自民・高市新総裁が「所得税一律10%に下げ累進課税廃止」と表明? まとめサイトによる誤り【ファクトチェック】

自民・高市新総裁が「所得税一律10%に下げ累進課税廃止」と表明? まとめサイトによる誤り【ファクトチェック】

自民党・高市早苗新総裁が、所得税を一律10%に下げて累進課税を廃止すると表明したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。高市氏は10月4日の記者会見で、所得税の減税と給付を組み合わせる「給付付き税額控除」の制度設計について「しっかりと自民党の政調会で議論していただきたい」などと述べましたが、所得税の累進課税を廃止するとは言っていません。

検証対象

2025年10月5日、「【朗報】高市早苗『所得税を一律10%に下げて累進課税を廃止する』」という投稿がXで拡散した。

10月6日現在、投稿は6200回以上リポストされ、表示は1,043.3万件を超える。

投稿には「これしちゃうと、貧富の差がとんでもないことになるかも」「一律は低所得者を苦しめるだけだろ!」や「ツイッター速報って信憑性がゼロなんだよ」などの指摘もある。

検証過程

投稿はまとめサイトによるもので参照記事には発言なし

検証対象のリンクは、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「【朗報】高市早苗『所得税を一律10%に下げて累進課税を廃止する』」で、記事には、日経新聞の記事リンクと記事タイトルが書いてある。

リンクを踏むと日経新聞のサイトに遷移し、「お探しのページが見つかりませんでした」と表示されるが、Googleで記事タイトル「自民・高市早苗新総裁が記者会見 財政・金融政策『政府が責任』」を検索すると、同じタイトルの10月4日配信の日経新聞の記事が表示される(日経新聞”自民・高市早苗新総裁が記者会見 財政・金融政策『政府が責任』”)。

日経新聞の記事は、自民党の新総裁に選出された高市早苗氏が、10月4日に党本部で記者会見を開き、物価高対策を含む経済や外交・安全保障政策などを説明したと伝えている。記事には、高市氏が所得税に触れているくだりがあるが、「所得税の減税と給付を組み合わせる『給付付き税額控除』の制度設計について『数年単位でかかる』と説明した」というだけで、累進課税を廃止するとも、一律10%に下げるとも書かれていない。

10月6日午前10時現在、そのような発表も報道もない。

所得税について高市氏は、所得税の課税最低ライン「年収の壁」引き上げについて、首相に就任すれば年内に実現させたいと表明しているが、累進課税の廃止とは異なる内容だ(時事通信”所得減税、年内実現に意欲 戦後80年見解は不要―自民・高市氏”9月26日、毎日新聞”高市早苗氏、所得減税「年内に決着を」 野党連携は憲法改正姿勢重視”9月29日)。

判定

自民党・高市早苗新総裁が、所得税を一律10%に下げて累進課税を廃止すると表明したかのような投稿が拡散した。高市氏は10月4日の記者会見で、所得税の減税と給付を組み合わせる「給付付き税額控除」の制度設計について「しっかりと自民党の政調会で議論していただきたい」などと述べたが、所得税の累進課税を廃止するとは言っていない。現時点でそのような情報はなく、情報を拡散させたまとめサイトの記述のみだ。よって、誤りと判定する。

あとがき

政治関係の誤情報は、世の中の注目を集める政治家を見出しにとるものが多くなります。拡散の効果が高いためです。自民党の新総裁に選ばれ、初の女性首相となる可能性がある高市氏に関する誤情報は増えるでしょう。

発信者、根拠、関連情報を確認するようにしましょう。

出典・参考

日経新聞.”自民・高市早苗新総裁が記者会見 財政・金融政策『政府が責任』”.2025年10月4日.
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA03AVP0T01C25A0000000/, (閲覧日2025年10月6日).

時事通信.”所得減税、年内実現に意欲 戦後80年見解は不要―自民・高市氏”.2025年9月26日.
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025092501052&g=pol#goog_rewarded, (閲覧日2025年10月6日).

