イスラエルのネタニヤフ首相がドイツに逃亡? 政府専用機が飛行【ファクトチェック】
2026年2月28日に始まったアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃に関連して、イスラエルのネタニヤフ首相がドイツに逃亡したという投稿が拡散しましたが、誤りです。28日にイスラエルの空軍基地を飛び立った政府専用機がドイツの空港に着陸したことは事実ですが、ネタニヤフ首相が乗っていたという情報はなく、イスラエル首相府は3月1日にイスラエルで撮ったとされる首相の映像を公開しています。
検証対象
拡散した言説
2026年3月2日、イスラエルのネタニヤフ首相がドイツに逃亡したという趣旨の投稿がXで拡散した。3月5日現在、投稿は削除されている。

検証する理由
3月4日現在、投稿は6200回以上リポストされ、表示は129万件を超える。同様の投稿は海外で拡散し、日本にも広がった(例1,2,)。
検証過程
アメリカとイスラエルは2月28日、イランに対して攻撃を開始。イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害した。これに対して、イランも報復攻撃をして、中東の紛争は激化している(BBC”「最も激しい攻撃はこれから」とアメリカ イランも報復続行、ホルムズ海峡を封鎖と”2026年3月3日、朝日新聞”イラン最高指導者のハメネイ師殺害 米・イスラエル、執務中に攻撃”2026年3月1日)。
2月28日にイスラエル政府専用機がドイツに到着
ネタニヤフ首相がドイツに逃亡したという情報の根拠として、例2の投稿は、航空機のリアルタイム追跡サービスFlightradar24の飛行履歴のスクリーンショットを添付している。

スクリーンショットは、2026年2月28日14:08にイスラエルのベエルシェバ・ネバティム空軍基地を出発し、同日21:29にドイツのベルリン・ブランデンブルグ国際空港に到着したことを示している(いずれも現地時間)。
Flightradar24の記録を調べると、同日同時刻にBeersheba(VTM)からBerlin(BER)に到着したのは、イスラエル政府専用機「Wing of Zion(シオンの翼)」だと分かる。
つまり、2月28日に、イスラエル政府専用機がイスラエルの空軍基地からドイツの空港に到着したことは事実だ。
ネタニヤフ首相が搭乗という情報はない
しかし、ネタニヤフ首相がこの飛行機に乗っていたことを示す情報はない。逆にネタニヤフ首相は、自身の公式Xアカウントで、3月2日にテルアビブにいることを示す投稿をしている。
「今日、テルアビブのキリアでの安全保障討論会に参加し、国防相、参謀総長、モサド長官と一緒です」(Benjamin Netanyahu - בנימין נתניהו @netanyahu 2026年3月2日)
投稿には、4人が会議場で話している写真が添付してある。
キリアには、イスラエル国防軍と国防省が入る軍司令部がある(CNN”イラン報復攻撃、ミサイル着弾の瞬間とらえた映像 テルアビブの重要軍事施設付近”2025年6月15日)。
また、イスラエル首相府は3月1日、ネタニヤフ首相がキリアで「我々は、暴君ハメネイと、抑圧的な体制の数十名に及ぶ高官を排除した。我が軍は現在、テヘランの中枢に対し激しさを増しながら攻撃を加えており、今後数日間でさらに攻勢を強める構えだ」と述べたと発信している(Prime Minister’s Office”Statement by Prime Minister Netanyahu”2026年3月1日)。
この様子は、動画でも公開され、ネタニヤフ首相はヘブライ語で同じ内容を話している(IsraeliPM”ראש הממשלה בנימין נתניהו על גג הקריה בתל אביב: "חיסלנו את הרודן חמינאי ועשרות מבכירי משטר הדיכוי."”)。
動画の撮影日は不明で、投稿日は3月2日だ。
ロイター通信は3月2日配信の記事で、ドイツ政府筋の情報として、イスラエルは政府専用機を、安全確保のためにドイツ・ブランデンブルグ国際空港に移動し、駐機させたと報じた。イスラエル政府によって事前に登録されていた飛行で、機内にいたのは乗員のみだったと伝えている(Reuters.”Israeli government plane parked in Berlin for safety”.)。
Euronewsも「誤り、ネタニヤフはイラン戦争中にイスラエルを逃げ出してドイツに行っていない」という検証記事を3月3日に公開している。その中でネタニヤフ首相が人道に対する罪と戦争犯罪で、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されていることに触れ、「ICC加盟国のドイツはネタニヤフ首相が来たら逮捕する法的義務を負う」と指摘している。
3月4日現在、ネタニヤフ首相がドイツを訪問したり、逮捕されたりしたという情報はない。
