医療・健康

医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数? 根拠となるデータなし【ファクトチェック】

木山竣策

2025年12月5日

「医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数」という情報が拡散しましたが、根拠となる資料などでは示されておらず、根拠不明です。一方で、医療従事者専用サイト「m3.com」のアンケートでは、半数以上の医師がマイナンバーカードに保険証を登録していると回答しています。

検証対象

検証する投稿

2025年11月29日、「実は医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数だという事実、一般の人はあまりご存知ないでしょうね。私も資格確認証を利用していて、マイナ保険証にする予定はありません」という投稿がThreadsで拡散した。

検証する理由

12月2日現在、この投稿は400件以上のいいねを獲得している。投稿について「自分、医療従事者ですが、そんな情報どこから？」「医療従事者ですが、周りもマイナ保険証」という指摘が多くついている。

米メルトウォーターの分析ツールで調べると、12月2日のマイナ保険証への本格移行の数日前からソーシャルメディアへのマイナ保険証関連の投稿が急増し、否定的な内容が目立つ。その中には真偽が不確かな情報も含まれている。

検証過程

マイナ保険証とは

マイナ保険証とは、健康保険証の利用登録がされたマイナンバーカードのことだ。これまで健康保険証が必要だった医療機関・薬局での受付(医療保険の資格確認)を、マイナンバーカードでできるようになる(厚生労働省.”マイナンバーカードの健康保険証利用（マイナ保険証）について”)。

健康保険証は2025年12月2日以降、新しく発行されなくなった。マイナ保険証を基本とする仕組みに移行していく方針だ。ただし移行後も、手元にある健康保険証は有効期限までの間、最長１年間使用できる(厚生労働省.”健康保険証は 12月2日以降新たに発行されなくなりました”)。

日本全体でのマイナ保険証の2025年10月時点でカード保有率は87.8％、利用率は37.14%となっている(厚生労働省.”マイナ保険証の利用促進等について”)。

拡散した投稿には「医療従事者はマイナ保険証にしない人が大多数」とあるが、厚労省の資料にそのようなデータの記載はない。また、2025年12月4日時点で、そのような公開情報や報道は確認できなかった。

医療従事者専用サイトのアンケートでマイナ保険証59.9％

一方で、医療従事者専用サイト「m3.com」は医師を対象にしたアンケートを実施。「持っていて保険証登録している」が59.9％、「持っているが保険証登録はしていない」が23.0％で、計82.9％はマイナカードを持っていると答えた。

調査は2024年11月1日～2日で、対象はm3.com医師会員(開業医270人、勤務医425人)。カード保有者(576人)に限ると、「保険証登録をしている」は72.2％、マイナ保険証を持つ医師のうち、患者としてマイナ保険証を利用している割合は51.4％(開業医46.8％、勤務医54.7％)だった(以上、m3.com.”マイナ保険証保有の医師51％「患者として受診時に利用」◆Vol.2 | m3.com”)。

つまり、昨年11月段階で、回答者のうちカード保持者の半数以上がマイナ保険証を登録している。医療従事者は医師だけでなく、看護師や薬剤師や療法士や技師など多数の職種が含まれるため、このアンケートが全体の傾向を示すわけではない。しかし、拡散した投稿は根拠すら示していない。