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ファクトチェックと「プリバンキング」 “情報の空白”を埋める注目の手法【JFC講座 実践編9】

ファクトチェックと「プリバンキング」 “情報の空白”を埋める注目の手法【JFC講座 実践編9】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第8回は、よく質問されるファクトチェックと調査報道や裏取りとの違いについてでした。第9回は世界のファクトチェック事例や新手法を解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックの多様な事例 ファクトチェックには原則がありますが、同時に、検証対象の選び方や組織のあり方などは多様です。国内外の事例を紹介します。 Factchek.org ファクトチェック団体としては老舗のFactchek.orgはアメリカ政治に関する偽情報に対応するために、「有権者のための消費者保護センター」を目指して2003年に設立されました。 そのため、主なトピックに並ぶのは「バイデン大統領」「トランプ前大統領」、そして「その他の大統領候補」などアメリカ政治中心です(2024年7月27日現在)。 例えば、「バイデンが不法移民に家賃を支払っているという根拠のない主張」という記事には、見出しに検証対象と検証結果=根拠なしが記され、記事内では検証過程が詳細に記述されていま

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
日本での農地取得、外国人が3分の2? 新聞記事の誤読が拡散【ファクトチェック】

日本での農地取得、外国人が3分の2? 新聞記事の誤読が拡散【ファクトチェック】

「外国人による農地取得が全体の3分の2」という言説が拡散しましたが、誤りです。新聞記事を誤読した投稿が拡散しました。 検証対象 2024年7月20日、日本農業新聞の記事を引用して「これやばいだろ?なんで国は規制しない? 外国人による農地取得が全体の3分の2を占めたらしい」という言説が拡散した。 この投稿は43万以上の閲覧と6900のリポストがある。「農地って簡単に買えるの?」「自国の国民のために農地を開拓しているのかもしれない」というコメントのほか、「記事をちゃんと読みましたか」「日本であっても規制はありますよー」といった指摘もある。 「外国人による農地取得が3分の2を占めた」という言説を検証する。 検証過程 言説に添付されたのは、日本農業新聞が2024年7月20日に配信した記事だ。拡散したスクショは「外国人の農地取得 23年は90ヘクタールに 3分の2が国内在住」という見出しで、7月26日朝の時点では「3分の2」が「国内在住の個人・法人中心」に変わっている。 外国資本が「全体の3分の2」ではない 記事の内容は「外国人もしくはその関係法人が2

By 宮本聖二
最新の複数世論調査でトランプ前大統領がハリス副大統領を大幅リード? 拡散したのは予想サイトの数字【ファクトチェック】

最新の複数世論調査でトランプ前大統領がハリス副大統領を大幅リード? 拡散したのは予想サイトの数字【ファクトチェック】

「最新の複数世論調査でトランプ大統領がカマラ・ハリスを大幅リード」という言説が拡散しましたが誤りです。言説に表示された数字は世論調査の数字ではありません。2024年7月26日現在、最新の世論調査では、両氏の支持率は拮抗しています。 検証対象 2024年7月23日、「最新の複数世論調査でトランプ大統領がカマラ・ハリスを大幅リード/NHKは『僅差』と報道」という言説が拡散した。言説にはまとめサイト「トータルニュースワールド」のリンクが添付されている。 2024年7月26日現在、投稿は1700件以上リポストされ、表示回数は31万件を超える。投稿について「当たり前」「妥当」というコメントがある。 検証過程 数字は予測市場プラットフォームの数字 拡散した言説にはまとめサイト「トータルニュース」のリンクが添付され、「64% Trump」「36% Kamala」と書かれたサムネイルが表示されている。リンク先を確認すると、根拠として「PolyMarket」の数字を集計した一般ユーザーのX投稿を複数取り上げている。 Polymarket(ポリマーケット)は、仮想通

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ファクトチェックと調査報道 共通する手法と異なる方法論【JFC講座 実践編8】

ファクトチェックと調査報道 共通する手法と異なる方法論【JFC講座 実践編8】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第7回は、ファクトチェックに役立つサイトやツールについてでした。第8回はよく質問されるファクトチェックと調査報道や裏取りとの違いを解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックと調査報道の違い 「ファクトチェックは事実を確かめることだから、報道機関は当然どこでもやっているのではないか」とよく聞かれます。 半分正解で半分間違いと言えます。何が共通していて、何が異なるのかを解説していきます。 ファクトチェックとオンライン調査 検証の根拠を公開し、可能な限りユーザーにもアクセス可能にすることが原則のファクトチェックでは、オンライン調査の手法を活用します。 誰でもアクセスできるオープンソースを使うOSINTの重要性は実践編6でも説明した通りです。 OSINTでファクトチェック 公開データを使い真偽を判別する【JFC講座 実践編6】日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第5回は、生成AIで作られる画像

