撃たれた後に笑顔を見せる安倍元首相? 画像は加工されたもの【ファクトチェック】

撃たれた後に笑顔を見せる安倍元首相? 画像は加工されたもの【ファクトチェック】

安倍晋三元首相が銃撃されながらも笑顔で横たわる画像が拡散しましたが、実際の画像ではなく誤りです。拡散した画像は加工されています。

検証対象

2024年8月13日、安倍晋三元首相が銃撃されながらも笑顔を見せて横たわる画像を添付した投稿が拡散した。この投稿は8月14日現在、324万回以上の表示回数と1400件以上のリポストを獲得している。

投稿について「本当なら怖すぎる」「ヤラセ」というコメントがつく一方で、「フェイク画像」という指摘もある。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、拡散した画像をTinEye画像検索した。その結果、2022年7月9日にTwitter(当時)に投稿された画像がみつかった。

画像を比較すると安倍元首相の表情が拡散した画像と異なることがわかる。拡散した画像では安倍元首相は口角を上げて笑顔を見せているが、2022年に投稿された画像では目と口を閉じ、笑顔ではない。

2022年に投稿された画像を改めてGoogle画像検索で検索すると、毎日新聞社の久保聡氏が撮影し、2022年度の新聞協会賞を受賞した画像がみつかる(日本新聞協会 ジャーナリズムの力)。

この写真は2022年7月8日午前11時31分、奈良市で銃撃され、手当てを受ける安倍元首相を撮影したものだ。毎日新聞は、銃撃直後の写真として同日午後4時半にデジタル版で配信した。

右上に映る男性がガードレールにかけている手の角度や、覗き込む人たちの表情が拡散した画像と完全に一致しているが、安倍元首相は笑顔ではない。

判定

拡散した画像は、安倍元首相が奈良市で銃撃され死亡した事件で、毎日新聞社の久保聡氏が撮影した画像を加工している。よって誤りと判定した。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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