの異物混入を指していると見られる。厚生労働省はワクチンへの異物混入を受け、約160万回分の使用を見合わせた(NHK 2021年8月27日朝日新聞 2021年8月26日)。ただし、「送り返した」のではなく、企業が自主回収した(COVID-19 ワクチンモデルナ筋注一部ロットの自主回収に関する調査結果について 2021 年 10 月)。

国民にイベルメクチンを配ろうとした?

イベルメクチンとは寄生虫などが原因で引き起こされる感染症の特効薬。新型コロナウイルスに対する有効性が議論されてきた。安倍元首相は2020年5月14日の記者会見で次のように述べている。

「イベルメクチンは、長年、皮膚病の治療に使われてきましたが、新型コロナの有効性が示唆されておりまして、国内においては、近く、医師主導治験が実施される見込みでありまして、こうした治療薬について有効性が確認されれば、早期に薬事承認をしていきたいと思いますし、一日も早く国民の皆様にお届けできるようにしていきたいと、このように思います」(新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見)。

しかし、イベルメクチンを新型コロナ患者に投与しても有効性が見られなかったとして、製薬会社は治療薬としての承認申請を断念した(NHK 2022年9月26日)。安倍政権以後も、新型コロナ治療薬としてイベルメクチンを配布・投与する決定はしていない。

海外のファクトチェック団体「偽情報」と判定

FBIパテル長官が安倍元首相の暗殺理由について言及したという言説は、海外のファクトチェック団体によって検証されている。ファクトチェックサイトMYTH DETECTORに「FBIパテル長官の名義でFacebookで拡散している誤情報」(2025年2月28日)という記事が掲載され、安倍元首相がイベルメクチンを配布しようとしたなどの主張は偽情報(Disinformation)だと判定されている。

判定

米FBIパテル長官が「安倍元総理が暗殺されたのはイベルメクチンを配布しようとしたから」などと記者会見で発言したかのような投稿が拡散したが、誤り。パテル氏がそのような発言をしたという事実は確認できず、検証対象の言説には複数の誤りがある。日本政府の対応としても、ワクチン返送、イベルメクチンの配布はしていない。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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