参政・神谷氏「男女共同参画のせいで少子化に」? 出生率低下は男女共同参画基本法よりはるか前から【#参院選ファクトチェック】

2025年参院選の街頭演説で、参政党の神谷代表が「日本は行き過ぎた男女共同参画のせいで少子化になった」という趣旨の主張をしましたが、誤りです。出生率の下降は男女共同参画基本法が施行された1999年よりはるか前の50年代から始まり、施行後はむしろ微増。男女共同参画が日本より進んだ北欧諸国は日本よりも出生率が高いです。
検証対象
2025年参院選において、参政党・神谷宗幣代表が7月3日の街頭演説で「今まで間違えたんですよ、男女共同参画とか」「日本の人口を維持していこうと思ったら、若い女性に、子どもを産みたいなとか、子どもを産んだほうが安心して暮らせるなという社会状況をつくらないといけないのに、働け、働けってやりすぎちゃった」などと述べた。

東京新聞は、神谷氏の主張について専門家の見解を紹介し「間違い」と報じている(東京新聞”「間違いです」男女共同参画が少子化を進めたとの一部の主張 データと今に至る経緯を治部れんげ准教授が解説”)。
検証過程
神谷氏の主張
このときの神谷氏の街頭演説は約16分間。少子化と男女共同参画に関する部分を以下に引用する。
(引用ここから)
今まで間違えたんですよ、男女共同参画とか。もちろん女性の社会進出はいいことです。どんどん、働いてもらえば結構。けれども、子どもを産めるのも若い女性しかいないわけですよ。
これ言うと差別だという人がいますけど違います。現実です。いいですか、男性や、申し訳ないけど、高齢の女性は子どもが産めない。だから、日本の人口を維持していこうと思ったら、若い女性に、子どもを産みたいなとか、子どもを産んだほうが安心して暮らせるなという社会状況をつくらないといけないのに、働け、働けってやりすぎちゃったわけですよ。やりすぎたんです。(引用以上 NHK”【演説全文】参政 神谷氏 “日本人ファーストで””)
男女共同参画とは
内閣府のウェブサイトによると、男女共同参画社会の定義は次の通りだ。
「男女共同参画社会とは、『男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会』です。(男女共同参画社会基本法第2条)」(以上、内閣府”男女共同参画社会とは”)
サイトには「仕事と家庭の両立支援環境が整い、男性の家庭への参画も進むことによって、男女がともに子育てや教育に参加」という記載もある。
つまり、男女共同参画社会は、両性に社会で活躍する機会を認め、責任を共に担うことを目指すもので、神谷氏が主張するような、女性の労働のみを推進する内容ではない。
出生率の下降は男女共同参画基本法よりはるか前から
神谷氏は「男女共同参画で少子化が進んだ」と主張する。しかし、日本の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに出産する人数)の推移をみると、男女共同参画基本法が施行された1999年6月よりもずっと前の1950年の3.65から急激な減少が始まっている。
2005年に1.26で底を打ってからは、緩やかに微増傾向で、2015年には1.45まで回復した(以上、厚労省”図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移”)。

男女共同参画基本法が施行された後、2000年から2005年は減少傾向だったが、2005年から2015年までの10年は、増加傾向だった。つまり、「男女共同参画のせいで少子化になった」とは言えない。
WEFジェンダーギャップ指数トップ3国の出生率と比較
世界経済フォーラム(WEF)は、毎年、各国のジェンダー・ギャップ指数を算出し、ランキングを発表している(WEF”Global Gender Gap Report 2025”)。
日本でも内閣府・男女共同参画のウェブサイトや、報道などで頻繁に紹介される指数だ(内閣府”男女共同参画に関する国際的な指数”、朝日新聞”【ジェンダーギャップ指数】日本、2025年は世界118位で前年と同じ 政治分野は後退”、読売新聞”【ジェンダーギャップ2025】ランキング一覧表…日本は韓国や中国下回る118位”)。
6月に発表された2025年版のデータによると、日本は148カ国中118位でG7中最下位だ。
1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェーの出生率と日本の合計特殊出生率を比較する。EU統計局Eurostatの調査によると、最新の2023年のデータで、3か国の合計特殊出生率は次の通りだ。
アイスランド1.55
フィンランド1.26
ノルウェー1.40
(以上、Eurostat”Total fertility rate”)
厚労省によると、日本の2023年の合計特殊出生率は1.20だ(厚生労働省”令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況”)。
「行き過ぎた男女共同参画のせいで少子化になった」という言説が正しいなら、男女共同参画がさらに進んだ国では日本よりも出生率が低くなると考えられるが、実際には日本よりも高い。
判定
2025年参院選の街頭演説で、参政党の神谷代表が「日本は行き過ぎた男女共同参画のせいで少子化になった」という趣旨の主張をした。出生率の下降は男女共同参画基本法が施行された1999年よりはるか前の50年代から始まっており、施行後はむしろ微増傾向だ。また、男女平等が進んでいるジェンダーギャップ指数トップ3か国の合計特殊出生率は、いずれも日本より高い。よって、誤りと判定する。
出典・参考
京新聞.“「間違いです」男女共同参画が少子化を進めたとの一部の主張 データと今に至る経緯を治部れんげ准教授が解説”. https://www.tokyo-np.co.jp/article/421495?fbclid=IwY2xjawLmtu5leHRuA2FlbQIxMQBicmlkETFZcDdQN2tQcnpiSENmQVdNAR66nbxyHIM4iePbZy1Ho3CNmLJd9gaGJ4xojhz-EEaa9v3vutgFs9xOxzjuPA_aem__nBWDIVLfZwmyaM4qBSxqQ, (2025年7月22日閲覧).
NHK. “【演説全文】参政 神谷氏 “日本人ファーストで””. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250703/k10014851971000.html, (2025年7月22日閲覧).
内閣府男女共同参画局. “男女共同参画社会とは”.
https://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html, (2025年7月22日閲覧).
厚生労働省. “図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移”. https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html,
(2025年7月22日閲覧).
World Economic Forum. “Global Gender Gap Report 2025”.
https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2025, (2025年7月22日閲覧).
内閣府. “男女共同参画に関する国際的な指数”. 内閣府男女共同参画局.
https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html, (2025年7月22日閲覧).
朝日新聞. “【ジェンダーギャップ指数】日本、2025年は世界118位で前年と同じ 政治分野は後退”. 朝日新聞デジタル.
https://www.asahi.com/sdgs/article/15836643, (2025年7月22日閲覧).
読売新聞. “【ジェンダーギャップ2025】ランキング一覧表…日本は韓国や中国下回る118位”. https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20250612-OYT8T50082/, (2025年7月22日閲覧).
Eurostat. “Total fertility rate”.
https://ec.europa.eu/eurostat/databrowser/view/tps00199/default/table?lang=en
, (2025年7月22日閲覧).
厚生労働省. “令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況”.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5.pdf, (2025年7月22日閲覧).
検証:根津綾子
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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