日本ファクトチェックセンターが「デジタルアーカイブ学会賞」を授賞

日本ファクトチェックセンターが「デジタルアーカイブ学会賞」を授賞

日本ファクトチェックセンター(JFC)は11月1日、デジタルアーカイブ学会賞(実践賞)を授賞しました。検証においてデジタルアーカイブされた1次情報を活用し、また、JFCのサイト自体が検証過程で活用した証拠へのリンクを多用し、アーカイブ性が高いと評価されました。

デジタルアーカイブ学会とは

デジタルアーカイブとは、文書や画像、映像、音声などをデジタル形式で、アクセス可能な形で保存すること。過去の記録をデジタル化して保管するだけでなく、新たな技術によってその活用の幅を広げるなど、他分野で議論されている。

デジタルアーカイブ学会(吉見俊哉会長)は「日本のデジタル知識基盤構築」を目的とし、関係者の交流や知見の共有、人材の育成などに取り組んでいる(デジタルアーカイブ学について)。

毎年開催される研究大会において、功労賞・実践賞・学術賞の3部門で、デジタルアーカイブに関連する団体やプロジェクト、論文や著書などを表彰している。

JFCの授賞理由

JFCの授賞理由は、以下の通り。

(以下、受賞理由)

日本ファクトチェックセンターは、ファクトチェックの実践とメディア情報リテラシーの普及に取り組む非営利組織であり、発足2年でおよそ500本のファクトチェックを行っている。

検証のための一次情報の有力なものとしてデジタルアーカイブがある。特に医療・健康や近現代史などに関わる偽情報の検証のために機能している。信頼性の高い情報が集まっているデジタルアーカイブが社会課題の解決に利活用されている代表的な事例と言えよう。

また、ファクトチェックのために、検証に参照した一次情報を全てリンクしている。この点も新たな情報集積が行われているとも言えよう。デジタルアーカイブ利活用の新たな局面をひらいとことを評価して、実践賞を授与する。

(以上)

JFC古田編集長の授賞コメント

授与式に出席したJFCの古田大輔編集長は次のようにコメントした。

(以下、コメント)

インターネット上には偽情報や誤情報が蔓延しています。JFCはその対策としてファクトチェックやメディアリテラシー教育に取り組んでいますが、信頼性の高いデジタルアーカイブは、検証の拠り所として不可欠です。

ところが、アメリカのインターネットアーカイブがサイバーアタックを受け、一時利用不能になるなど、状況は本当に逼迫しています。

過去の記録が消える危機だけではありません。これだけ情報が氾濫している社会では、1時間前に投稿された情報すら探すことが困難になってます。情報を効率的・効果的に記録し、整理していくことはこれまで以上に重要です。

私も2年ほど勤めたGoogleの有名なミッションは「世界中の情報を整理して、人々が利用可能にすること」ですが、いま必要とされているのは「信頼性の高い情報を整理して、利用可能にすること」だと感じています。

JFCは皆様方とともに、このミッションに取り組んでいけたらと思っております。

(以上)

デジタルアーカイブ学会賞 授与者一覧

功労賞

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン

実践賞

デジタル源氏物語
日本ファクトチェックセンター (JFC)
阪神淡路⼤震災25年 激震の記録 1995 取材映像アーカイブ
未来に残す 戦争の記憶

学術賞(研究論文)

富澤 浩樹, 阿部 昭博
震災関連資料の利用活性化に向けたデジタルアーカイビングシステムの構築:岩手県立図書館所蔵資料を用いた震災学習の実践から(デジタルアーカイブ学会誌, 2024, 8 巻, 3 号, p. e3-e12)

学術賞(著書)

木村文
デジタル時代の博物館 :リトアニアにおけるデジタル化の受容と実践の現場から(花伝社,2023年)
鈴木康平
デジタル時代の図書館とアウト・オブ・コマースをめぐる著作権法制:日本法における「絶版等資料」の再検討(勁草書房,2024年)
西川開
知識コモンズとは何か: パブリックドメインからコミュニティ・ガバナンスへ(勁草書房,2023年)
福島幸宏責任編集
ひらかれる公共資料:「デジタル公共文書」という問題提起(勉誠社,2023年)

学術賞(開発)

一般財団法人人文情報学研究所
TEI古典籍ビューワ
人文学オープンデータ共同利用センター
つくしサーチ

JFC採用中

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日本ファクトチェックセンターのエディターなど募集【採用】
日本ファクトチェックセンター(JFC)は業務拡大により、エディターやソーシャルメディア担当などを募集しております。リモートワークや勤務時間など様々な働き方を想定しています。 待遇はスキルや経験、勤務条件に応じます。年功序列や新卒一括採用などはありません。その人の能力に応じて、裁量がある仕事をお任せします。ファクトチェック、メディアリテラシー教育、ソーシャルメディアの分析、海外の協力団体とのコラボなど、興味がある方は、ぜひご応募ください! エディター/ファクトチェッカー 業務内容 編集部でファクトチェックを中心にコンテンツの編集や企画を担当します。自由な勤務形態を推奨しており、時間や勤務地など応相談です。 応募要件 * 必須 * 記者、編集者などメディア関係やや事実検証に関わる職務経験 * JFCファクトチェックガイドラインや指針などの遵守 * チームワーク * 憎しみを原動力にしないこと * 歓迎 * デジタルメディアの経験がある方は、特に重視します * ファクトチェックや調査報道の経験 * データ収集


