ニトリが中国にコメ輸出していることが高騰の一因? 2022年に1度だけ【ファクトチェック】

ニトリが中国にコメ輸出していることが高騰の一因?  2022年に1度だけ【ファクトチェック】

「ニトリが中国にコメを輸出していることが価格高騰の一因になっている」という情報が拡散しましたが、誤りです。ニトリが中国にコメを輸出したのは2022年1月に一度だけで、現在は輸出していません。

検証対象

「ニトリが日本の米を中国に輸出しているから日本でコメが不足し価格が高騰している」などとニトリを非難する内容の動画が、TikTokやYouTube、Xなどで多数拡散している(例1例2例3例4例5)。

動画の多くに共通しているのは「ニトリは中国で作った商品をコンテナ船で日本に輸入しているが、その帰りの便が空になるため、北海道の工場に米を集めて、小樽港から中国に輸出している」という情報が含まれている点だ。

投稿には多くの「いいね」がつき、「ニトリ終了だね。みんなニトリでは買わなくなる」「ニトリは日本人の敵ってわけか」などのコメントが寄せられている。

検証過程

動画の多くに経済安保アナリストのコメント

拡散した動画の多くは、例1例3例5のように、経済安全保障アナリスト・平井宏治氏がオンライン番組で「ニトリは2021年からホクレンのパールライス工場にコメを集めて小樽港から中国に輸出している」などと話す場面を切り貼りし、テロップやナレーションをつけている。

例2のように、平井氏の顔写真にナレーションで同じ内容の情報をつけた動画や、例4のように、平井氏の名前も顔も出ないが、ナレーションでほぼ同じ内容を伝える動画もある。

例3の動画は、平井氏とジャーナリスト・有本香氏が出演するオンライン番組「ニュースあさ8時!」を短く編集している。元は公式チャンネルで2025年5月8日にライブ配信された、2時間14分5秒の動画だ。2時間2分20秒以降に、拡散した動画に使われた発言がある。

平井氏の発言は次の通りだ。

「ニトリはですね、2021年からやってるんですけど、ホクレンのパールライス工場に集めてそれを小樽港から中国に輸出してるんですね。彼らはミネラルウォーターとかお酒も輸出してますよっていうことで、中国から家具を持ってきて、中国へ行く船にこういうのを載せてやってますというのを日経新聞が報道してますね」

平井氏が言及した日経新聞の記事「ニトリが北海道米『ななつぼし』輸出へ 中国市場で勝算」には、概ね平井氏が動画でコメントした通りの内容が書いてあるが、配信された日付は2021年11月18日だ。

例1例5の平井氏の発言内容は例3とほぼ同じだが、「ニュースあさ8時!」とは別のYouTube番組「吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜」(2025年2月28日公開)から切り出した映像だ。

平井氏は、自身のXで2025年5月6日に「切り取り拡散ありがとうございます」などと、自身が登場する動画のリポストにコメントしている。

ニトリ「コメ輸出は2022年1月だけ」

ニトリを非難する動画が拡散していることを受け、批判の発端となったコメ輸出の現状などについて、産経新聞とFRIDAY Digitalが同社を取材した。

取材に対して、同社は「中国へのコメの輸出は2022年1月に一度行ったが、それ以降お米の輸出の実績はない」と回答している(産経新聞 2025年5月13日FRIDAY Digital 2025年5月11日)。

日本ファクトチェックセンター(JFC)もニトリに取材した。

2022年1月に1度だけ輸出して、その後は実施していない理由については、以下のような回答だった。

「2022年の輸出実績は、国内におけるお米の消費量の低下や、海外における市場開拓等の観点から農林水産省が推進する『農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略』という枠組みにおいて、実施したものです」

