小泉進次郎氏が選挙期間ではないのにシートベルトなしで箱乗り? 動画は2024年の選挙期間のもの【ファクトチェック】

小泉進次郎氏が選挙期間ではないのにシートベルトなしで箱乗り?  動画は2024年の選挙期間のもの【ファクトチェック】

自民党の小泉進次郎氏が選挙期間中ではないのにシートベルトをせずに車に乗っていたという動画が拡散しましたが、誤りです。動画は2024年の衆議院議員選挙中に撮影されたもので、選挙期間中、候補者はシートベルトを着用する義務が免除されるので違法にはなりません。ただし、車から体を乗り出す行為については危険視する自治体もあります。

検証対象

2025年7月1日、「小泉進次郎氏が選挙期間でもないのにシートベルトなしで箱乗りしている」と主張する動画つき投稿が拡散した。

動画には、小泉氏が車の後部座席の窓から上半身を出し、手を降る姿が映っている。

2025年7月1日現在、この投稿は1100件以上リポストされ、表示回数は120万回を超える。投稿について「ルール守れや」「牢屋行き」というコメントの一方で「まずいつの動画なのかを調べよう」という指摘もある。

検証過程

動画は2024年の選挙中に撮影

拡散した動画をGoogleレンズで検索すると、2024年10月19日にXに投稿された同じ動画が見つかる。2024年には衆議院議員選挙があり、10月15日に公示、27日が投開票日だった。小泉氏は神奈川11区から立候補して当選している。

動画は2024年の選挙期間中に撮影されたものだ。

選挙期間のシートベルト着用免除

自動車のシートベルトの着用については、道路交通法で、自動車の運転者は座席ベルト(シートベルト)をつけない人を乗せて運転してはならないと定められている(道路交通法 第71条の3)。

しかし、道路交通法施行令で、公職選挙法の適用を受ける候補者や、それに従事する者が選挙カーを運転する場合は、座席ベルト(シートベルト)に係る義務が免除されるとも定められている(道路交通法施行令 第26条の3の2 第1項第8号)。

つまり、選挙期間中に候補者がシートベルトを着用しないことは、違法ではない。

箱乗りは自治体ごとに対応

選挙活動における「箱(ハコ)乗り」とは、窓枠に腰掛けるなど、窓から大きく体を乗り出す行為のことだ。どこまで身体を乗り出せば「箱乗り」かという明確な定義がないため、取り締まりは難しい。立候補者説明会などで自粛を呼びかける自治体もある。

函館市では2019年の選挙時に立候補予定者説明会で「ハコ乗りについては交通違反でありしないでください」という呼びかけをしている(函館市“選挙カーのハコ乗りをたくさん見かけることについて”)。

高知市は、ウェブサイトで「走行中の選挙カーから手を出して振るのは危険なのでやめていただきたい」という市民の声があることを紹介。市側は選挙運動で自動車から手を出す等の行為を規制する法律がないことから指導が難しいとしつつ、「選挙管理委員会として慎むべき行為であると考えており、選挙前の立候補予定者説明会等の折に一考いただけるよう注意喚起を図りたい」と回答している(高知市“令和5年度 市民の声一覧(上半期公表用)”)。

判定

拡散した動画は2024年の衆議院議員選挙時のものだ。選挙期間中、選挙カーではシートベルトの着用が免除されているので誤りと判定した。ただし、「箱乗り」は自粛を求める自治体もある。

出典・参考

e‑Gov法令検索. “道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)”. 公布日 1960年6月25日. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-At_71_3-Pr_2 , (閲覧日 2025年7月1日).

e‑Gov法令検索. “道路交通法施行令”. 公布日 1960年10月11日. https://laws.e-gov.go.jp/law/335CO0000000270/#Mp-Ch_3-At_26 , (閲覧日 2025年7月1日).

函館市. “選挙カーのハコ乗りをたくさん見かけることについて”. 函館市市政ポータル(市民の声). 公開日 2019年5月7日(受付:2019年4月19日). https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/citizensvoice/docs/2019050900015/ , (閲覧日 2025年7月1日).

高知市. “令和5年度 市民の声一覧(上半期公表用)”. 高知市市長公室 市民の声. 公開日 不明(受付:2023年4月). https://www.city.kochi.kochi.jp/uploaded/attachment/141493.pdf , (閲覧日 2025年7月1日).

