自民・高市氏、選択的夫婦別姓導入で除名になったら「党を割り新党を創りたい」と発言? 本人も否定【ファクトチェック】

自民・高市氏、選択的夫婦別姓導入で除名になったら「党を割り新党を創りたい」と発言? 本人も否定【ファクトチェック】

選択的夫婦別姓に反対する自民党・高市早苗衆議院議員が、法案に反対して除名や党員資格停止になったら「新党をつくりたい」と発言したという情報が拡散しましたが、誤りです。そのような記録はなく、本人も否定しています。

検証対象

2025年1月29日、選択的夫婦別姓をめぐって、自民党の高市議員が「反対して処分されたら党を割って新党を作る」と発言したかのような投稿が拡散した。

この投稿は2025年1月30日現在、69.3万回以上の閲覧回数と5000件以上のリポストを獲得している。

この投稿に対して、「高市氏の本気度に期待します」「とうとう高市さんも」といったコメントのほか「新党を創るなどという発言はしていませんよ」という指摘もある。

検証過程

選択的夫婦別姓と党議拘束

選択的夫婦別姓をめぐっては自民党内で意見が分かれている。森山裕幹事長は1月22日、インタビューで「党議拘束を外すことには慎重であるべきだ」と話している(時事通信)。

また、森山幹事長は24日も「党内でしっかり議論して、一つの意見にまとめて、国会に臨むことが大事なことではないか」と述べている(FNNプライムオンライン)。

高市氏、新党に関する発言なし

高市氏は以前から選択的夫婦別姓に反対する姿勢を示してきた。1月24日にはTBSのCS番組「国会トークフロントライン」で「夫婦や親子が戸籍上の同じファミリーネームということは残しておいた方がいい。結婚前の旧姓の通称使用を拡大することで対応するべきだ」と述べている(11分18秒〜16分30秒)。

ここでは最後に「慎重な議論が必要だと思う」と述べているが、法案提出の際の党議拘束に関する見解や新党結成などの意志は示していない。

また、1月27日には作家の門田隆将氏が前日に福岡であった高市氏の講演会での選択的夫婦別姓に関する発言として、以下のようにXへの投稿に引用している。

「もし党議拘束をかけるなら、私は自民党から除名されるかもしれませんし、党員資格を停止されるかもしれません。でも私の事などどうでもいいんです。これに賛成する事は私の人格を全否定される事になりますので」

しかし、ここにも新党結成に関する発言は触れられていない。

JFCの取材に「離党するつもりはまったくない」

日本ファクトチェックセンター(JFC)は高市氏の事務所に取材した。

選択的夫婦別姓をめぐり、離党したり、新党を作ったりする発言をしたか確認したところ、「私は自民党を離党するつもりは全くない。党を割るとは言っていない」という回答を得た。

判定

自民党の高市早苗衆議院議員が選択的夫婦別姓法案をめぐり、「反対して除名や党員資格停止処分が出たら党を割り、新党を創りたい」などと発言したという情報が拡散したが、誤り。その記録はなく、高市氏も否定している。

検証:宮本聖二
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

参院選開始、各社が続々とファクトチェック/検証5本・関連15本など【今週のファクトチェック】

参院選開始、各社が続々とファクトチェック/検証5本・関連15本など【今週のファクトチェック】

参院選が始まりました。昨年の兵庫県知事選を受けて、多くの新聞やテレビなどの報道機関がファクトチェックの取り組みを始め、次々と記事が出ています。対象には、ネットに拡散している真偽不明の言説もあれば、候補者や政党の発信もあります。多くの研究によって、人は誤った情報を目にしてもそれが間違っていると気が付かないということがわかっています。誤った情報に基づいて投票したり、棄権したりすることは民主主義を歪めます。日本ファクトチェックセンターでも、積極的に検証・解説記事を出していきます。(古田大輔) ※冒頭にミニコラムをつけるようにしました。ご意見・ご感想などはこちら。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催していま

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
大地震の前にトカラ地方で群発地震が発生する「トカラの法則」? 科学的根拠なし【ファクトチェック】