「これらの事業は、港湾利用の実証実験としての位置づけもあり、特定の販路に対して輸出したものではないため、単発の輸出実績となっています」

また、現在、ニトリが中国に輸出している品目については以下のような回答だった。

「中国大陸、香港など向けに北海道産品を輸出しております。現在の主な輸出品目は、酒類(ビール、日本酒、ワインなど)、加工食品(菓子類、調味料など)です」

今後のコメ輸出の可能性については「現段階では輸出の予定はありません」と答えた。

判定

ニトリがコメを輸出していることが記録的なコメ不足や高騰の一因という情報が拡散したが、誤り。ニトリのコメ輸出は2022年1月で、現在は輸出していない。

検証:根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

誤報を生む確証バイアス/JFC検証8本、動画など【今週のファクトチェック】

誤報を生む確証バイアス/JFC検証8本、動画など【今週のファクトチェック】

読売新聞が大誤報を出しました。日本維新の会の池下卓衆院議員による公設秘書給与の不正受給疑惑を東京地検特捜部が捜査しているというスクープ記事でしたが、捜査対象者を取り違えていました。 読売新聞の検証記事によると、担当記者の思い込みが原因で、取材相手が明確に認めたわけではないのに「肯定的な回答をした」と受け止め、また、別の関係者からは「誤報になるかもしれない」という助言があったにも関わらず、そういったマイナス情報は無視されました(読売新聞"マイナス情報を軽視、チェック機能働かず…東京地検捜査巡る誤報検証")。 人には「確証バイアス」があります。自分の考えに近い情報を「重要だ」と考え、そうではない情報を軽視・無視する傾向です。そして、意識的に自分の考えに近い情報ばかりを集めることを「チェリーピッキング」といいます。担当記者はまさにこれに囚われていたのでしょう。 偽情報や誤情報を「事実だ」と受け止めてしまう背景にも、バイアスがあります。日本ファクトチェックセンター(JFC)では、こういった内容を「ファクトチェック講座」で解説しています。無料ですので、ぜひ御覧ください。 フェ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
米トランプ大統領「日本政府は助けるつもりはないが日本国民は助けるつもり」と発言? 発言の記録なし【ファクトチェック】

米トランプ大統領「日本政府は助けるつもりはないが日本国民は助けるつもり」と発言? 発言の記録なし【ファクトチェック】

米トランプ大統領が「私は日本政府は助けるつもりはないが、日本国民は助けるつもりだ」と発言したかのような投稿がXで拡散しましたが、根拠不明です。ホワイトハウスからもトランプ氏からもそうした発表はありません。 検証対象 2025年8月28日、米トランプ大統領が「私は日本政府は助けるつもりはないが、日本国民は助けるつもりだ」と発言したかのような投稿がXで拡散した。 8月29日現在、投稿は2万回以上リポストされ、表示は988.7万件を超える。 投稿には「これが事実ならありがたい事だが、正直言って情けない事この上ない」「日本政府から日本国民を助けてください。もうめちゃくちゃですわ」や「これ本当に言ったのか??」などの指摘もある。 検証過程 投稿は2枚の画像付きだ。1枚目は演説するトランプ氏の静止画に日本語で「私は日本政府を助けるつもりはないが、日本国民を助けるつもりだ」というテロップが付いている。 2枚目は米ホワイトハウスの公式アカウントが8月27日に投稿したトランプ氏と政権幹部らとの集合写真の引用だ。「史上最高の内閣(The Greatest Cabine

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
JICAと三条市が外国人定住の協定? 対象は日本人の協力隊員【ファクトチェック】

JICAと三条市が外国人定住の協定? 対象は日本人の協力隊員【ファクトチェック】

国際協力機構(JICA)が日本の4市をアフリカの「ホームタウン」に認定した件をめぐって、新潟県三条市とJICAが外国人を定住させる協定を結んだと思わせるような主張が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿に添付されている画像は別の事業の資料で、定住促進の対象は日本人の地域おこし協力隊員です。 検証対象 三条市を含む4市とアフリカ諸国の「ホームタウン」認定をめぐって、外国人の移住が増えるのかと話題になる中、2025年8月26日、「三条市とJICAで『定住と定着の促進』ってハッキリ書いてあります」という投稿が資料のスクリーンショットと共に拡散した。 添付画像のタイトルは「三条市・国際協力機構・慶應義塾大学SFC研究所が 『地域おこしと国際協力の研究開発と推進に関する連携協定』を締結」。協定の概要6には「三条市の地域資源を活用した地域活性化を図るとともに、三条市への定住・定着の促進に関すること」と書かれている。 8月29日現在、投稿は3.2万件以上リポストされ、表示回数は1267万回を超える。反応には「どう考えても外患誘致だろ」や「アフリカ移民の故郷になって、地元

By 木山竣策
自民党が結党以来初めて衆参両院で過半数を割った? 実際は過去3回【ファクトチェック】

自民党が結党以来初めて衆参両院で過半数を割った? 実際は過去3回【ファクトチェック】

参政党が発表した「終戦80年談話」で「自民党が結党以来初めて衆参両院で過半数を割った」と記しましたが、誤りです。自民党は衆参両院で、過去に3回、過半数割れをしています。参政党は公式サイト上では「与党として」過半数を割ったと修正しましたが、8月29日正午現在、X上の投稿はそのまま残っています。 検証対象 2025年8月15日、参政党の公式アカウントが「終戦80年談話」として「自民党が、結党以来初めて衆参両院で過半数を割りました」とXに投稿した。 8月29日現在、この投稿は1万件以上リポストされ、表示回数は708万回を超える。投稿について「日本の誇りを今こそ取り戻しましょう!」「涙した」というコメントの一方で「国政政党なのに虚偽情報はダメ」という指摘もある。 検証過程 自民党の単独議席数の変遷 1955年に結党した自民党の単独の議席数が衆議院、参議院の両院で同時に過半数を下回ったのは、1993年、2009年、2024年の3回ある(日本経済新聞.”衆議院選挙と参議院選挙、議席の攻防史”)。 最初に過半数を下回ったのは衆議院。1976年の衆院選で、定数5

By 木山竣策

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は9月20日(土)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0920.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどの

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)