米トランプ大統領が「9月1日に全てが大混乱に」と発言? そのような情報はない【ファクトチェック】

米トランプ大統領が「9月1日に全てが大混乱に」と発言? そのような情報はない【ファクトチェック】

米トランプ大統領が9月1日に「全てが大混乱に陥る」と言ったという情報が拡散しましたが、根拠不明です。日本時間9月1日17時現在、そのような情報は米ホワイトハウスからもトランプ氏からも発表されておらず、報道もありません。

検証対象

2025年8月29日、「トランプは9月1日月曜日に『全てが大混乱に陥る』と言いました」という投稿がXで拡散した。

9月1日現在、投稿は940回以上リポストされ、表示は46.9万回を超える。

投稿には「だとありがたいなぁ」「本当だったら、嬉しいんだけどなぁ」や「公式Xとかにありました???」という指摘もある。

検証過程

拡散した投稿は「Trump has said that on Mon. 1 Sept. “All Hell will break loose.”」という英語の文言付きのトランプ氏のGIFを引用している。音声はなく「真実(TRUE)」というテロップがついている。

直訳すると「トランプは9月1日月曜日に『全てが大混乱に陥る』と言った」となる。「9月1日に言った」のか「9月1日に大混乱に陥る」のか、両方の意味に解することができるが、8月の投稿なので「9月1日に言った」という投稿であれば、その時点で誤りとなる。

「Trump “All Hell will break loose”」でGoogle検索すると、2025年1月から2月にかけての米メディアの報道が多数表示される。

NPRは2025年1月7日に”Trump in news conference says 'all hell will break out' if Gaza hostages not released”という記事を公開。「トランプ次期大統領が、自身が1月20日にホワイトハウスに復帰するまでにハマスがガザで拘束している人質を解放しなければ『大混乱が起きるだろう』と脅しを再度口にした」と伝えている(NPR ”Trump in news conference says 'all hell will break out' if Gaza hostages not released”)。

CNNの2025年2月10日の”Trump says ‘all hell is going to break out’ if Hamas doesn’t release hostages by Saturday at noon”という記事は、「トランプ氏は、ハマスが土曜正午までにガザで拘束している人質を解放しなければ『大混乱を引き起こす』」という内容だ(CNN ”Trump says ‘all hell is going to break out’ if Hamas doesn’t release hostages by Saturday at noon”)。

いずれも拡散した投稿の「All hell will break loose.」と似た言い回しだが、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意にともなう人質の解放に関する発言で、9月1日とは関係ない。

9月1日17時現在、ホワイトハウスのウェブサイトX、トランプ氏のXTruthSocialにそのような情報は確認できず、報道もない。

判定

米トランプ大統領が9月1日月曜日に「全てが大混乱に陥る」と言ったという情報が拡散した。日本時間9月1日17時現在、そのような情報は米ホワイトハウスからも、トランプ氏からも発表されておらず、報道もない。過去に中東情勢をめぐり似た言い回しの発言をしていた時期があるが、9月1日とは無関係だ。よって、根拠不明と判定する。

あとがき

トランプ大統領の発言を捏造する偽情報は数多く存在します。その多くはまず英語で拡散し、それを日本語に翻訳したものや、日本語で引用リポストしたり、動画に引用したりしたものが日本でも拡散するのが定番になっています。

日本でもトランプ大統領に好意的な人たちの間でこういった情報は拡散しがちで、英語のものよりもシェア数が多いものすらあります。発信者、出典、関連情報を確認し、ホワイトハウスやトランプ大統領自身のソーシャルアカウント、主要な報道機関で触れられていない発言は、安易に信じたり、シェアしたりしないようにしましょう。

出典・参考

NPR.”Trump in news conference says 'all hell will break out' if Gaza hostages not released”.2025年1月7日.https://www.npr.org/2025/01/07/nx-s1-5250278/trump-hostages-israel-hamas-middle-east, (閲覧日2025年9月1日).

CNN.”Trump says ‘all hell is going to break out’ if Hamas doesn’t release hostages by Saturday at noon”.2025年2月10日.
https://edition.cnn.com/2025/02/10/politics/trump-palestinians-no-right-return-gaza, (閲覧日2025年9月1日).

The White House. @WhiteHouse .2025年8月27日.
https://x.com/WhiteHouse/status/1960471464643080288 , (閲覧日2025年9月1日).

The White House.https://www.whitehouse.gov/, (閲覧日2025年9月1日).
Donald J. Trump.https://truthsocial.com/@realDonaldTrump, (閲覧日2025年9月1日).

