トランプ大統領就任100日 発言に多数の誤り 【ファクトチェック】

2025年4月29日、アメリカ大統領就任100日を迎えたトランプ氏は支持者を前に演説し「史上最高の最初の100日」などと成果をアピールしました。この演説を含め、トランプ氏のこれまでの言説には、多くの誤りや根拠不明の主張が含まれています。100日演説を中心にファクトチェックしました。
就任100日演説で成果を強調 発言を検証
トランプ氏は2025年4月29日、中西部ミシガン州で就任100日にあわせて演説。冒頭で「アメリカ史上もっとも成功した政権の最初の100日になった」と述べ、自身の成果を強調した。

しかし、この演説には、誤りや不正確な内容が多数含まれていると、アメリカ国内外の報道やファクトチェック機関が指摘している(Politifact、BBC、アル・ジャジーラ、SkyNews)。
主な誤りや根拠不明の主張をテーマごとにまとめた。
「ガソリン価格 多くの州で1.98ドルに」は誤り 全米平均3.1ドル
トランプ氏は、就任100日演説で、自身が大統領に就任してから「ガソリン価格はかなり下がっている」「多くの州で1ガロン1.98ドルになった」と述べた(動画34:32~34:48)。
米国エネルギー情報局(EIA)によると、全米のレギュラーガソリンの平均価格は2025年4月28日現在、1ガロン3.133ドル。トランプ氏が大統領に就任した1月20日は3.109ドルだった。この3か月間、ガソリン価格は上下を繰り返しながらも上昇傾向にある(EIA「Gasoline and Diesel Fuel Update」)。
よって、トランプ氏の「ガソリン価格がかなり下がった」は誤りと判定する。
「3か月間で35万人分の雇用作った」 数字は正しいが前年同期比で低調
トランプ氏は「3カ月間で35万人分の雇用を創出した」と演説で述べた(動画37:19~37:24)。
米労働統計局(BLS)の2025年1月の前月からの雇用増加数は11万1,000人。2月は10万2,000人、3月は18万5,000人だ(ただし2,3月は速報値)。2・3月の合計が28万7,000人増。1月は、トランプ氏が大統領に就任したのが20日なので、2、3月分の合計値に1月分を加えると概ねトランプ氏の発言に近い数字となる。(BLS「雇用統計調査による雇用、労働時間、賃金(全国)」)。
よって、「3か月で35万人の雇用を作った」というのは、概ね正しいと言える。
しかし、バイデン政権下だった昨年同時期と比較するとむしろ低調だ。2024年2月は22万2,000人、同3月24万6,000人。2・3月の合計は46万8,000人となり、第2次トランプ政権以降のデータよりも多かった(BLS「雇用統計調査による雇用、労働時間、賃金(全国)」)。
よって、トランプ氏の主張は数字上は正しいが、過去の同時期と比較すると、その成果は相対的に低い。
「アメリカはウクライナに3500億ドル援助した」は根拠不明
4月29日の就任100日演説以外でも、トランプ氏はたびたび明確に間違っていたり、根拠不明だったりする主張を繰り返している。
トランプ氏は2025年2月20日、自身のSNSで「アメリカがウクライナに対して戦時援助として『3500億ドル』を提供した」と主張した。
ドイツのシンクタンクキール世界経済研究所によると、米国がウクライナに対して表明した支援の総額は1146億3200万ユーロで、確かに他国と比べて、支援額は最も多い。その内訳は、人道支援34億1800万ユーロ、金融支援465億9700万ユーロ、軍事支援646億1700万ユーロだ(キール世界経済研究所「Ukraine Support Tracker」 2025年5月7日現在)。
ただし、トランプ氏の発言時のレート(1ユーロ約1.04ドル)に換算すると、米国のウクライナに対する支援は総額で約1192億ドル。トランプ氏の主張する3500億ドルには遠く及ばない。集計方法によって異なる数字になることはありうるが、トランプ氏の言う「3500億ドル」は根拠不明だ。
CNNも、2025年2月19日の記事でキール研究所のデータを理由に、トランプ氏の3500億ドル発言を根拠不明と判定している(CNN Fact check: Trump’s barrage of lies about Zelensky and Ukraine)。
「対中貿易赤字1兆ドル」は誤り 約2633億ドル
トランプ氏は2025年2月21日のFox News Radioのインタビューで「アメリカの対中貿易赤字は1兆ドルを超えている」と述べた。また、翌22日にメリーランド州で開催された保守政治活動協議会(CPAC)年次総会に出席した際にも、演説で同じ主張を繰り返した。
しかし、連邦政府の統計によると、2024年の米中間の物品・サービス貿易赤字は約2633億ドル。トランプ氏の主張する額にはほど遠い(U.S. Trade in Goods and Services by Selected Countries and Areas p40)。
よって、これも誤りと判定する。
JFCは過去にも多数の検証で誤りと判定
トランプ氏の発言は、日本ファクトチェックセンター(JFC)でも多数検証し、誤りと判定しています。
日本は車の安全試験でボンネットにボウリング球を落とす? 過去に否定された誤情報【ファクトチェック】

日本がアメリカのコメに700%の関税をかけている? 試算では200~400%台【ファクトチェック】

また、トランプ氏の発言は、まとめサイトなどが誤った形で紹介することも多く、トランプ氏の発言だとして拡散した言説についても多数検証しています。
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あとがき
トランプ氏は2024年の大統領選で「ウクライナ戦争を就任初日に止める」と発言していました。しかし、2025年4月22日の米メディアTIMEによるインタビューで、その発言について聞かれるとこう答えました。
「もちろん、私がそう言ったのは冗談で言ったことで、人々もそれはわかっている」(TIME「トランプ大統領就任100日インタビュー全文」)
トランプ氏の発言には誤りや根拠不明の主張が多いことは、繰り返し指摘されています。選挙での発言を後から「冗談だ。人々もわかっている」というような言動が広がれば、民主主義の混迷は増します。客観的で信頼性の高い情報の確認は不可欠です。
検証:根津綾子
編集:古田大輔、藤森かもめ
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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