京都のホテル代が暴落? 首相の台湾有事発言後も微増【ファクトチェック】(更新あり)

京都のホテル代が暴落? 首相の台湾有事発言後も微増【ファクトチェック】(更新あり)

高市早苗首相の台湾有事発言後、中国からの観光客のキャンセルが相次いでいると話題になる中で、「京都市内のホテル代が暴落している」という投稿が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。京都市観光協会のデータによれば、高市首相発言前の7・8月の平均客室単価は前年同月比で約4~6%下回りましたが、9,10月は増加。発言後に中国政府が日本への渡航自粛を呼び掛けた11月14日以後も、京都市内の年内のホテルの予約販売料金は前年同期比でやや高くなっています。観光客の動向は流動的なため、今後、大きく変わった場合は追記します。

検証対象

拡散した言説

2025年11月23日、「京都のホテルの宿泊代、暴落です。」という画像付きの投稿がXで拡散した。

検証する理由

12月1日現在、投稿は3700回以上リポストされ、表示は339万件を超える。

投稿には「どーせ検索条件を1万円以下にしてんだろ」「11月後半からは例年こんなもんですよ」などの指摘もあるが、「京都の有名どころのホテルが軒並み民宿並みの低料金に。貧乏人応援の物凄い経済効果が高市政権で成し遂げられたね」「良かったじゃねえか!これが本来のあるべき姿だ」など、同調するコメントが多い。

検証過程

添付画像はGoogleマップのスクリーンショット

拡散した画像は、スマートフォンのGoogleMapアプリで京都のホテルを表示したスクリーンショットだ。読み取れる範囲では、最も安いもので4028円。1万円以下のホテルが多く、1軒だけ2万円超の施設もある。スクリーンショットを撮った時期は不明だ。

2025年11月25日現在、同じアプリで京都市内を表示させると、次の画像になる。検索条件は、こちらから指定をしなければ「チェックイン:今夜」「チェックアウト:明日」で「2人」の宿泊。価格帯は特に指定していない。

表示エリアが拡散した画像と完全に一致しているわけではないこと、スクリーンショットを撮った日付が違うことなどから、表示される情報は同じではないが、概ね5000円前後から9,000円程度で、拡散した画像の金額よりやや高い。

料金はじゃらん、るるぶトラベル、Agodaなど複数の宿泊予約サイトの情報を反映している。実際には、同じ宿泊施設でも、サイトによって料金にはかなりの開きがある。また、1泊2名の設定を1泊1名に変更すると、表示される料金はさらに安くなる。

市内ホテルの平均客室単価は7・8月にやや下落、9月以降は前年同期比プラス

公益社団法人京都市観光協会は、市内主要ホテル・旅館の統計情報や免税店の売上状況、ビッグデータの分析結果等を毎月発表している。月報は、概ね100件ほどの市内主要ホテルと、20件ほどの旅館を対象にしている。簡易宿所は含まない(京都市観光協会”京都市観光協会データ月報とは”)。

2025年1月から現状で最新の10月までの市内ホテルの平均客室単価を調べると、最も低かった2月が15,987円で、最も高かった4月が30,640円だった。7月は17,572円(前年同期比4.2%減)、8月は16,863円(前年同月比6.7%減)と、2か月連続で前年同月を下回っている。

日経新聞や産経新聞は、2025年10月の記事で、京都市内の主要ホテルの7・8月の平均客室単価が前年同月比で下落したことや、背景に記録的な猛暑や、大阪・関西万博への客の流出の影響があると報じている(日経新聞”京都市のホテル単価が2カ月連続下落 8月に猛暑打撃、万博に客流出も”10月1日、産経新聞”万博は「大阪の独り勝ち」だったのか 観光客周遊狙いも効果限定的、客室単価6・7%減も”10月16日)。

拡散したスクリーンショットがいつ撮られたかは不明だが、2025年7、8月に下落傾向だったのは確かだ。しかし、9月は16,903 円(前年同月比3.2%増)、10月も24,859円(前年同月比15.2%増)と増加に転じている。

京都市観光協会の月報は、簡易宿所などを含まず、対象施設数も百数十ほどと限られているため、市内の全宿泊施設の実態(総数)を表しているわけではないが、調査に協力している主要なホテルと旅館の実績値を集計した調査で、2025年1~10月に、価格が暴落したことを示すデータはない。 

渡航自粛要請で日本への中国人客のキャンセル相次ぐ

2025年11月7日、高市早苗首相が国会で、台湾有事をめぐって「存立危機事態になりうる」と答弁した。これに反発した中国政府は日本への渡航自粛を呼びかけ、中国人旅行客の予約のキャンセルが相次いでいる(産経新聞”チャイナリスクの不安と現実 中国人ツアー2千人予約取り消し、キャンセル料免除要求も”2025年11月23日、FNNプライムオンライン”中国人ツアー客の予約キャンセルが1千人超 老舗ホテル社長「“キャンセル料を免除してほしい”と それは困る」”2025年11月20日)。

