選挙で偽情報対策以上に重要なのは? 投票に役立つ正確で信頼性の高いサイト【解説】

選挙で偽情報対策以上に重要なのは? 投票に役立つ正確で信頼性の高いサイト【解説】

偽情報・誤情報の対策は、ファクトチェックに限りません。重要なことは、正確で信頼性の高い情報を元に有権者が判断することです。総選挙の投開票日が10月27日に迫る中、誰に投票するかを決めるために役に立つ、信頼性の高い情報を提供するサイトを紹介します。

候補者アンケート一覧で個人と政党の政策チェック

新聞社やテレビ局などは、衆院選の候補者に様々なテーマについてのアンケートをとっています。特にNHKと朝日新聞の候補者アンケートは非常に見やすくまとめられています。

NHK衆院選2024候補者アンケート

衆議院選挙2024 候補者アンケート 衆院選立候補者へ質問と回答 NHK
【NHK】NHKが独自で行った衆議院選挙候補者に政治とカネの問題や経済政策など、さまざまなテーマについてアンケートした調査結果です。衆議院議員選挙2024(公示日2024年10月15日/投票日10月27日)の情報はNHK「衆院選2024」特設サイトで。

朝日・東大谷口研究室共同調査

https://digital.asahi.com/senkyo/shuinsen/2024/asahitodai/

自分の住んでいる地域や選挙区、「政治とカネ」や「日米安保体制」などの知りたいテーマを選ぶと、各候補者のアンケート結果が出ます。

また、それぞれのテーマについて党派別にも回答を集計していてチャートにまとめられているので、小選挙区だけでなく比例区の投票先を決める際にも役立ちます。

NHK衆院選2024候補者アンケート(党派別)

[NHK衆議院選挙]党派別集計 候補者アンケート - 衆院選2024 NHK
【NHK独自アンケート】衆議院選挙2024。NHKの候補者アンケート、政党ごとの回答をまとめました。衆議院議員選挙2024(公示日2024年10月15日/投票日10月27日)の情報はNHK「衆院選2024」特設サイトで。

朝日・東大谷口研究室共同調査(党派別)

https://digital.asahi.com/senkyo/shuinsen/2024/asahitodai/#at_Seito

公式サイトで公約チェック

報道機関のサイトだけでなく、各政党のサイトで、直接、公約を確認することも可能です。

自民党

「日本を守る。成長を力に。」 2024年 第50回衆議院選挙|自由民主党
日本を守る。成長を力に。自民党の第50回衆議院選挙特設サイトです。

立憲民主党

2024年衆院選 選挙政策一覧
政権交代であなたの暮らしを豊かにする7つの約束

日本維新の会

https://o-ishin.jp/shuin2024/

公明党

公明党 第50回衆議院選挙特設サイト
【公明党】衆議院選挙2024特設サイトです。公認候補者の最新情報などをご紹介しています。

日本共産党

日本共産党の政策│日本共産党中央委員会
日本共産党の公式ホームページ。党綱領、規約、党の政策、「しんぶん赤旗」記事を毎日掲載。日本共産党の全議員を紹介しています。各地の日本共産党事務所の住所、リンクを掲載。

国民民主党

国民民主党 第50回衆議院議員総選挙 特設サイト
国民民主党の第50回衆議院議員総選挙特設サイトです。政策や候補予定者に関する情報などをご提供しています。

れいわ新選組

https://shu50.reiwa-shinsengumi.com/

社会民主党

https://sdp.or.jp/

参政党

https://www.sanseito.jp/50th_hor_election/

また、各政党の所属議員の項目から、個別の候補者の公式サイトやTwitterアカウントなどを調べることもできます。公式アカウントは、本人がどれだけ情報発信に熱心かや、そのスタイルなどが見えてきます。

初心者からエキスパートまで活用できるサイト

NPO法人「Mielka」が運営するサイト「JAPAN CHOICE」も、選挙に関する様々な情報をわかりやすくまとめています。

JAPAN CHOICE
投票に必要な全ての情報がここに。テクノロジーがあなたの投票をサポートします。

「初心者向け」には、投票方法などの基本的な解説。政党の政策や日本の現状を深堀りしたければ、「政策を比較する」「日本の通信簿」などがまとめられています。自分の投票先を、より深く考えたい人に役立つでしょう。

こだわりのテーマには専門家の知見を

自分がこだわりのあるテーマに関しては、定評がある専門家が解説するコンテンツを見ると良いでしょう。

例えば、重要なテーマである日本の財政について。財政赤字と公債残高の拡大は、選挙における重要なテーマであり、政党によって意見も分かれます。

NHK衆院選2024候補者アンケート(党派別)
朝日・東大谷口研究室共同調査(党派別)