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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自民党総裁選、偽・誤情報の標的になる候補は/JFC検証など4本【今週のファクトチェック】

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9月22日に自民党総裁選が告示され、10月4日に投開票されます。2024年の総裁選と同様、候補者に関する偽・誤情報が早速広がり始めています。標的になるのは誰か。その理由は。昨年の解説記事が参考になります。 端的に言えば、1.注目を集め、2.ネットで批判の対象になりやすい候補が狙われます。注目度が低かったり、ネットで好感度が高かったりすると、拡散力が弱くなって人の目につきづらく、偽情報を作る側から見て効果が低いからです。 自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か その理由は【解説】自民党総裁選をめぐって、偽・誤情報が拡散しています。候補者の誰が、なぜ標的になるのか。偽・誤情報の作成者・拡散者の特徴や動機について、日本ファクトチェックセンター(JFC)がこれまで公開した検証記事やSNS、検索データなどをもとに解説します。 最初に標的となったのは 9月12日告示、27日開票の自民党総裁選への立候補をいち早く表明したのは小林鷹之議員で、8月19日だった。その後、立て続けに小林氏に関する偽・誤情報が拡散し、JFCでも2本の検証記事を出し、いずれも「誤り」と判定した。 小

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世界のファクトチェックの苦境と増す重要性 「言論の自由の武器化」に対し、資金源・AI・規制の議論は

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世界中のファクトチェッカーが集まり、偽・誤情報対策やファクトチェックの課題について議論する「GlobalFact」が今年も6月に開催され、日本ファクトチェックセンター(JFC)から編集長の私(古田)が参加しました。情報環境がより深刻になる中で、世界は今、この問題をどのように捉えているのか、解説します。 GF参加者の減少が示すファクトチェックの苦境 今年で12回目となるGlobalFact 12(GF12)は6月25-27日の3日間、ブラジルで開かれました。コロナ禍を経て2022年以降に開催されたGFがいずれも500人を超えたのに対し、今年は会場の参加者が300人ほどにとどまりました。 その理由は明白です。Metaがファクトチェック団体との協力プログラムを中止し、また、東欧やアフリカや南アメリカのファクトチェック団体を支援していたアメリカ国際開発庁(USAID)が活動停止したことに代表されるように、ファクトチェック業界への経済的な支援が急激に減る傾向にあり、各団体ともに人を派遣する体力がなくなっているからです。 GF12を主催する国際ファクトチェックネットワ

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ロンドンの反移民デモの参加者は警察発表で300万人? 発表は 約11万〜15万人【ファクトチェック】

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2025年9月13日にイギリスのロンドンで開かれたデモの参加者が「警察発表で300万人」という情報が拡散しましたが、誤りです。現地の警察のサイトでは11万〜15万人だったと発表しています。 検証対象 9月14日、「洋の東西を問わず酷いオールドメディア。ロンドンの反移民デモは凄まじく、警察発表で300万人。だがこれを参加11万人として“極右によるデモ”を連呼。更に数百人の“反人種差別”デモを5千人として偏向報道」という投稿が拡散した。 拡散した投稿は「ロンドンの中心部で極右が主導するデモが行われています」と日本語でリポートする動画を引用している。この動画は「TBS NEWS DIG Powered by JNN」がYouTubeに投稿している「イギリス・ロンドン中心部で「反移民・反ムスリム」の大規模集会 極右活動家が呼びかけ11万人以上参加 銃撃で死亡したアメリカの保守系活動家カーク氏の写真も」という動画だ。 9月18日現在、この投稿は1万件以上リポストされ、表示回数は157万回を超える。投稿について「今やどの国ももはや傾向報道」「さすがに300万人もいたら

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「1年間で過去最多9700人の技能実習生が失踪し、不法移民に」? 多くは見つかり出国も、2024年は3割減 【ファクトチェック】

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「1年間で9700人もの技能実習生が失踪し、不法移民に」という趣旨の投稿が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2023年の1年間で9753人が失踪したのは事実ですが、その後所在が確認された人数を除くと2983人。また、最新の2024年のデータでは失踪者は約3割減っています。 検証対象 2025年9月15日、「職場から失踪した技能実習生は、去年だけで 過去最高の9700人余に」というNHKの記事を引用し「1年間で9700人の不法移民だよ。制度として破綻している」という投稿がXで拡散した。 9月18日現在、1.8万回以上リポストされ、表示は133.9万件を超える。 投稿には「これら不良外国人が勝手に繁殖してアンカーベイビーなるモノを作って、教育がどうの人権がどうのっつって永住権を得ようとごねるんだよな」「失踪した9700人の実習生だけではありません。トルコ人はノービザ状態で、蛇口開きっ放しの儘です」や「このNHKの記事は1年前のものですね」などの指摘がある。 検証過程 データは2023年のもの、翌年は約3割減 拡散した投稿はNHKの記事「職場から

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ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は10月18日(土)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1018.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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