SNS規制法によって消されるターゲットのリスト? コミュニティノート付与数のランキング【ファクトチェック】

SNS規制法によって消されるターゲットのリスト? コミュニティノート付与数のランキング【ファクトチェック】

「SNS規制法が開始されたら消されるターゲットのリストがある」という情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した表は、X上でコミュニティノートが付与された国内アカウントをユーザーがまとめたランキングです。「SNS規制法」で消されるアカウントのリストではありません。

検証対象

2025年5月27日、立憲民主党の原口一博衆院議員が「『Xにて、SNS規制法が開始されたら消されるターゲット。 (コミュニティノートのバイト要員が明かす)』私も載っている。事実なら何と恐ろしい」と投稿をした。

投稿にはXなどでのライブ配信が添付されている。配信の中で原口氏は「Xにて、SNS規制法が開始されたら消されるターゲット」として、原口氏や「ツイッター速報~BreakingNews」などの名前が書かれたリストを紹介している。

2025年6月3日現在、この投稿は300件以上リポストされ、表示回数は6万回を超える。投稿について「なんて恐ろしい」「負けず頑張ってください」というコメントの一方で「コミュニティノート付いたリストですよ」という指摘もある。

検証過程

リストはコミュニティノートの付与数ランキング

原口氏が取り上げた表をGoogleレンズで検索すると、2024年5月に個人がXに投稿した同じ表が見つかった。投稿には「国内コミュニティノート被弾ランキングを4か月ぶりに更新しました」と書かれている。

原口氏が引用したリストのアイコンが、ユーザーのアイコンと一致している。

つまり、原口氏が引用したリストは、一個人がX上で、コミュニティノートが多く付いた国内のアカウントを集計したものだ。「SNS規制法の施行により消されるターゲットリスト」ではない。

コミュニティノートとは、Xの「コミュニティノートガイド」によると、「多くのユーザーが協力して、役に立つ背景情報をポストに追加し、他のユーザーへ十分な情報を提供するためのプログラム」だ。

情プラ法の中身は

原口氏が主張する「SNS規制法」とは、2025年4月1日に施行された「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(通称:情報流通プラットフォーム対処法、略称「情プラ法」)を指す(e-gov.「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」)。

情プラ法は、Google、LINEヤフー、Meta、TikTok、Xなどのネット上の大規模な情報プラットフォームを対象としており、目的は以下の通りだ(総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」)。

「インターネット上の違法・有害情報の流通が社会問題となっていることを踏まえ、『被害者救済』と発信者の『表現の自由』という重要な権利・利益のバランスに配慮しつつ、プラットフォーム事業者がインターネット上の権利侵害等への対処を適切に行うことができるようにする」

この目的を達成するために、以下の4つの対応がある(総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」)。

・プラットフォーム事業者などの損害賠償責任の制限
・発信者情報の開示請求
・発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き
・大規模プラットフォーム事業者への削除対応の迅速化及び運用状況の透明化

具体的には、大規模プラットフォーム事業者に対して、権利の侵害があった場合に投稿の削除の申出を受け付ける窓口を整備するほか、削除基準の策定と公表、削除の申出に対し7日以内に判断して被害者に通知することを求めている。

総務省は削除基準についてガイドラインを公表している。削除対象となり得る情報を「他人の権利を不当に侵害する情報」と「法令違反情報」の2つに分類される。

「他人の権利を不当に侵害する情報」は、個人の名誉やプライバシー、著作権などを侵害する情報が挙げられる。

「法令違反情報」は、わいせつ物や児童ポルノ、規制薬物の広告、詐欺の勧誘、犯罪実行者の募集といった、各種法令に違反する情報が例示されている。

ただし、これらの例はプラットフォーム事業者が削除基準を策定する際の参考として示されたもので、これら以外も該当し得る(以上、総務省「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第 26 条に関するガイドライン」)。

SNSで広がる懸念、総務省は否定

この法律に関連してSNS上では「政府によるSNS規制だ」「政府によって言論が弾圧される」などの情報が広がっている。SNS規制法と呼ばれる理由で、原口氏以外にも同様の主張は拡散している。

NHKがこれらの情報に関して総務省に取材し、担当者の言葉として以下のように伝えている。「今回の法律は権利の侵害や違法な情報に対する事業者の対応の義務を強化したもので、利用者側の表現の自由を侵害するものではない」(NHK「ネットのひぼう中傷 SNS事業者に迅速な対応求める改正法 施行」)。

判定

原口氏が引用した表は「SNS規制法」によって消されるターゲットのリストではなく、コミュニティノートが付与された国内アカウントのランキングだ。よって誤りと判定する。

出典・参考

X. “コミュニティノートへようこそ”. https://communitynotes.x.com/guide/ja/about/introduction, (閲覧日2025年6月2日).

電子政府の総合窓口e-Gov. “特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律”. https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000137, (閲覧日2025年6月2日).

総務省. “インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)”. https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html, (閲覧日2025年6月2日).

総務省. “情報流通プラットフォーム対処法の省令及びガイドラインに関する考え方”. 2023年12月. https://www.soumu.go.jp/main_content/000978031.pdf, (閲覧日2025年6月2日).

総務省. “特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン”. 2024年3月29日. https://www.soumu.go.jp/main_content/001001531.pdf, (閲覧日2025年6月2日).

日本放送協会. “ネットのひぼう中傷 SNS事業者に迅速な対応求める改正法 施行”. 2025年4月1日. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250401/k10014766431000.html, (閲覧日2025年6月2日).

検証:木山竣策、リサーチチーム
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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