こういうときに、各政党の主張だけを見るのではなく、専門家による公正な解説が役に立ちます。例えば、NIRA総合開発研究機構は「日本の財政に関する専門家たちの意見」という記事を公開しています。

日本の財政に関して、財政健全化で社会保障制度などの持続可能性を確保する「財政規律派」、資産価格と期待インフレ率の上昇などでデフレ脱却を目指す「リフレ派」、完全雇用と適度なインフレで需給バランスを図る「MMT派」に分類し、それぞれの政策をわかりやすく解説しています。

「財政規律派と呼ばれる人たちの中にも、時には財政出動が大事だと考える人もいるし、リフレ派と呼ばれる人たちの中にも、時には財政規律が必要だと考える人もいる」と指摘し、どの考え方や政策が正しいかではなく、それぞれの要点を提示し、有権者が考える材料を提供しています

衆院選挙と同時に「国民審査」の投票も

衆院選で忘れてはならないのが「国民審査」です。司法のトップに立つ最高裁判所の裁判官たちが、その任に適しているかを有権者がチェックする重要な機会です。

選挙の投票先を選ぶのにヘトヘトで「裁判官のことまで調べるのは大変だ」と思った人にピッタリなのが、NHKの特設サイト「最高裁判所裁判官国民審査2024」です。

最高裁判所裁判官の国民審査2024 経歴と注目裁判での判断は|NHK
2024年の国民審査の対象は6人。どんな人?注目裁判での判断は?

審査対象の裁判官の一覧には、それぞれが担当した著名な裁判での判断や、アンケートへの回答、就任時の記者会見の動画がまとめられています。

国民審査では、投票所で衆院選の投票用紙とともに、国民審査用の投票用紙が配られます。

そこに今回の審査対象となる裁判官(今回は15人中6人)の名前が並んでいるので、辞めさせたい人に「✗」を記入し、辞めさせたい人がいなければ何も記載せずに投票します。「✗」が有効投票の過半数に達した裁判官は罷免となります。

「✗」以外の記号を書くと無効となりますので注意しましょう。なお、これまで罷免となった裁判官はいません。

誰になんで投票したかをメモしておこう

筆者(古田)は2014年から、どの選挙で誰に投票したかをメモしています。衆院選(小選挙区・比例区)、参院選、都知事選・都議選、区長選・区議選で、これまでに26回投票した記録があります。

どういう理由で投票したかもメモすることで、当選したらその人がその後どのような議員活動をするかへの関心が高まりますし、次回の投票の参考になります。過去にその候補者や政党がどういう公約を掲げていたかもリンクをメモしておくと良いでしょう。

記録を取ることによって、自分や社会の変化も改めて感じることができます。投票の際に何を基準にするか、どういうテーマを重視するかは人によって違うし、個々人のライフステージでも変わっていきます。

選挙は国の行く末を決めるだけでなく、有権者一人ひとりが自分の人生を考える機会にもなります。

最後に、なぜ我々は投票するのか

筆者(古田)はこれまでもこういう投票の参考になるサイトを紹介する記事をブログなどに書いてきました。そこで紹介したエピソードを再掲します。

私は新聞記者時代にミャンマーを取材していました。2010年に20年ぶりに選挙が実施され、軍事政権からの民主化が進んでいたころです(残念ながら2021年2月のクーデターで歴史は逆戻りしました)。

軍事政権が長く続き、自由も選挙も存在しなかった国で、民主化を求める学生デモに参加し、20代と30代の大半を牢獄で暮らした男性にヤンゴンで話を聞いたことがあります。

彼は自分を逮捕し、虐待した軍への恨み言ではなく、未来への希望を語ってくれました。選挙が始まり、人々が選んだ政権によってミャンマーは変わっていく、と。

私はふと、聞いてみました。日本では投票率が低く、特に若い世代に政治への無関心が広がっている。ミャンマーもいずれそうなるんだろうか、と。

それまでの笑顔が消え、考え込んでから、彼は答えました。「私達は民主主義のために戦ってきた。そのことを忘れないでいて欲しい」

投票する権利は、昔からあったわけではありません。誰かが戦ってくれて、託されたものです。彼が希望を持って語ってくれたように、私も自分たちの一票で国を変えていくことができる、と信じています。

※トップ画像はAIで生成しました。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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TikTokで拡散するAI生成によるクマ被害の偽動画に注意【ファクトチェック】

