日向灘を震源とする地震前日に地震雲? 雲は地震とは関係のない気象現象【ファクトチェック】

日向灘を震源とする地震前日に地震雲? 雲は地震とは関係のない気象現象【ファクトチェック】

2024年8月8日に発生した日向灘を震源とする地震に関連し、地震発生前日に投稿された「これは地震雲かもね」という投稿が拡散しましたが誤りです。雲と地震は関係ありません。

検証対象

2024年8月8日、日向灘を震源とする地震の発生を受け、「大分県付近の人、暫く地震に気をつけよう これは地震雲かもね」という8月7日に投稿された画像つき投稿が拡散した。画像には数本の細い雲が写っている。

この投稿は2024年8月8日時点で表示回数2500万件を超える。「地震雲だ」「予言」というコメントが付き拡散する一方で、「飛行機雲」という指摘もある。

検証過程

気象研究所主任研究官の荒木氏「飛行機雲です」

気象庁気象研究所主任研究官の荒木健太郎氏は、拡散した投稿を「飛行機雲です」と引用リポストで指摘している。

荒木氏は、気象庁気象研究室の「台風・災害気象研究部」というウェブサイトでも地震雲について「雲は地震の前兆にはなりません」「世間一般で地震雲として騒がれている雲は、実は日常的によくある雲で、全て気象学で説明できる雲です」と解説している。

気象庁「全く別の現象」

気象庁は「地震予知について」というページで地震雲について解説している。地震雲については「雲は大気の現象であり、地震は大地の現象で、両者は全く別の現象です。大気は地形の影響を受けますが、地震の影響を受ける科学的なメカニズムは説明できていません」としている。

判定

日向灘を震源とする地震に関連づけて「地震雲が発生していた」という言説は、誤り。地震と雲は全く別の現象だと気象庁は否定している。

あとがき

災害時には、過去の投稿を災害と関連付けて拡散するケースがあり、注意が必要です。日本ファクトチェックセンター(JFC)では、災害時に広がる5つの偽情報の類型をまとめています。

災害時に広がる偽情報5つの類型 地震や津波に関するデマはどう拡散するのか
地震や津波、洪水など大きな災害が発生すると、偽情報や根拠のない情報が拡散します。事実と異なる投稿や不確かな救助要請は、本当に助けを必要としている人たちへの支援を遅らせたり、妨げたりする恐れがあります。拡散しがちな偽情報・誤情報のパターンを知って、支援を妨げないようにしましょう。 災害時の偽情報の5類型 実際と異なる被害投稿 災害時に最も多く見られるのが、偽の被害報告だ。2024年1月1日の能登半島地震では、2011年の東日本大震災の津波の映像を使って、まるで能登半島地震の被害のように投稿する事例が相次いだ(例1、例2、例3、例4、例5 、例6)。 例2と例3を投稿した2つのアカウントは添付動画は異なるが、投稿文言は同じで「津波到達になった瞬間NHKのアナウンサーがすごい怒鳴ってる!危機感の伝わってくるアナウンスなので北陸新潟能登半島の方逃げてください」と書かれている。投稿内容をコピーしたと見られる。 例5の投稿は「石川県能登に大津波警報逃げろ」という文言に「#東日本大震災」というハッシュタグもついている。映像は東日本大震災のものだと示唆しているように読

検証:木山竣策
編集:宮本聖二、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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