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
習近平国家主席が脳卒中で倒れた? 椅子から転げ落ちたという画像が拡散【ファクトチェック】

習近平国家主席が脳卒中で倒れた? 椅子から転げ落ちたという画像が拡散【ファクトチェック】

中国の習近平国家主席が「中国共産党の会議で椅子から転げ落ちた。脳卒中だ」などという言説が画像とともに拡散しましたが、根拠不明です。拡散した画像は2024年3月の全国人民代表大会のもので、その後も公務の様子がたびたび報じられています。2024年7月25日時点で習主席が重篤な状態だという信頼性のある情報はありません。 検証対象 2024年7月18日、「中国共産党の全体会議の写真に、習近平が突然、痛みに震えて椅子から転げ落ちる様子が写っている。 おそらく脳卒中だったのだろう」「衰弱の発作だったのかもしれない」という投稿が拡散した。 添付された画像にはドイツ語で、「習近平は脳卒中を患ったのか?」という題名の後に、「中国共産党本会議の写真には、習近平氏が突然痛みでけいれんし、椅子から転げ落ちる様子が映っている。おそらく脳卒中を起こしたのだろう」などと書かれている。3枚の画像には顔をしかめる習主席や、習主席の机を確認する女性が写っている。 2024年7月25日時点で1800件以上リポストされ、表示回数は117万回を超える。投稿について「どくさつ」「おそらく脳卒中」など

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ファクトチェックに使えるサイトやツール 公開情報を使いこなす【JFC講座 実践編7】

ファクトチェックに使えるサイトやツール 公開情報を使いこなす【JFC講座 実践編7】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第6回は、公開されている情報に基づいた調査=OSINTについてでした。第7回はファクトチェックに役立つサイトやツールを紹介します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) ファクトチェックに役立つサイトやツール 理論編から繰り返し説明してきたようにファクトチェックは、検証する際の根拠を開示することが大前提です。 インターネット上には、公開情報を手に入れるのに役立つサイトやツールがたくさんあります。これまでに紹介したGoogle画像検索やInVID、Googleマップなどもそうですが、今回は主に資料探しに役立つサイトやツールを紹介したいと思います。 政府の公式データの活用 中央行政のオープンデータポータル「e-Gov」や政府統計の総合窓口「e-Stat」は、各省庁のデータを横断的に検索できる非常に便利なサイトです。 キーワードやカテゴリ、テーマごとに検索が可能で、信頼性の高い公的データを素早く見つけることができます。 これらのサイトは、海外でも同様のも

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
OSINTでファクトチェック 公開データを使い真偽を判別する【JFC講座 実践編6】

OSINTでファクトチェック 公開データを使い真偽を判別する【JFC講座 実践編6】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第5回は、生成AIで作られる画像や動画の検証についてでした。第6回は公開されている情報に基づいた調査=OSINTについて解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) OSINTとは オープンソースインテリジェンス(Open Source Inteligence=OSINT)とは、一般に公開されている情報を収集し分析する手法のことです。 近年、調査報道やファクトチェックに活用されており、オンライン調査とも呼ばれます。日本ファクトチェックセンター(JFC)でもこの手法を活用しています。 現実の画像かどうかOSINTで確認する 実例で見ていきます。 実践編第5回でも紹介したように、2022年9月の静岡県の水害では、生成AIによる偽画像が拡散しました。 ドローンで撮影された静岡県の災害画像? AIディープフェイクの見分け方【ファクトチェック】台風15号による記録的な大雨に見舞われた静岡県をドローンで撮影したとする画像がTwitter上で拡散しています

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
生成AIをファクトチェック 進化する技術に対抗する方法【JFC講座 実践編5】

生成AIをファクトチェック 進化する技術に対抗する方法【JFC講座 実践編5】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第4回は、増加傾向にある偽動画の検証についてでした。第5回は公開されている生成AIで作られる画像や動画の検証について解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) 生成AIによる「ディープフェイク」 生成AIで作られた偽情報は「ディープフェイク」と呼ばれます。 例えば、アメリカのトランプ前大統領が「岸田首相はグローバリストの操り人形」と話している動画が拡散しました。これは発言内容を自由に捏造できるツールで作られたディープフェイクです。 一方で、AIを使わずに作られた偽の画像や動画などをディープ(深い)に対応して「シャロー(浅い)フェイク」や「チープ(安い)フェイク」と呼びます。 例として、台湾の地震時に東日本大震災の映像が使われた事例があります。現状では、チープフェイクの方が圧倒的に多いですが、ディープフェイクも増えつつあります。 日本のディープフェイク事例 日本で最初に有名になったディープフェイク事例は、2022年9月の静岡県での事例です。「