TikTokで拡散するAI生成によるクマ被害の偽動画に注意【ファクトチェック】

日本のクマ被害が深刻化していることをうけ、熊による被害を映した動画がTikTokで多数拡散しています。しかし、その中にはAIで生成された現実のものではない映像が多数混じっています。 熊が人を襲う動画が多数拡散 2025年10月、TikTokで「クマが柴犬くわえ逃走 どう対策」という動画が拡散した。 TikTokには、ほかにも「熊vsアルファード」などクマによる被害を撮影したような動画が複数拡散している(例1、例2、例3)。 動画には「熊射殺すべき」「怖い」というコメントの一方で「いくらAIでもやっていいことと悪いことがある」という指摘もある。 クマ被害の増加 近年、日本各地で深刻なクマ被害が相次いでいる。2025年度、クマに襲われて死亡した人は2025年10月30日現在で全国で12人にのぼり、過去最多の被害となっている(時事通信.”相次ぐクマ被害、対応限界も 市街地出没急増で苦慮―自治体”、環境省”クマに関する各種情報・取組”)。 被害の拡大に伴って、ソーシャルメディアにクマ関連の動画をアップする人が増えている。 AI生成のウォーターマーク

By 木山竣策
米トランプ大統領「サナエをイジメた奴はアメリカを敵に回す」と野党に警告? まとめサイトによる誤り【ファクトチェック】

米トランプ大統領「サナエをイジメた奴はアメリカを敵に回す」と野党に警告? まとめサイトによる誤り【ファクトチェック】

米トランプ大統領が「サナエをイジメた奴はアメリカ合衆国を敵に回すという事だ」と日本の野党に警告したかのような投稿が拡散しましたが、誤りです。トランプ氏がそのような発言をしたという情報も報道もありません。 検証対象 拡散した言説 2025年10月28日、「トランプ大統領 日本の野党に警告『サナエをイジメた奴はアメリカ合衆国を敵に回すという事だ』」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 10月31日現在、この投稿は4900回以上リポストされ、表示は147万件を超える。 投稿には「これ本当ですか❓」等の指摘もあるが、「高市首相自体高支持率 更にトランプ大統領のバック 鬼に金棒」「素晴らしい👍正直トランプはジャイアンかよってずっと思ってたけど、弁えてたんだと見直した」など同調のコメントも多い。 検証過程 投稿はまとめサイトによるもの 参照記事に該当する記述なし 検証対象のリンクは、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事だ。タイトルは掲示板サイト2ちゃんねるのスレッド「トランプ大統領 日本の野党に警告『サ

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宮城県知事選、期日前投票数が前回の31倍なのに投票率が低いのは不正? 「衆院とのダブル選」という特殊事情【ファクトチェック】

宮城県知事選、期日前投票数が前回の31倍なのに投票率が低いのは不正? 「衆院とのダブル選」という特殊事情【ファクトチェック】

宮城県知事選について「期日前投票が前回の31倍だったのに、当日の投票率の低さは不自然」「不正選挙」などの言説が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。期日前投票の最初の3日間に投票した有権者数は前回の31倍でしたが、前回は投票日が衆院選と重なるダブル選挙でした。知事選は選挙期間が17日間、衆院選は12日間。「31倍」だったのは、知事選のみの投票期間である最初の3日間のデータで、今回とは比較条件が大きく異なります。期日前投票の総数は、前回の約1割増にとどまっており、不正選挙を示すデータとは言えません。 検証対象 拡散した言説 2025年10月26日から27日頃にかけて、26日投開票の宮城県知事選で、「期日前投票が前回の31倍だったのに、当日の投票率の低さは不自然ではないか」と、選挙で不正があったのではないかと示唆する趣旨の言説が拡散した(例1,2,3)。 検証する理由 選挙で不正があったのではという指摘は国政選挙のたびに拡散する。今回の宮城県知事選は異例の注目を集めたことで、不正選挙の指摘も出た。 検証過程 期日前投票最初の3日で「前回の31倍

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
安倍元首相が日本の年収を下げていた? グラフの読み間違い【ファクトチェック】

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「安倍元首相が日本の年収を下げていた」という文言とともにグラフ付きの画像が拡散しましたが、誤りです。グラフで年収が下がっていると強調されている時期は小泉純一郎政権です。第一次や、第二次安倍政権発足以降の年収はともに上昇傾向にありました。 検証対象 2025年10月27日、「【悲報】安倍晋三、凄まじい勢いで日本人の平均年収を下げていたことが判明wwww」という画像つき投稿が拡散した。 10月30日現在、この投稿は削除されているが、同じ画像を使った投稿が拡散している。 検証過程 画像のグラフは 画像のグラフをGoogleレンズで検索すると、2011年3月2日に「ITmedia ビジネスオンライン」が投稿した「コツコツお金を貯める人が、減っている理由」という記事がみつかる。拡散したグラフは、この記事に添付された内容と同じだ。 記事は「1998年を境に日本の平均年収が減少し、コツコツと貯金する人も減っている」と書いている。拡散したグラフは「ビジネスパーソンの平均年収(横軸は年、出典:年収ラボ)」というタイトルで記事内で紹介され、1998年以降にビジネスパ

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ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は11月28日(土)午後5時~6時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1128.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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