立憲民主・野田代表「木更津・習志野・津田沼をナイジェリア人受け入れ特区に」と発言? そのような発言はない【ファクトチェック】

立憲民主・野田代表「木更津・習志野・津田沼をナイジェリア人受け入れ特区に」と発言? そのような発言はない【ファクトチェック】

立憲民主党・野田佳彦代表が「我々は多文化共生社会を作ります。木更津だけではありません。習志野と津田沼をナイジェリア人特別受け入れ特区にします」と発言したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した動画で野田氏は「我々は多文化共生社会を作りたいと思っています」と発言していますが、ナイジェリア人の受け入れ特区を作るとは言っていません。

検証対象

2025年9月6日、「野田佳彦 多文化共生党党首『我々は他文化共生社会を作ります。木更津だけではありません。習志野と津田沼をナイジェリア人特別受け入れ特区にします。』」という文言付きの野田氏の演説動画がXで拡散した。

9月11日現在、投稿は7100回以上リポストされ、表示は211万回を超える。

投稿には「共生なんて無理」「これが立憲。立憲を落選させなければいけません‼️千葉県は破壊される」や、「『多様性』とか『多文化共生』という言葉が悪用され始めましたね」という指摘もある。

検証過程

野田氏の発言にない文言を付け足し

拡散した37秒の動画を書きおこすと以下の通りだ。

「我々は多文化共生社会を作りたいと思っています。外国の方と共生できるだけではありません。多文化共生というのは性別の差別をなくしていこう。男性女性の差別をなくしていこう。そして当然今国籍の壁もなくしていこう。あるいは価値観の相違を認めていこう。年齢差で差別することもやめよう。 そういうことが 多文化共生社会なんです」

動画はワンカットで、改ざんされた様子はない。

野田氏は「我々は多文化共生社会を作りたいと思っています」と言っているが、「木更津だけではありません。習志野と津田沼をナイジェリア人特別受け入れ特区にします」とは言っていない。

元動画は参院選の応援演説

「立憲民主党 野田代表 多文化共生」でGoogle検索すると、立憲民主党の公式サイトの記事が表示される(立憲民主党”「多文化共生、多様性を尊重する社会をつくりたい」と野田代表が訴え”)。

記事は、野田氏が7月20日投開票の参院選期間中の7月12日に仙台市内で演説し、多文化共生や多様性の尊重を訴えたと書いている。

記事には1分38秒の野田氏の演説動画がついている。拡散した動画と画角などは同じだが、短いカットを重ねるように編集しており、野田氏の発言全体を確認することはできない。

YouTubeで「2025年7月12日 立憲民主党 野田代表 多文化共生 演説 仙台」で検索すると、立憲民主党・石垣のりこ氏のチャンネルに7月19日に公開された野田氏の演説が表示される(石垣のりこ”2025年7月12日 仙台駅東口 野田佳彦立憲民主党代表”)。

こちらの動画は16分47秒で、7月12日の仙台での野田氏による応援演説が映っている。背後に映った看板や野田氏の服装などから、拡散した動画と同じ場面を映した動画だと分かる。

7分34秒から8分11秒が、拡散した動画と同じ部分だ。拡散した動画はカットされていない。演説中、木更津や習志野、津田沼という地名も「ナイジェリア人特別受け入れ特区」という言葉も言っていない。

また、立憲民主党の公式サイトやX、野田氏の公式サイトやXにも、そのような発言はない。野田氏がこのような発言をしたという報道もない。

判定

立憲民主党・野田代表が「我々は他文化共生社会を作ります。木更津だけではありません。習志野と津田沼をナイジェリア人特別受け入れ特区にします」と発言したかのような投稿が拡散した。拡散した動画で、野田氏は「我々は多文化共生社会を作りたいと思っています」と発言しているが、ナイジェリア人の受け入れ特区を作るとは言っていない。SNSや公式サイトなどでそのような発信をしたことも確認できず、報道もない。よって誤りと判定する。

出典・参考

立憲民主党.”「多文化共生、多様性を尊重する社会をつくりたい」と野田代表が訴え”.2025年7月13日.https://cdp-japan.jp/news/20250713_9483, (閲覧日2025年9月11日).
石垣のりこ.”2025年7月12日 仙台駅東口 野田佳彦立憲民主党代表”. 2025年7月19日.https://youtu.be/85Lg9pNYyOY?si=Yw1HnmDGux-uB9fG, (閲覧日2025年9月11日).

検証:根津綾子
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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