Donald J. Trump.https://x.com/realDonaldTrump, (閲覧日2025年9月1日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

「期日前投票はすり替えられる」「鉛筆で書かせるのは消すため」「開票システムに仕掛けがある」 繰り返される不正選挙疑惑を検証【#衆院選ファクトチェック】

「期日前投票はすり替えられる」「鉛筆で書かせるのは消すため」「開票システムに仕掛けがある」 繰り返される不正選挙疑惑を検証【#衆院選ファクトチェック】

選挙のたびに「票がすり替えられる・書き換えられる」「選挙システムに仕掛けがある」などの投稿が拡散します。一部でミスが発生するのは事実ですが、拡散する主張のほとんどは根拠がなく、選挙結果が変わるほどの大規模な不正はほぼ不可能です。 はじめに、何度も拡散している疑惑を紹介します。次に、選挙実務に携わる選挙管理委員会に、現場の状況や不正対策を聞きました。最後に実際に起きた選挙トラブルや、その影響をまとめています。 よく拡散する選挙不正の主張は 本人確認をしない? 「期日前投票では本人確認が不要だ」という主張が度々拡散している。JFC(日本ファクトチェックセンター)は、投票日と同様に確認していることを根拠に「不正確」だと判定している。 JFC”期日前投票には本人確認が不要? 投票日と同じ確認手順【ファクトチェック】” 票をすり替えられる? 「鉛筆が用意されているのは書き替えるため」「票がすり替えられる」などと不正を主張する投稿も多い。JFCは選挙管理委員会に不正対策を取材し、「誤り」だと判定している。 JFC”期日前投票はブラックボックスで不正し放題?

By 根津 綾子(Ayako Nezu), 古田大輔(Daisuke Furuta)
比例で自民と書くと村上誠一郎、参政党と書くと豊田真由子が当選? ブロック外は無関係【#衆院選ファクトチェック】

比例で自民と書くと村上誠一郎、参政党と書くと豊田真由子が当選? ブロック外は無関係【#衆院選ファクトチェック】

2026年2月8日投開票の衆院選で「比例で自民と書くと前総務相・村上誠一郎氏が、参政党と書くと豊田真由子氏が当選する。どちらが良いか」という趣旨の投稿がXで拡散しましたが、誤りです。衆院選・比例代表はブロックごとに票が数えられるため、村上氏が立候補している四国ブロック、豊田氏が立候補している北関東ブロックの外で自民党や参政党と書いても、各氏の当落とは無関係で、このような二者択一は成立しません。 検証対象 拡散した言説 2026年1月23日、「衆院選!比例で!自民党と書くと!村上誠一郎が当選するが! 参政党と書くと豊田真由子が当選する!どっちがいい?」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 1月28日現在、投稿は1900回以上リポストされ、表示は33万件を超える。 投稿には「衆院選だから比例はブロック制なんだけどな」「衆議院の比例区は参議院と違ってブロック別なので、近畿に住んでいる私には村上も豊田も関係ありません」などの指摘もあるが、「どっちも無理」「もちろん高市さんに1議席でも多く献上したいので、村上」など真に受けた反応も多い。 投票の仕組みに

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
福井・石田嵩人氏「日本は単一民族国家」?  本人が訂正【ファクトチェック】

福井・石田嵩人氏「日本は単一民族国家」?  本人が訂正【ファクトチェック】

福井県知事選で初当選した石田嵩人氏が「日本は単一民族国家」と発言する動画が拡散しましたが、誤りです。日本政府はアイヌ民族を先住民族と認めています。国連人種差別撤廃委員会は沖縄の人々を先住民族と勧告し、様々な出自の在留外国人も増えています。石田氏自身も指摘を受けて訂正しています。 検証対象 拡散した投稿 2026年1月12日、福井県知事選に立候補していた石田氏が選挙期間中に「私は移民政策には反対です。理由はまず、日本は単一民族国家です」と語る動画を投稿し、拡散した。 検証する理由 1月27日現在、この投稿は1500件以上リポストされ、表示回数は189万回を超える。投稿について「移民云々以前に少数民族を無視するな」「無茶苦茶ウソつくやん」「日本は単一民族国家ではない」という指摘が多数ついている。 「日本は単一民族」という主張はこれまでにも繰り返し拡散している。知事選に当選した候補者の発言でもあるため、本人が訂正済みだが改めて検証する。 検証過程 「北海道の先住民族であるアイヌの人々」 単一民族国家とは、1つの民族で構成される国家のことだ。だが

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
外国人犯罪が急増? 日本の治安は悪化した? 専門家に聞くデータでわかること・わからないこと

外国人犯罪が急増? 日本の治安は悪化した? 専門家に聞くデータでわかること・わからないこと

「外国人によって日本の治安が悪化している」という趣旨の投稿は、SNS上で繰り返し拡散します。「外国人は不起訴だらけ」という検証済みの誤った情報もあれば、検証が難しいものもあります。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は2025年7月に「外国人犯罪が急増している」という言説を検証し、「ミスリードで不正確」と判定しました。投稿者は2023年に検挙件数が増えているという犯罪白書のデータを引用して「急増」と主張していましたが、2020-22年は新型コロナによって外国人の新規入国者が激減しており、その説明が不十分で文脈を欠いていると判断したからです。 ただ、JFCは検証の際、公開されていた2024年の検挙件数のデータを見落としていました。これについて、2025年12月に外部から指摘を受けて記事を見直し、2026年1月に不正確という判定を撤回しました。 JFC”外国人犯罪が急増している? 【#参院選ファクトチェック】(訂正あり)” 判定を「正確」や「ほぼ正確」に変えなかったのは、どのデータを検証に使うかによって見え方が異なり、また、数字だけでは見えないものがあるからです。

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は2月28日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0228.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)