都議選・八王子で開票に不正? 出口調査と投票結果は異なる【ファクトチェック】

2025年6月22日に投開票があった東京都議会議員選挙の八王子選挙区で、参政党の候補者が落選したのは、不正があったからではないか、という主張がXで拡散しましたが、誤りです。根拠とされている情報は選挙で拡散しがちなもので、市選挙管理委員会は「不正はなかった」と説明しています。
検証対象
2025年6月27日、「東京都議選八王子で不正開票疑惑」という内容の動画が拡散した。

2025年6月30日現在、投稿は7700回以上リポストされ、表示は87万件を超える。投稿には、「徹底的に調査してほしい」や「昔だったらそんな事ないだろうだが今はそうかもしれないなあ」などのほか「八王子市の無効投票率は他の地域と比較して特に高いわけではない」というコミュニティーノートの指摘もある。
検証過程
投稿された動画は1分8秒、八王子選挙区で参政党候補者の與倉さゆり氏が落選したのは、不正開票によるものだと指摘している。
根拠は3つ。出口調査の結果と差があること、開票作業で得票数が長時間停止したこと、2598票もの無効票があったこと、を挙げている。
出口調査の結果と違うから不正?
出口調査と開票結果が異なることは、不正の根拠となるのか。
出口調査とは、選挙当日、テレビ局や新聞社が、ライバル社に先駆けて、誰が当選確実かをいち早く報じるために、投票所の出口で有権者へ誰に投票したかを聞く調査だ(NHK、朝日新聞)。
NHKの場合、投票日の出口調査の結果をウェブサイトで公表している。八王子市は定数5で、確かに参政党の與倉氏は出口調査で4位だ。ただし、東京都選挙管理委員会の開票結果によると、得票数は7位で最終的に落選している。(NHK”都議選開票速報 投票日出口調査”)。
ただし、出口調査に本当のことを答えない人もいれば、回答を拒む人もいる。出口調査と開票結果は異なることが一般的だ。
各報道機関はこれまでの出口調査の蓄積から、それぞれの投票所で出口調査と実際の開票結果にどれだけ差が出るかの傾向を把握しており、出口調査以外にも、陣営の取材や投票率など様々な要因を加えて実際の得票数を予測する。
またNHKは、今回の出口調査について「調査は都内492の投票所で投票を終えた有権者7万1638人を対象に行い、57.5%にあたる4万1217人から回答を得ました。一方、前日までに有権者のおよそ15.3%が期日前投票を済ませていますが、これらの方々は調査結果に含まれていません」とも書いている。
出口調査と開票結果に関わる疑惑について、日本ファクトチェックセンター(JFC)は検証記事を出したことがある。
JFC”大阪府知事選の当確が早すぎる、不正選挙?ゼロ票打ちによるもの【ファクトチェック】”
開票作業で得票数が長時間停止したから不正?
拡散した動画は「開票速報で與倉氏の得票数が特定の段階で長時間停止していたという不審な動き」を指摘している。
しかし、開票作業は、投票箱から票を出し、投票先ごとに職員が分類し、機械で票を数え、立会人が票を確認するという順番で進む。文字が読みにくいケースや、字の書き間違いなどの判断が難しいものは「有効・無効」を含めて審査される。
一連の作業の途中で、ある程度の票数が溜まるごとに各候補者の得票数を発表するため、得票数が一気にまとまって増えるのは一般的だ。
「得票数が特定の段階で長時間停止していた」というだけでは不正の根拠にならない。
JFCでは過去にも同じ疑惑に関する検証記事を出している。
JFC”アルフィヤ候補に1分で6000票も、不正疑惑?有効票の確認によるもので開票速報では一般的【ファクトチェック】”
八王子市の選挙管理委員会は、JFCの取材に対し次のように回答した。
「八王子市では9時30分から30分ごとに各候補者の得票数を中間速報として公表している。各候補者の票を500票ごとに取りまとめて速報を出している。序盤は票の束が早く積みあがるため、集計が早く進むが、終盤になると開票する票がなくなってくるので、時間がかかる。23:30の最後の中間発表では、5人の候補者の得票数が0のままだった。開票が止まって見えるのはそうした事情だ」
八王子市の無効投票率は都内最低
拡散した動画は三つ目の根拠に「2598票もの無効票があった」と主張している。
無効票とは、投票用紙に、候補者でない人の氏名を書いたり、候補者の指名以外に「〇〇さんへ」「〇〇さんガンバレ」などと、ほかのことを書いた場合のことだ。こういったケースは無効となる。
東京都選挙管理委員会は無効票の数など、開票結果の詳細を発表しており、この2598票という数字は事実だ(都選管”東京都議会議員選挙 開票結果内訳”)。
ただし、JFCが今回の都議選の無効投票率を調べたところ、全選挙区の平均1.58%で、八王子市は1.14%で、杉並区と並んで最も低かった。平均よりも低い割合にとどまっているため、これが不正開票の根拠とは言えない。
また、八王子市の選挙管理委員会は「八王子市は62自治体の中で杉並区と並び、1.14%で最も少なかった。2021年の都議選では、無効票が3047票だったが、その時よりも無効票はさらに少なかった。不正はなかった」と話している。
判定
「東京都議選八王子で不正開票」という情報が拡散したが、誤り。根拠とされている3つの疑惑はいずれも不正を示す根拠になっていない。
出典・参考
NHK.”都議選2025開票速報 投票日出口調査”.https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/togisen/2025/exitpoll/, (閲覧日2025年7月1日)
NHK 首都圏 NEWS WEB.”東京都議選 投票行動や政治意識を探る「出口調査」”.06月22日.https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20250622/1000118801.html, (閲覧日2025年7月1日)
朝日新聞.”都議選、参政と再生の道に投票したのはどんな人たちか 朝日出口調査”.https://digital.asahi.com/articles/AST6W1HJQT6WUZPS03PM.html, 2025年6月30日. (閲覧日2025年7月1日)
東京都選挙管理委員会.”東京都議会議員選挙 開票結果内訳”.https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/senkyo/r07togi_kaihyo_uchiwake, 6月23日. (閲覧日2025年7月1日).
検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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