検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

自民党・小泉進次郎氏の陣営が規則に違反してチラシ配り? 総裁選管「違反ではない」【ファクトチェック】

自民党・小泉進次郎氏の陣営が規則に違反してチラシ配り? 総裁選管「違反ではない」【ファクトチェック】

自民党総裁選に立候補している小泉進次郎農林水産相の陣営が、総裁選の規則に違反してチラシ配りをしているという投稿が拡散しましたが、誤りです。自民党・総裁選挙管理委員会は日本ファクトチェックセンター(JFC)の取材に対し、違反ではないと回答しています。 検証対象 2025年9月24日、「チラシ配りは自民党の総裁選挙規則違反にあたりますね。ルールを守って正々堂々と戦いましょう。前回、高市早苗陣営のリーフレットを問題視した小泉陣営の #平将明 衆議院議員、どう思われますか?」という投稿がXで拡散した。 9月30日現在、投稿は1.4万回以上リポストされ、表示は259.3万件を超える。 「総裁選のチラシ配りって違反なんですね!」「これってどこに通報したら良い?」や「前回、高市陣営が問題視されたのはビラを“郵送”で全国に送ったからじゃなかったけ」などの指摘もある。 検証過程 小泉氏事務所「規則違反には全く該当しません」 拡散した投稿の添付画像には、小泉氏の顔写真と名前、右上に「総裁選2025」という文字が入ったチラシのようなものが写っている。どこで誰が配ってい

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
小池都知事「学歴が誤っていたので辞任いたします」と発言? そのような発言はない【ファクトチェック】

小池都知事「学歴が誤っていたので辞任いたします」と発言? そのような発言はない【ファクトチェック】

東京都・小池百合子知事が「自身の学歴が誤っていたので辞任する」と表明したかのような動画付きの投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した動画にそのような発言はなく、発表も報道もありません。 検証対象 2025年9月21日、「小池百合子都知事「わたくしの学歴が誤情報でありましたので、辞任いたします」という文言が付いた動画がXで拡散した。 9月30日現在、投稿は1280回以上リポストされ、表示は378.5万回を超える。 投稿には「マジで辞めて欲しい」「学歴詐称は公選法違反」や「辞任なんて一言も言ってないじゃないですか」という指摘もある。 検証過程 動画に該当する発言はない 拡散した動画は1分52秒。右上に「令和7年9月19日」、左下に「小池知事記者会見」のテロップがある。 動画では、都政への不満や知事の学歴への疑念に言及するデモや都庁への問い合わせをどう受け止めるかという記者の質問に対して、小池知事が「都が移民を促進するという誤情報につながっている」「正しい情報をお伝えするということを引き続き伝えていきたい」などと回答している。 しかし、「学歴が誤情

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
税金の使用透明度指数で日本は独裁国なみ? データや解釈に誤解【ファクトチェック】

税金の使用透明度指数で日本は独裁国なみ? データや解釈に誤解【ファクトチェック】

「税金の使用透明度指数で日本は独裁国なみ」という情報が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。この指数が「税金の使い方の透明性」を示すものという誤解が広がりましたが「税優遇措置に関する透明性」の指数です。また、拡散した表は日本が94位ですが、最新の2024年には73位に更新されています。 検証対象 2025年9月15日、「税金の使用透明度指数で日本が独裁国なみということだけれど、そりゃそうでしょうよとしか。お隣の国はすっかり先進国で透明度ランキングでもトップというえげつない差」という投稿が拡散した。 9月17日現在、この投稿は3800件以上リポストされ、表示回数は148万回を超える。投稿について「税金透明30%、暴動起きるくらいのレベル」「独裁国家レベルの不透明度」というコメントの一方で「そのサイト引用して大丈夫ですかね」という指摘もある。 検証過程 引用元の記事は 拡散した投稿には、まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」の記事が添付されている。記事を確認すると、商工組合「関東塗料工業組合」が「世界租税支出透明性指数(Global Tax

By 木山竣策
小池都知事がGoogleに個人情報を提供? 東京都「共有する可能性があるのはオープンデータなど、個人情報は提供しない」【ファクトチェック】

小池都知事がGoogleに個人情報を提供? 東京都「共有する可能性があるのはオープンデータなど、個人情報は提供しない」【ファクトチェック】

小池百合子都知事がGoogleに個人情報を提供したという情報が拡散しましたが、根拠不明です。拡散した情報には都が個人情報を提供するという主張の根拠が示されておらず、東京都は「既にオープンデータで公表されている内容や、都が取り扱う情報の種類等をグーグル合同会社に共有する可能性」はあるとしたうえで「個人を特定できる情報が含まれることはない」と説明しています。 検証対象 2025年9月18日、「ファラオ小池百合子さん、『行政のDX推進』という建前で日本Google社に東京都民の住民票や税務申告などの個人情報を提供してしまう」という投稿が拡散した。 9月22日現在、この投稿は1800件以上リポストされ、表示回数は6.5万回を超える。投稿について「えっホント」「なにしてくれてんの」というコメントの一方で、「個人情報を提供ってどこに書いてる?」という指摘もある。 検証過程 拡散した投稿は山陽新聞の「DXで東京都がグーグルと協定 小池都知事『課題解決に期待』」という記事を添付している。記事には、東京都が行政のDX推進のため、9月16日にIT大手グーグルの日本法人と連

By 木山竣策

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は10月18日(土)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1018.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)