判定
ネタニヤフ首相がドイツに逃亡したという投稿が拡散した。フライトレーダーの記録から、2月28日にイスラエル政府専用機がイスラエルの空軍基地からドイツの空港に到着したことは事実だが、ネタニヤフ首相が乗っていたという情報はない。一方、3月1日にテルアビブで撮ったとされるネタニヤフ首相の映像が公開されている。これらの情報を総合的に判断して、誤りと判定する。
あとがき
「ネタニヤフ首相がドイツに逃亡した」という主張の根拠として示されたのは、イスラエル政府専用機がドイツに到着したことを示すフライトレコーダーの記録だけで、ネタニヤフ首相が乗っていたことを示す証拠はありません。
他方、ネタニヤフ首相がドイツに行っていないことを示すのは、「シオンの翼にネタニヤフ首相は乗っていなかった」というドイツ当局筋の情報と、当事者であるイスラエル首相府が「3月1日に撮影したものだ」と公表した動画と画像です。証拠としてはやや客観性を欠くため、判定を「根拠不明」とするか「誤り」とするかで、編集部内でも意見が割れました。
しかし、ネタニヤフ首相がICC加盟国のドイツに行けば、ドイツ政府には首相を逮捕する法的義務が生じる状況で、首相が国際的な批判が大きい攻撃を続けつつ、あえてドイツを訪れたと考えるのも現実的ではありません。よって、総合的に「誤り」と判定しました。
出典・参考
BBC”「最も激しい攻撃はこれから」とアメリカ イランも報復続行、ホルムズ海峡を封鎖と”2026年3月3日.https://www.bbc.com/japanese/articles/c2e41mgjxpeo,
朝日新聞”イラン最高指導者のハメネイ師殺害 米・イスラエル、執務中に攻撃”2026年3月1日.https://digital.asahi.com/articles/ASV2X73V9V2XUHBI003M.html?iref=com_topics_e956a437-68cb-474e-8e5d-61a96c3636e6_timeline_article_28,
Flightradar24. https://www.flightradar24.com/,
Flightradar24. Beersheba Nevatim Airbase .https://www.flightradar24.com/data/airports/vtm,
Flightradar24. Berlin Brandenburg Airport.https://www.flightradar24.com/data/airports/ber,
Flightradar24.”Playback of Flight”.https://www.flightradar24.com/data/aircraft/4x-isr#3e88be64,
Benjamin Netanyahu - בנימין נתניהו @netanyahu 2026年3月2日.https://www.flightradar24.com/data/aircraft/4x-isr#3e88be64,
CNN”イラン報復攻撃、ミサイル着弾の瞬間とらえた映像 テルアビブの重要軍事施設付近”.2025年6月15日.https://www.cnn.co.jp/world/35234267.html,
Prime Minister’s Office”Statement by Prime Minister Netanyahu”2026年3月1日.https://www.gov.il/en/pages/spoke-statement010326,
IsraeliPM”ראש הממשלה בנימין נתניהו על גג הקריה בתל אביב: "חיסלנו את הרודן חמינאי ועשרות מבכירי משטר הדיכוי."”.https://youtu.be/iC3O3C6CvTs?si=4CjFnf9s2aCAu1eC,
Reuters.”Israeli government plane parked in Berlin for safety”.https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/israeli-government-plane-parked-berlin-safety-2026-03-01/,
Euronews”No, Netanyahu did not flee Israel for Berlin amid Iran war”.https://www.euronews.com/my-europe/2026/03/03/no-netanyahu-did-not-flee-israel-for-berlin-amid-iran-war,
検証:根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔
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