今回の投稿は、そのさなかで拡散した。

観光協会「渡航自粛勧告後も予約販売価格は微増」

中国政府による日本への渡航自粛勧告後、京都市内のホテルの価格は下がったのか。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、京都市観光協会に、勧告があった11月14日以降の市内施設の宿泊料金について取材した。回答は以下の通りだ。

「11月18日に実施した調査では、12月13日の販売価格は前年同期比6.9%増。11月25日の調査では、12月20日の販売価格は1.0%増えている」

企画推進課によると、ホテルの料金には、宿泊予約サイト上の販売価格と、実際に宿泊者が支払った1室あたりの売り上げ単価を示す「平均客室単価」(実測値)の2種類がある。11月14日以降の調査でも、販売価格は前年同期比で微増していた。11月の平均客室単価は、翌12月に集計されるまでは分からないとのことだが、年末に発表されるデータ月報2025年11月号で掲載される予定だ。

今回拡散した画像は、宿泊予約サイト上の販売価格を示すものだが、そのデータで見れば、現状は微増傾向で、少なくとも「暴落」ではないとわかる。

年末年始や2026年の春節(2月15日~2月23日)にかけての販売価格は「2026年2月14日分まで調査しているが、2月7日の販売価格は前年同期比2.6%減、2月14日の価格は0.7%減。春節の前で、やや低め」という程度で、こちらも暴落とは言えない。

担当者は京都市内のホテルの価格の動きについて、「11月の集計を出すまでは、はっきりしたことは言えないが、今のところ、全体的に市内のホテル代が極端に下がっているとは感じていない。コロナ禍が明けた後、ホテルはどこも人手不足。価格を下げて稼働率を上げるより、単価を高くし、収益を上げる戦略をとる施設が多い」とも話した。

つまり、拡散した投稿の「京都のホテルの宿泊代、暴落」という主張は、12月1日時点で、事実とは異なっている。

判定

京都市内のホテルの宿泊代が暴落しているかのような投稿が拡散した。京都市観光協会のデータによれば、確かに2025年7・8月の平均客室単価は前年同月比で約4~6%下回っているが、9月は前年同月比3.2%増と持ち直している。中国政府が日本への渡航自粛を呼び掛けた後も、京都市内の年内のホテルの販売価格は前年同期比よりも高い。よって、総合的にミスリードで不正確と判定する。

更新

京都市観光協会によると、11月の平均客室単価は29,085円。平均客室単価・客室収益指数ともに3か月連続で前年同月を上回りました。このデータからは京都市内のホテル代が暴落していることは確認できません。

しかし、京都市内主要ホテル110施設の2025年11月の客室の稼働率は86.9%で前年同月の水準をやや下回りました。外国人延べ宿泊数を国・地域別構成比で見るとアメリカが1位。前年同月比では、中国が12.1%減となり、流動的な状態が続いていることは確かです。

今後のデータに変化が見られればさらに更新します。(2025年12月26日)

出典・参考

京都市観光協会.”京都市観光協会データ月報とは”.https://www.kyokanko.or.jp/aboutdata/,
(閲覧日2025年11月28日)

京都市観光協会.”データ月報・調査研究一覧”.
https://www.kyokanko.or.jp/report/,
(閲覧日2025年11月28日)

日経新聞.”京都市のホテル単価が2カ月連続下落 8月に猛暑打撃、万博に客流出も”2025年10月1日.
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF25BFG0V20C25A9000000/,
(閲覧日2025年11月28日)

産経新聞.”万博は「大阪の独り勝ち」だったのか 観光客周遊狙いも効果限定的、客室単価6・7%減も”.2025年10月16日.
https://www.sankei.com/article/20251016-NVD77A72HBKQRJ6X4W46B4XF44/,
(閲覧日2025年11月28日)

産経新聞.”チャイナリスクの不安と現実 中国人ツアー2千人予約取り消し、キャンセル料免除要求も”2025年11月23日.
https://www.sankei.com/article/20251123-DQXZU3JTR5J7BEXM57QBNYHW4Y/,
(閲覧日2025年11月28日)

FNNプライムオンライン.”中国人ツアー客の予約キャンセルが1千人超 老舗ホテル社長「“キャンセル料を免除してほしい”と それは困る」”.2025年11月20日.
https://www.fnn.jp/articles/-/963237?display=full,
(閲覧日2025年11月28日)

検証:根津綾子
編集:藤森かもめ、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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