大地震の前にトカラ地方で群発地震が発生する「トカラの法則」? 科学的根拠なし【ファクトチェック】

鹿児島県・トカラ列島付近で群発している地震は大地震の予兆の「トカラの法則」だという情報がYouTubeなどで拡散していますが、誤りです。群発地震が大地震の予兆だという科学的根拠はありません。 検証対象 2025年6月∼7月、トカラ列島付近で地震が群発していることに関連して「トカラ列島の地震には『トカラの法則』というものがある」「トカラ列島で群発地震があった後、日本で巨大地震が起きる」という情報が複数のプラットフォームで大量に拡散している(例1,2,3,4)。 投稿について「とても勉強になります」「参考になりますね」などのコメントの一方で「恐怖を煽るのは、止めなさい」などの指摘もある。 検証過程 トカラ列島での群発地震 鹿児島県のトカラ列島では、2025年6月21日から7月1日までに700回を超える震度1以上の地震が群発的に続いている。(朝日新聞"トカラ列島の地震700回超す 悪石島では崖から砂煙も、男性が撮影”)。 この群発地震にあわせて、ネット上では大地震の予兆であるかのような情報が拡散した。 動画の内容と「トカラの法則」 トカラ列島で群

By 木山竣策
小泉進次郎氏が選挙期間ではないのにシートベルトなしで箱乗り?  動画は2024年の選挙期間のもの【ファクトチェック】

小泉進次郎氏が選挙期間ではないのにシートベルトなしで箱乗り? 動画は2024年の選挙期間のもの【ファクトチェック】

自民党の小泉進次郎氏が選挙期間中ではないのにシートベルトをせずに車に乗っていたという動画が拡散しましたが、誤りです。動画は2024年の衆議院議員選挙中に撮影されたもので、選挙期間中、候補者はシートベルトを着用する義務が免除されるので違法にはなりません。ただし、車から体を乗り出す行為については危険視する自治体もあります。 検証対象 2025年7月1日、「小泉進次郎氏が選挙期間でもないのにシートベルトなしで箱乗りしている」と主張する動画つき投稿が拡散した。 動画には、小泉氏が車の後部座席の窓から上半身を出し、手を降る姿が映っている。 2025年7月1日現在、この投稿は1100件以上リポストされ、表示回数は120万回を超える。投稿について「ルール守れや」「牢屋行き」というコメントの一方で「まずいつの動画なのかを調べよう」という指摘もある。 検証過程 動画は2024年の選挙中に撮影 拡散した動画をGoogleレンズで検索すると、2024年10月19日にXに投稿された同じ動画が見つかる。2024年には衆議院議員選挙があり、10月15日に公示、27日が投開票

By 木山竣策
日本政府が75歳以上の中国人観光客に対するビザ申請要件を撤廃? 緩和の発表はあったが撤廃していない【ファクトチェック】

日本政府が75歳以上の中国人観光客に対するビザ申請要件を撤廃? 緩和の発表はあったが撤廃していない【ファクトチェック】

2025年6月30日、「日本政府が中国人観光客に対する75歳以上のビザ申請要件を撤廃した」という投稿がXで拡散しましたが、誤りです。2024年12月、岩屋毅外務大臣が、中国人の観光ビザに関する発給要件を緩和すると発表したのは事実ですが、撤廃ではありません。また、2025年7月1日現在、緩和は始まっていません。 検証対象 2025年6月30日、「日本政府が中国人観光客に対する75歳以上のビザ申請要件を撤廃した」「従来は、75歳を超えると同行者の同伴や追加の健康診断書が必要でしたが、それらがすべて撤廃されました」という情報がXで拡散した。 2025年7月1日現在、リポストは1.9万回、表示回数は874万件を超える。投稿には「迷惑でしかない」「どういう大義でその判断がなされてるのか全く理解できない」などのコメントや、「外務省が6月26日に公開している件でしょうか。『75歳以上』はどこに記載があるのでしょうか」という指摘も寄せられている。 検証過程 中国人の訪日にはビザが必要 外国籍の人が日本を訪れる場合、日本のビザを取得する必要がある。中国はビザ免除国で

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月22日(火)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0722.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)