毎日新聞.”高市早苗氏、所得減税「年内に決着を」 野党連携は憲法改正姿勢重視”.2025年9月29日.
https://mainichi.jp/articles/20250928/k00/00m/010/063000c, (閲覧日2025年10月6日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

企業やゲームのキャンペーンを装って偽サイトやLINE登録を促すXアカウントに注意

企業やゲームのキャンペーンを装って偽サイトやLINE登録を促すXアカウントに注意

X上で、実在する企業や人気ゲームのアカウントを装い「特別なご案内」「PayPayマネーがもらえる」などと個人宛てにメンションを送る不審な投稿が複数確認されています。誘導先は公式とは無関係の偽サイトで、LINEアカウントの登録などを求めるため注意が必要です。 個人をメンションした「特別なご案内」 2026年4月から、「平素よりありがとうございます\✨特別なご案内を✨ 4名様にお届けしております プロフィールの固定ポストにまとめています 本日23時まで」という文言で個人のアカウントにメンションを付けた投稿が複数確認されている(例1、例2)。28日時点で、これらのアカウントは「凍結」されている。 投稿したアカウントは、Softbankや人気ゲーム「ツムツム」の「広報課」や「発信課」を名乗っている。固定ポストには「SoftBank」と「PayPay」のロゴとともに、「最短1分で受け取り完了」「1,000円~10万円分Pay Payマネーその場でもらえる!」などと書かれたリンクが添付されている。 リンク先はSoftbankの偽サイト リンクにアクセスすると、So

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
オバマ米元大統領が暴力を肯定する投稿? Xの自動翻訳の誤り【ファクトチェック】

オバマ米元大統領が暴力を肯定する投稿? Xの自動翻訳の誤り【ファクトチェック】

米国のトランプ大統領が出席していた夕食会での銃撃事件をめぐり、オバマ元大統領がXに投稿した文章が、自動翻訳によって「暴力が我々の民主主義に何の居場所もないという考えを、私たち全員が拒絶する責任があります」と日本語表示されました。これは誤訳です。原文を見ると英語で「我々の民主主義に暴力の居場所があるという考えを私たち全員が拒絶する責任がある」と反対の内容を書いています。 検証対象 拡散した言説 2026年4月27日、オバマ氏が自身のXアカウントで「Although we don’t yet have the details about the motives behind last night's shooting at the White House Correspondents Dinner, it’s incumbent upon all us to reject the idea that violence has

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
小野田紀美大臣が園遊会で着ていた衣装はTemuで買ったもの? 異なる帽子、本人も否定【ファクトチェック】

小野田紀美大臣が園遊会で着ていた衣装はTemuで買ったもの? 異なる帽子、本人も否定【ファクトチェック】

天皇、皇后両陛下主催の「園遊会」に出席した小野田紀美・経済安全保障大臣の衣装は中国通販サイトTemuで買ったもの、という投稿が拡散しましたが、誤りです。証拠として添付された画像の帽子は、小野田氏の帽子とは別のものです。また、本人も否定しています。 検証対象 2026年4月21日「悲報 小野田紀美さん、園遊会に着ていった衣装が、大嫌いな中国の通販サイト、Temuで買った事がバレてしまう……」という投稿が拡散した。 投稿には、小野田氏が赤いドレスと赤い帽子を着用している画像と、Temuの販売ページのスクリーンショットが添付されている。 検証する理由 4月24日現在、この投稿は3400件以上リポストされ、表示回数は552万回を超える。投稿について「スーツでいいでしょ」「超笑える」というコメントの一方で「良く調べてから物申せ」という指摘もある。 検証過程 小野田氏の画像は、自民党の赤沢亮正衆議院議員が4月18日にXに投稿したものだ。 拡散した投稿に添付されたTemuの商品ページのスクリーンショットは、帽子の商品ページだ。商品名で検索すると、同じ商品のペ

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
世界のファクトチェック団体の苦境と成長/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

世界のファクトチェック団体の苦境と成長/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

毎年恒例の国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の「ファクトチェッカー実態リポート」。トランプ政権からの逆風で、状況は厳しくなると予想されていた通りの結果が出ています。 資金面で67.2%が「脆弱」と答え、8.8%は半年以内に閉鎖されるかもしれない「危機的」な状況にあります。詳しくはリンクから読んでみてください。 ファクトチェックは偽・誤情報対策として十分ではありませんが、必要不可欠です。誤った情報が無尽蔵に拡散することを留めるだけでなく、根拠を明示してわかりやすく書かれたファクトチェック記事を読むこと自体に教育的な効果や予防効果もあるからです。検証ツールの開発や法的規制の議論の土台ともなります。 そして、そういったファクトチェック記事をコツコツと積み上げているのが、各国で活動している数少ないファクトチェック団体です。レポートでは苦しい経済状況だけでなく、動画や音声への展開、多言語発信、他業界とのコラボなどを通じた成長にも触れています。 残念ながら日本ファクトチェックセンター(JFC)もこの実態レポートのアンケート調査に財務状況は「脆弱」と回答しました。同時に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は5月16日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0516.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)