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
偽動画をファクトチェック InVIDやYouTube検索のコツ【JFC講座 実践編4】

偽動画をファクトチェック InVIDやYouTube検索のコツ【JFC講座 実践編4】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第3回は、偽・誤情報でよく見かける画像の検証についてでした。第4回は増加傾向にある偽動画の検証について解説します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) 動画の検証もオリジナル探しが鍵 動画は画像と並んで画像と並んで偽・誤情報に用いられやすい形式です。過去の災害動画を現在のものとして使ったり、オリジナルを改変したり、生成AIで捏造したりと、手法も偽画像と共通しています。 検証の手法も動画と画像と同様にオリジナルを探すことが鍵となりますが、Google画像検索のようなシンプルな検索ツールが動画にはありません。 ここでのポイントは動画も、タイトルなどのテキストや、サムネイルなどの画像で管理されているということです。これを利用してオリジナルを探します。 動画の検証 Googleレンズ 実際の事例を元に解説します。 (能登半島地震)過去の津波映像や人工地震説など【ファクトチェック】2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする最大震度7の

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェック講座・実践編/トランプ前大統領銃撃事件をめぐる陰謀論【今週のファクトチェック】

JFCファクトチェック講座・実践編/トランプ前大統領銃撃事件をめぐる陰謀論【今週のファクトチェック】

YouTubeで視聴できるJFCファクトチェック講座は、理論編に続いて実践編がスタートしました。アメリカのトランプ前大統領の銃撃事件は、直後から偽情報と陰謀論が拡散しています。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCファクトチェック講座 7月8日にスタートしたJFCファクトチェック講座は理論編10本を公開しました。偽・誤情報の拡散の実態、背景にある人間のバイアス、それを強化するデジタルプラットフォームのアルゴリズムなどを解説してきました。 7月18日からは実践編。検証の具体的な技術や不可欠のツールの使い方などを紹介しています。 動画は毎日午後5時にアップし、翌日に概要をまとめた記事を配信します。最終回を公開後、これまでの内容に基づくファクトチェッカー認定試験を開始します。オープンバッジで資格を認証する他、ファクトチェッカーを紹介するイベントなどを予定しています。 また、学校や

By 宮本聖二, 古田大輔(Daisuke Furuta)
偽画像をファクトチェック GoogleレンズやTinEyeの使い方【JFC講座 実践編3】

偽画像をファクトチェック GoogleレンズやTinEyeの使い方【JFC講座 実践編3】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第2回は、検証の最大の武器である「検索」についてでした。第3回は偽・誤情報でよく見かける画像の検証についてです。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) 画像検証で重要なのはオリジナル探し 画像を使った偽・誤情報で多いのは、例えば、過去の画像を現在のものとして使ったり、オリジナルを改変したりする事例です。 そこで重要になるのが、検証したい画像と似ている画像を探す「画像検索」です。簡単なツールを知っているだけで、オリジナル画像を効率的に探すことができます。 JFCとGLOCOMが実施した2万人調査では、画像検索をする人は偽情報に気づきやすく、拡散しにくいことがわかりましたが、実践している人はわずか6.7%。画像検索を知らない人が多いのが現状です。 Google画像検索の使い方 まずは最も手軽に使えて強力なGoogle画像検索を説明します。実際の検証記事をもとに説明します。 反原発デモの空撮、報道されなかった?別のデモの写真【ファクトチェック】「反原発デ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
ファクトチェック最大の武器「高度な検索」は何にでも使える【JFC講座 実践編2】

ファクトチェック最大の武器「高度な検索」は何にでも使える【JFC講座 実践編2】

日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 実践編第1回は、検証の基礎となる「対象の特定」と「過程の公開」についてでした。第2回は検証の最大の武器である「検索」です。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) プロのように検索せよ 世界中で公開されているファクトチェック講座で、必ず取り上げられるのが「高度な検索の方法」です。 誰でも検索はしたことがあるでしょう。しかし、信頼性の高い情報を効率的に見つけるための手法をきちんと学んだことがある人は少ないのでは。 検索はファクトチェックだけでなく、仕事や生活や学業のあらゆる場面で役にたちます。プロの検索方法を解説します。 ファクトチェックの5つの要素 検索の仕方を学ぶ前に、何を検索すればいいのか理解するために「ファクトチェックの5つの要素」を紹介します。アメリカのRumor Guardが紹介している方法論です。 1. 真偽 - 検証対象が本物かどうか確認します。AI技術の発達で、画像や動画の捏造が簡単になっているため、真偽の確認が重要です。 2. 発信源

By 古田大輔(Daisuke Furuta)